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第五十三話 僕とラウラは王都を出る

 本日の選抜会ではフィナーレとして正式に勇者バザロフが発表される。ただこれから勇者の指輪の引き継ぎが行われるので、その訓練が終わる迄アールシュ様の指導を受け、合格が貰えると皇帝が示した方面に旅に出る事になる。


「なぁ最後まで見届けなくていいのか、もしかしたらエサイアは選ばれるかも知れないんだぞ」

「いや、今の俺の実力では無理さ、それより二人の見送りをさせてくれよ」

「ねぇ実は寂しいんでしょ、泣くぐらいだったら付いて来ても良いんだよ」


 ラウラはエサイアをからかっているが、決して本気では無くエサイアは此処に残る事を確信している。


「五月蠅いぞ、それより本当に……まぁいいや」

「何よ、まだ言うつもりなの、しつこいんだけど」


 昨日の夜も納得しなかったエサイアが色々と尋ねたが、一貫して僕の事は弟以上では無いようだ。

 ラウラは僕がいかにして男としての魅力に欠けているのか夜中まで話された時には流石の僕も涙がこぼれそうになった。


「また説明しようか」

「止めろよ、もう僕は聞きたくないよ」


 こんな事なら黙って一人で向かえば良かったと後悔してしまう。

 僕としてはもっと感動的に別れたかったがそうは上手くいく事は無いようだ。


「まぁあれだな、二人とも元気でな」

「あぁそうするよ、エサイアも無理するなよ」

「俺の名前はかなり売れたからな、パーティ選びも楽に出来そうだよ」


 新人冒険者のエサイアではあるが、仮にも決勝まで行ったのだから変な苦労はしなくて済むと思う。


「女遊びにうつつを抜かしたらおじさんに言うからね」

「止めろよ、そうだとしても連絡はするなよな」


 感動的な別れではなかったが、これがクルナ村での初めての友達のエサイアとの別れだ。

 王都を出ると直ぐにエサイアの姿が見えなくなったので何だか目頭が熱くなってくる。


「ねぇ泣いてるの、そもそも王都には一人で行こうとしたのに何で今回は泣いているのかな」

「知らないよ」


 馬鹿にしたような目で見てくるラウラにほんの一瞬でも結婚を申し込もうとした昨日の僕を殴りたくなってきた。


 今までは一人ずつ馬に乗っていたが、今はラウラを僕が一人で守らなくてはいけないので一頭に二人で乗っている。


 何かしらの原因で二人の間に距離が出来てしまうのを警戒したからだ。


「ねぇ怒ってんの」

「違うよ、只警戒しているだけだよ」


 この街道は整備されているし、人通りもそれなりにあるので神経をする減らしてまで警戒をする必要は無いのだが、自分だけしかラウラを守れる者がいないので油断をしている暇はない。


「そうだ。これなんだと思う」


 そう言いながら掌に収まる位の魔石を見せてきたが、僕には全く分からない……ただアリアナさんの魔力を少しだけ感じる。


「これはアリアナさんが細工しただろ、それで何に使うんだ」

「それはね……」


 ネクロマンサーでは無い僕にはどんな原理になっているのか分からないが、ラウラがこの魔石に魔力を流しながら投げると、近くにある物質を吸収してスケルトンが現れるらしい。


「どうしてだ……あ~だったらもっと前に教えてくれたら野営の見張がもっと楽だったんじゃないか」

「嫌よ、これは私の秘密兵器だし、人口スケルトンを夜の間に出しっぱなしに出来る程の魔力が私にあると思っているの」


 だったら僕の魔力を貸せばいいだけの話だが、今更知っても仕方のない事だし、例えそのスケルトンが優秀だとしてもラウラの完全な安全の為に野営はしない。


 お金はそれなりに持っているし、実は皇帝から旅費が出ている。名目上は未来の勇者の為に投資となっているので有難く使わせて貰うが、それでも僕は皇帝の為に働こうなどとは思えない。


 王都を出てから二日が過ぎ、今日も早めに街の中で宿探しをしている。





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