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第五十六話 僕は見張りをする

 僕達が借りているこの小屋より大きいスケルトンを見上げながら二人して暫く口を開けながら見ていた。


「ねぇ、これは大きすぎない」

「それもそうだけど、これの元は何なのかな、どう考えても一体じゃないよね」


 スケルトンとは、元になるものがある思っていたが、どう考えてもこれは違う。


「これで武器を持たせたら凄そうだね」

「そうか、何か探して持たせてみようか」

 

 二人でこの辺りを探して古い農具を待たせてみると、何とも言えないスケルトンがそこに立っている。


「いいんだけどさ、これを私が動かせるとアリアナさんは思っているのかな」

「そうだよな、そこそこ魔力を吸い取られているから、ラウラは厳しいかもね」


 そんな事はアリアナさんも知っているはずなので何か仕掛けがあるかも知れない。こればかりは実験して見ないと分からない。


 これ以上ここで見ていても仕方がないので、スケルトンには村人から見えない場所を警戒してもらい、僕は村と農場の間に座って【感知闇】を薄く広げた。


 だが、この日は何も起こらず、二日目、三日目も魔獣が姿を見せる事は無かったが、ようやく四日目にして村の端から悲痛な叫び声が聞こえてきた。


 僕の感知によると、村人の他には何も見つける事は出来ないが、直ぐ近くで警戒に当たらしているスケルトンにその二人の村人を守るように指示を与えて、急いで僕は駆けつける。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ助けてくれ~」

「大丈夫ですか、魔獣は何処にいますか」

「何を言ってるんだ。目の前にいるじゃないか」

「………………」


 そうだよな、これが動いてるんだからそうなるよな、そう言えば見せていなかったしな。


「どうしたんだ」


 やはりと言うべきか、武器を抱えた村人たちが集まり揃いも揃ってスケルトンに対して敵意を見せている。


「あ~すみません。これは僕が操っている物なんですよ」

 

 それでも僕の言葉が信じられないのか、構えた武器を下ろす者はいない。するとそこにあの老人、いやこの村の村長が間に入ってきた。


「これは本当に君の指示で動かしているのかい。こんな事が出来るなんて聞いた事が無いのだが」

「魔道具で動かしているんですよ、それに……最新技術と言いますか……まぁ王都では使っている人も……」


 あえて明言はせずに王都の名前を出せば何とかなるだろうと思う。


「これが君が依頼を受けた理由か、そうだよな、これならどんな魔獣も撃退しそうだな」


 これが理由の全てでは無いけど、これで納得してくれるのであれば願ったりだ。


「それでは待て警備に戻りますね」


 再び二手に別れて持ち場に戻ろうとすると、村長が慌てたように言ってきた。


「君、君っ、あれと一緒に行動しなくていいのかね」

「大丈夫ですよ、もし魔獣が姿を見せたら自動で攻撃をしますが、人であるのなら僕の許可がないと攻撃は出来ないようになっていますので」


 これで少しは納得してくれ、村人たちは自分の家に戻り始めたが、一人の男がスケルトンに興味があるのかずっと見ている。


「あのさ、僕はこいつと一緒に居ても良いかな」


 そうしてもらえるとこのスケルトンが危険な物ではないと理解してくれるはずだが、この村の若い男は総出で昼間は畑仕事をしているそうなので、このまま徹夜させるのはどうかと思ってしまう。


「明日が辛くなるんじゃないですか、今度体調を整えてからにした方が良いですよ」

「そっか、明日があるもんな」

「そうですよ、討伐するまで僕達はこの村にいますから」


 その日も魔獣は姿を見せないし、次の日も同様だった。もしかしたらスケルトンの姿を魔獣が見てしまった可能性もあるので、僕とスケルトンに配置を交換したが何の変化も無かった。


 結局、10日を過ぎても魔獣は現れず、ここ最近としては余りにも長く間隔が空いてしまったようなので、このまま続けるかどうかを村長に相談しに行く。


「そうですな、その可能性も無いとは言えませんが、もう少しだけ見張りをしてくれませんか」

「分かりました。あと5日だけ見張りを続けます」


 僕が受けた事なので途中で投げ出すような感じになってしまうが、全く被害が出ていないのだから仕方がない。


 4日目までは全くいつもと変わらなかったが、最終日になってようやくこの村に迫って来る魔獣の気配を感じた。


 もしかしたら村人の悪戯かと思ったけど本当にいたんだな。


 密かに悪戯をしそうな村人をラウラに調べてもらっていて、僕の【感知闇】でしっかりとその家を見張っていたが、どうやら勘違いだったようだ。





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