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第五十四話 僕はギルドに連れて行かれる

王都を離れ幾つかの街を過ぎて、ようやくそこそこの大きさの街に到着した。この街の近くにはダンジョンがいくつかあるそうで、街の中にはダンジョン帰りと思われる冒険者の姿がちらほら見える。


「ねぇ時間があるなら一度はダンジョン行こうよ、そんなに奥まで行かなくていいからさ」

「確かに興味はあるけど、ちゃんと下調べもしないで行くなんて無謀だと思うよ、それに僕は冒険者じゃ無いから入れないんじゃないかな」

「あっそうか、それならなればいいじゃない」


 余り乗り気ではない僕の腕を取ってこの街のギルドに向かって行くが、僕はダンジョンに入るかは決めていないけど、冒険者として登録をしても損は無いような気がしてきた。


 まぁ変な連中がいなかったらいいかもな。


 ようやく僕は前向きな気持ちになってギルドに到着すると、そのギルドから追い払われている男達の姿が見えた。


「何だよ、此処の職員はあんな奴なのか、やっぱり僕は冒険者と縁が無いようだね」

「何言ってるのよ、あの連中が中で暴れたんじゃないの」


 ラウラは何を見てそう言っているのかは分からないが、その男達は酔っているようには見えないし、その風貌からみて只の農民にしか見えない。


「いいから行こうよ」

「え~本気かよ」


 その人達を通り過ぎる時に、一人の老人の膝から血を流しているのが見えたので、僕はそのまま無視する事は出来なかった。


「もし良かったらこれをどうぞ、怪我は直ぐに消えますよ」


 僕が携帯している傷薬を渡すと、最初は驚いたようだったが直ぐに微笑みながら受け取ってくれた。


「ありがとう坊や、君は冒険者なのかな」

「僕は違うけど、こっちはそうですよ。どうかしましたか」


 すると老人の隣にいた男が今にも泣きそうな顔になりながら話してきた。


「悪いんだけどギルドを通さずに魔獣を討伐してくれる人は知らないだろうか、私達が用意できる金額だと最低料金にも満たないそうなんだ」

「えっ、鋼玉の依頼料はかなり安いけどな」


「それは討伐の依頼じゃないからだろ、魔獣となるとそうはいかんらしいんだ」

「だったら衛兵に相談してみたらどうですか」


「そんなのはとっくに相談したさ、だけどねまだ村人に直接の被害が出ている訳では無いから後回しになるんだってよ、その間にどれほど農作物や家畜を殺されなくてはいけないんだ」


 一番年齢が若そうな男が地面に拳を打ち付けて悔しそうにしている。彼等はこの街の住民では無く、半日ほど歩いた場所にある村からわざわざ来たそうだ。


「あの、その魔獣の種類は何ですか、それによって話が変わって来ると思うんですけど」

「それなんだけど……」


 言い難そうにゆっくりと話始めたが、どうやら何の魔獣なのかも分からないし、数すら分からないそうだ。


 ギルド側としては調査依頼と討伐依頼の二つが必要になると言われたそうなのだが、村人はそれだと金額が高くなるのでどうにかして欲しいと話し合いは平行線のまま終わったそうだ。


 ……そして怒った若者が机を壊し、ギルドから追い出されたらしい。


「ギルドの言い分も分かるわね、何も分からないんでしょ、まずは調査しないと討伐する人数が多くなるかもしれないんだから」

「あの、それで用意した報酬はいくらなんですか」

「えっ君はが紹介してくれるのか」


 勘違いした村人はその金額を教えてくれたが、僕が想像した金額より安い額では無かった。


 ギルドの手数料があるからな……。


「報酬の他に泊まる場所と食事を用意して下さい。それで報酬は成功したときにだけ渡してくれればいいですよ」

「もしかして君がやるのか」


 僕を知らないのだからその反応は仕方のない事だけれども、そんな可哀そうな子供を見るような目で僕をみてくるのは気分が良くない。


「炎闇」


 掌を上に向け、闇の炎を出してみた。


「何だこの魔法は……疑って済まなかった。お願い出来ないだろうか」

「勿論ですよ、二人でやらせて貰います」


 ラウラの意見も聞かずに勝手に決めてしまったので振り返るとラウラが目を細めて僕を見ている。


「ちょっとレーベン、来てくれるかな」


 逆らう事が出来ずに村人から離れると、小声で文句を言ってくるので報酬の殆どをラウラに渡す事で納得してくれた。


 僕達の方はそれで解決したが、その様子を見ていたギルド職員が村人に話し掛けに行く。


「あんた達さぁ、まさかと思うけど冒険者に直で声をかけていないよね」

「いえ……そういう訳では」


 ギルド職員にとっては問題なのか村人を問い詰めている。


「ほらっもう行きましょうよ、ちゃんと仕事しますから」

「待ちなさい、勝手に依頼を受けてはこまるんだけどな」

「僕は冒険者じゃ無いので、あなたに従う必要は無いですよね」


 僕の言葉でその職員は僕を睨みつけ、更には他の冒険者も僕を睨んでいるが、こんな小さな僕に対してそれは無いんじゃないかな。




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