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第五十八話 僕の考え

「レーベン君、その男はどうするつもりんなんじゃ、一人で抱えこまなくても良いぞ」

 

 村長は直ぐにでもこの感染者の男を僕が処分すると思っているようだが、少しだけ違っている。


「もしかしたらこいつが感染元であるワーウルフを知っている可能性がありますので、上手くいくか分かりませんが、案内してもらおうと思います」


 すると村人の若い男達から否定的な声ばかり聞こえてくる。


「おいおい危険じゃないか、向こうには何体いるのかすら知らないんだぞ、下手に刺激しない方がいいんじゃないか」

「敵対心が無いって事をどうにかして伝えられないかな」


 自分がワーウルフに変えられたくない無いのか戦う前から降伏を考えようと思う人間の多さに少し驚いてしまう。


「まぁ僕は手を引いても良いですからこのまま衛兵に言ってはどうです。まぁ彼等もこんな守り難い村に来るより城壁のある街で迎え撃とうとするんじゃないですかね」


 これ以上は話す事は無いし、ラウラにも早く話してからここから出ようと思う。無理やりに討伐に行って嫌な思いをするぐらいならこの村を見捨てた方がいい。ワーウルフによる被害は増えていくと思うが、ギルドか衛兵がそのうちに対処してくれるだろう。


「うちの村の若い奴らはどうしてこうなんだ。全く話にならん。もういい、儂がレーベン君と一緒に討伐に行ってやる」

「そうだな、私も良くか、若い奴らは儂らが失敗したら村で迎え撃つように準備してくれ」


 村長や中年が討伐に向けて盛り上がっているが、僕と一緒に行動するつもりならそれは邪魔でしかない。


「ちょっと待ってください。僕は広範囲魔法を使うので一緒には行けませんよ。どうしてもというのなら別行動にしましょう」

「えっそれだと話が違ってしまうな」

「だったらあなた達も此処に残っていて下さいよ。それにあれより役に立ちますか」


 僕がスケルトンに向かって指を差すと、どうやら納得してくれたようだ。あれよりも強いと言える村人は此処にいるがずがない。


 村人達が大人しくなってくれたので【鞭闇】で腰を縛ったまま反対側をスケルトンにしっかりと持たせてみた。この人間相手ならやられた方の誇りはズタズタにされてしまうところだったが、完全にワーウルフに支配されてしまったこの男にはそれすらも分かっていない様だ。


「それでは行ってきますので、どうか話し合っていて下さいね」

「あぁ分かった。魔物に服従を考えたこいつらの根性を叩き直さなくてはいかん」


 若い連中は自分たちの愚かさに気が付いた者もいたようだが、それ以外の者は少し不満気だ。だが、そんな事に構っていなれない僕は、脚が自由になった事で逃げだそうとしているワーウルフの後を付いて行かなくてはいけない。


 何故か再び人間の姿に戻ってから走り出したので、彼が役目を終えたら殺さなくてはいけない事に胸が痛むが、今はその事を考えないようにしてスケルトンにしがみ付いた。


 僕は背中から魔力を流すと、砕いてしまった腕が再生していくが、この物質が何で出来ているのかはネクロマンサーでは無い僕には分からない。


 けど、これは欲しいな。アリアナさんに連絡すれば新しく作ってくれないかな。


 このスケルトンがいたら他の人達とパーティを組む必要は無くなるのは良い事だが、スケルトンに囲まれながら僕が闇属性の魔法を放つところを想像すると、いよいよおかしくなっていきそうだ。


 僕達を案内する事になってしまったこのワーウルフは、ずっと全速力で走っているのでもはや人間ではなくなってしまったが、あと数年もするとまた普通のようなふりをして街や村に溶け込む事が出来るのだから恐ろしい。


 昔、僕とアリアナさんが頼まれて討伐しに行った時は、ある街の裏世界をワーウルフとその感染者だけで支配していた。ただそこまで上手くやっていたにしては詰めが甘く、人間を食料にするという本能には逆らえず、何度か街の人を襲ってしまった現場を見られてしまっていた。


 まぁそのおかげで僕達に依頼がきたんだけどね。


 思い出している内に森の様子が変わってきたのでワーウルフを解放してみた。【鞭闇】を解除した瞬間に襲って来る事も警戒したが、何も無かったかのように藪の中に入って行く。


 警戒心の欠片も無いワーウルフの後を付いて行くと、その先には家が何軒もあってどの家の前には人骨が飾られている。


 って言う事は盗賊なのか。良かった~これでいくら殺しても罪悪感は無いよ。


 スケルトンには地中に埋まってもらい、僕も半分だけ闇の中に隠れていると遠吠えと共に二足歩行の大型のワーウルフが現れた。盗賊達が膝を付いて迎え入れているのであれが、感染源のワーウルフで間違いない。





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