第五十五話 僕の作戦
村人の後を付いて街を出て行くが、どうやら彼等は僕に対する態度を決めかねているようだ。
「レーベンさん、ラウラさん、この丘を越えたら私達のアシタカ村に到着致します」
「あの、そこまで気を使わなくてもいいですよ、ただ、どなたか先に行ってある程度の事を伝えておいてくれませんか、変な風に絡まれるのは嫌なので」
「そうですな……ユシュアとリントは先に行きなさい。決して試すような事を言わせないようにな」
もし僕が普通に成長していたらこんな面倒な事にはなっていないはずなので、やはりこの見た目では色々と面倒な事が多すぎる。
「ねぇ、ちゃんと理由を言えば良いんじゃないの」
「全員にかよ、嫌だよそんなみっともない事をするのは、いいんだよ、この村で暮らす訳じゃないからね」
話したとてちゃんと僕の事を信じて理解してくれなければ、余計変な誤解を生んでしまうだろう。ただ数日過ごすだけの村で何処まで話さないといけないのだろうか。別に邪魔さえしてくれなければそれでいい。
丘を越えて見えてきた村はそれなりの大きさをしていたが、やはり城壁なんてある訳もなくて、ただ申し訳程度の柵があるだけだ。
民家はバラバラに建っているのではなくてそれなりにまとまっているが、家畜小屋は迄となると僕一人でこの村を守る事は困難でしかない。
僕は対策を考えていたが、老人は別の事を考えていたようだ。
「貴方達の宿ですが、私の別宅でいいですか。完成したばかりなので住みやすいですぞ」
そう言いながら村の中心に案内しようとするので慌てて止めさせる。
「何処に行くのですか、どうせなら農場に近い方が見張りがしやすいのですが」
「けど、あの辺りは宿にできそうな綺麗な小屋がないのですが」
「寝る事が出来ればそれでいいです。快適に過ごすより早めに討伐して出て行きたいので」
僕達はお客さんではないので綺麗だとか汚いだとかはどうでもいい事だ。身体を休める場所さえあればいい。
「そうですか、それでしたら気にいるか分かりませんがご案内します」
彼等が案内してくれた小屋は、4人が辛うじて足を伸ばして眠る事が出来るだけの小さな小屋だが、僕にはそれで充分だ。
「此処で良いです。なぁラウラもそう思うだろ」
「えっこんなに狭い場所で二人で眠るの」
ラウラの意見は全く無視して、村人と今後の予定について話しを進める。
まず食事はこの家まで運んでくれることに決まった。そして大事な見張る場所だが僕達はこちら側の農場を中心に警護する事になる。
ただし、家の側で物音がして魔獣の姿を発見したら何もせずに僕を呼んで貰う事に決定した。
「それでは夜に備えてもう寝かせて貰いますね、夜になる前に起こして下さい」
まだ話をしたい雰囲気ではあったが、夜の間は起きていなくてはいけないので、村人達には出て行って貰った。
「じゃあお休み」
「ちょっと、私はどうすればいいの」
「あっそうか、そうだねあの人達以外から情報を聞いといて欲しいかな、見張りと討伐は僕とスケルトンでやるからラウラは夜は寝ていていよ」
僕が綺麗な家では無くこの小屋を選んだ理由は、僕が見張りをする場所の近くにラウラに居て欲しいからだ。もし何かがあった場合に近くにいてくれたら直ぐに駆け付ける事が出来る。
だったら一緒に見張りをすればいいのではないのかとも思ったが、もし魔獣が厄介な相手であったのならラウラに危険が及ぶかもしれないのでそれは出来ない。
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「ほらっもう起きなよ、食事を運んできてくれたよ」
目を覚ますと質素ながらも美味しそうな食事が並べられていて、二人でそれを食べながらラウラが仕入れてきた情報の報告を聞いた。
「ふ~ん、姿が見えない位に早いか……それにしても結構、中まで入っているんだな、この場所は失敗だったかな」
「向こうは村人に任せて良いんじゃないかな、人を増やせないんだから少仕方がないよ」
被害が出た時に僕を呼ばれても間に合わない様な気がした来たので、是非とも魔獣にはこっちに来て欲しい。
「まぁいいか、それより例の魔石を貸してよ、スケルトンには頑張って貰わないとね」
どんなスケルトンが出てくるのか知らないが、なるべくなら動きの速い兵士タイプのスケルトンなら最高だ。
ラウラから魔石を受け取り、僕は魔石に魔力を流した後でそっと投げてみた。すると魔石が地面の中に沈んで行き、直ぐに地下から白い骨の腕が伸びてくる。
「うわぁ何だよ、知らなかったら驚くところだね」
「けど、思った以上に良くない」
「え~そうか、どう見ても悪だと思うけどな」
姿を見せたのは、4本の脚があり6本の腕を持つ巨大なスケルトンだった。




