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第六十話 僕の魔法の効果

 彼女達を僕の小さな背中で隠して、そっと(向うへ逃げろ)サインを送る。それと同時に【炎闇】の傀儡を全てワーウルフに向かわせた。


「漆黒の炎か、そんなものが儂に効くと思うなよ」


 ワーウルフは炎を気にする様子もなく、前足の攻撃だけで傀儡を消滅させてしまった。


「どうして燃え移らないんだ」

「ふん、面白いガキだがそこまでの知識が無いんだな、まぁお前に教えてやるほど優しくは出来ないがな」


 前に僕とアリアナさんで討伐したワーウルフより遥かに知力が高く、そしておしゃべり野郎だ。


「そんな事を言わずに教えてくれませんか、それにあなたは何がしたいのか教えて貰えませんか、どうして女性だけを生かしたのですか」

「色々聞きたがるガキだな、いいか儂は面白い事が好きなんだよ、奴らを使って身代金を取るなんて面白いじゃないか、それに儂がそいつらを倒す人間の振りを……」


 相当暇なワーウルフとしか思えないが、そのずる賢いやり方は好きになれない。


「あの、もう一つだけ聞いてもいいですか」

「その代わり無駄な抵抗するなよ、お前が儂の仲間になっても魔法が使えるのか実験したいんだからな」


 こいつは僕に感染させて駒として利用したいようで、直ぐにでも噛みついて来そうだ。


 っておい、あんたらは何をやってるんだ。邪魔だからこの場から逃げてくれと合図したのに何でそこで腰を抜かしてるんだ。あ~もう邪魔だな。


「あのどうして貴方は此処にいるんですか、魔国からだと此処に来るまでにいくつも村や街があったでしょうに、それともダンジョン生まれなのですか」

「儂をダンジョンの魔物と一緒にするな……まぁいい。只な此処に来た方法は言えんな。そんな事はどうでもいいだろ」


 最後の質問でもっと時間を稼ぐつもりだったが残念ながら失敗に終わってしまったようだ。彼達を守りながら戦うのは厄介だけどやるしかない。


「この下衆野郎が」

「何だと、気でも触れたのか」


 ワーウルフは後ろ脚に力を入れ、その口を大きく開けながら飛びかかってきた。


「先にこれをどうぞ……毒闇」


 会話をしながら地中に仕込んでいた【毒闇】でワーウルフを包みこむ。僕が魔力をわざと隠しているのに気が付いていないのがこの魔物の限界なのだろう。


 あれっ思ったより薄い闇が出ているんだけど、大丈夫かな。


 失敗したと思って逃げ出そうとしたが、何故かワーウルフは僕に近づく事が出来ないどころか、身体中から血や変な液体を流しながら口や目を大きく開けている。


 あの様子だと必死に叫んでいるようだが、僕にはその叫びは聞こえてこない。


「ねぇ何をしたの」

「いいから逃げるか黙って見ていて、いや、見ない方がいいかも」


 直ぐにワーウルフ身体に気泡のような物が現れ、それが次々と破裂していくが闇のおかげで破裂物は飛んでこない。


 え~ちょっと気持ち悪いんだけどな、闇が薄いから見えるんだよ。ちょっとどうなってるんだ。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 彼女達が叫び声を上げ、泣き出したり吐き出したりともの凄い事になってしまっている。


「あの大丈夫ですか」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 僕が近寄ろうとすると必死に手を前にして拒絶しているので、今後は人前で【毒闇】を使うのは控えようと思う。

 折角の強力な魔法だけど使用した僕ですら若干の嫌悪感があるのだから致し方の無い事だろう。


 彼女達が落ち着くのを待ちながらスケルトンを生み出した魔石を探すと、直ぐに傷一つ付いていない魔石が見つかったので再び僕の魔力を注いで地面に投げてみた。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 スケルトンが出来上がると共に再び叫び出したが、叫び終わると二人とも気絶してしまった。


「カオスだね」


 彼女達の事はそのままにして【毒闇】を解除すると、ワーウルフの体液のシミがそこら中にあるのだが、毒素は完全に無くなっている様に思える。


 試しに虫を捕まえて体液の中に入れたが虫は元気に空に飛んで行った。


 あれっ解除すると毒素も消えるんだっけ? まぁいいか。


 ただ僕にはこの場を綺麗にすることなどは出来ないのでスケルトンに二人を運んでもらい綺麗な草原の上で寝かしつけた後で自然に目が覚めるのを待った。


 暫くして目が覚め、スケルトンが味方だと認識するのに多少の時間を使ってしまったが、怖がってはいるものの助かった事にようやく安堵したみたいだ。


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