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第五十一話 僕の母親代わり

 僕はエレナと別れると、その足で昔懐かしい地区に入って行くが、やはり人目にはつきたくないので闇に潜って魔法学校に潜入する事にした。


「こんばんわ」

「はい、こんばんわ」


 何年かぶりに魔法学校の廊下を歩いているのと、僕の顔を知っている人がいないせいかすれ違う子供達は普通に挨拶をしてくるので僕も気楽に挨拶を返している。


「君はレーベン君じゃないか……何で此処にいるんだ。どうやって中に入った」


 もう少しでマザーの私室に到着すると言う時に、僕の時代にもいた先生に出くわしてしまったが、やはり顔は知っているものの名前は思い出せない。


「マザーに呼ばれたので来ましたが、それがどうかしましたか」

「ちょっとここに居なさい。私が確認してきます」


 ちょっと困ったことになりそうなので【潜闇】で部屋の中に入るか、そのまま逃げ出そうとも考えたがその気持ちをグッと押さえ込んだ。


「レーベン君、こっちに来なさい。確認が取れました」


 先生に案内されて部屋の中に入って行くと、もう夜だと言うのに書類と格闘しているマザーが座っている。


「もう少しで終わりますので待っていて下さいね」

「はい、分かりました」


 此処にいた時は考えもしなかったが、此処の先生は他に家はあるのだろうか。僕達は此処で生活をしていたのだから当り前だが、先生達の事は良く分からない……どうでもいいな。


 かなりの間待たされたようで、僕の為に用意された熱い飲み物が、いつの間にか飲みやすい温度に変化していた。


「ふぅお待たせしましたね、それよりどうやって敷地内に入ったのですか、警備の者は貴方を通してはいないと言っていましたが」

「あぁそうですね、ちょっと勝手に入らせて貰いました」

「まぁいいでしょう、勝手に部屋に入ったのなら怒るところでしたが」


 久しぶりとは思えない程、落ち着いた様子でマザーは話し掛けてくるので少しだけ拍子抜けしているが、そのそも感情を表に出す人では無かったので、こんな感じだろう。


「そう言えばアリアナさんを紹介して下さって有難うございました。おかげでクルナ村では楽しく暮らす事が出来ています」

「そうですか、それは素晴らしい事なんですが、貴方は此処ではまたしても失敗しましたね、もう少し方法が無かったのでしょうか、あれでは誰もが闇属性持ちだと気が付いてしまったではありませんか」


 魔法を使える者なら共通で使える魔法があり、僕にはそれでゴブリンを討伐していたら良かったのにと言いたいのだろうが、僕には闇属性専属の魔法しか今は使う事が出来ないし、そもそもの原因はロンメル達で彼等を温室育ちにしたせいだと思う。


「僕の身体はこのようになってしまいましたが、闇属性を恥だとは思っていません」

「私も闇属性が恥だとは言っていませんが、世間の者が全てそうは思っていないと言う事を自覚した方が良いですよ」


 確かに僕の事を知っている人以外の前であの【腐闇】を使った事は初めてだったし、いつも以上の効果になってしまったのであの反応は理解出来る。


 その事をちゃんと理解して今後はもう少し気を付けようと思う。


「はい、そうですよね」


 それからも、僕が皇帝に対してしてしまった態度についてかなり厳しめな説教を受けた。それにルカス神官の権威をわざと下げさせようとしたことも含まれている。


 あの場で素直に従って置けばこの教会側との関係に光が差したかもしれないと言ってきたが、確かに利益を無視した子供のような行動ではあるが、僕は反省も後悔もしていない。


「まぁいいでしょう、この先はどうするのです」

「アールシュ様が皇帝に進言しましたので多少は修行をしなくてはなりませんので、向こうの街に行きます」

「そうですか、それなら安心ですね」


 暫く話し込んでしまったので僕は宿に帰ろうとすると、あの当時の僕を守る事が出来なかった事を涙を流しながら謝ってきたが、僕は恨んでいるどころかずっと感謝していると告げた。


 そもそも闇属性なんて文献にも資料にも無いので普通の人には分かる訳がない。ただアリアナさんの元に僕を送ってくれた事で僕は笑って暮らせている。


 そんな場所を教えてくれたマザーを僕はどうして恨む事が出来るのだろうか。


「無茶はしないで下さいね、何かあったらここに来なさい」

「有難うございます。そのお気持ちだけで十分です」


 僕がマザーを頼ってしまったら迷惑をかけてしまうので甘える訳にはいかない、


 ……さて、最後はあの二人だけど、まだ寝ていないよな。



 

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