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第四十九話 僕は意見を言ってみる

「貴様は勇者のパーティに本気で入りたいのか」


 前置きも無くいきなり壇上の上から話し掛けられたが、この男は偉いのは分かるけど誰だか僕には分からないので返答に詰まってしまう。


「早く答えんか」


 法王の隣にいる男が怒鳴ってきたが、そもそもこいつの事も知らない。


「えっいや」

「はっきりせんか、皇帝を前にしてその態度は何だ」


 僕の知っている皇帝は老人だったはずなのに、いつの間に代替わりをしたのだろう。まぁあんな田舎に居たら雲の上の存在である皇帝の事なんか誰も興味がないのだから致し方ないが。


「申し訳ありません……それでなんでしたっけ」


 怒鳴られたり考えたりしている内にすっかりと質問の内容を忘れてしまった。


「元帥のお前が怒鳴るからだろうが、貴様は黙って見ていろ」

「はっ申し訳ございません」


 どう見ても元帥の方が皇帝より年下だというのに、怒られている姿は何だか可哀そうなので僕は無表情にしている。


「貴様は……レーベンだっけな、小さな子供が参加してると聞いたので宰相に調べさせたら、随分と複雑な事になっているじゃないか、どうだ、ことと次第によっては全てを撤回してやるが、どうする」

「あの、全てというと王都での滞在や教会の事でしょうか」


 少しだけルカス神官の方を見ると、バツの悪そうな顔で僕と目が合った。


「そうだ。貴様はもう一度魔獣と戦ってその力を全て見せろ、倒せたら貴様はその場でパーティ入りは決定だ」


 バザロフの方を見るが、まだ僕の事を思い出せないらしく、その表情はつかみどころがない。


 この勇者と一緒に冒険か…………絶対に嫌だな。


「あのですね、昨日ルカス神官とフレット神官から御叱りを受けまして、なるべく早く王都を出て行くと告げたらかなりのお金を貰いましたので、パーティには入れません」


 さぁ僕の発言で神官達はどうなるのかな。


「子ども相手に何て馬鹿な事をしたんだ。それでも神に仕える者のやる事か」


 法王は顔を赤く染めながらルカス神官は唇を震えさせながら俯いている。僕にとっては軽い復讐のつもりだったがかなりの大事になりそうで、周りもざわついている。


「もうよい、儂が決めたんだ誰にも文句は言わせん。それでいいな法王よ」

「はっ、従います」

「何故ですか。この者は魔族でしか扱えない闇属性を持っているんです。そのようなものが勇者の仲間にいていいのですか」


 ルカス神官が必死な声で話すとまたしても今場の空気が変化していく。


「あのなぁ闇属性だろうが光属性だろうが強ければいいじゃないか。考えが古すぎるから何十年と戦っても魔国や亜人国を支配する事が出来んのだ」


 皇帝は口から唾を飛ばしながら怒鳴るが、僕はその言葉で冷静になって行く。


 ……どこと戦わせるつもりなんだ。

 ……人間の国を守るのが勇者じゃないのか。

 ……亜人の国を支配って何だよ。

 ……この皇帝は無いを考えているんだ。


 ルカス神官を始め、誰もが黙り込むと再び皇帝はゆっくりと話し出した。


「儂はな、属性もそうだが貴族だろうが平民だろうがそれすらどうでもいいんだ。本人の実力が全てだと思っている。だから貴様が何であろうと一向にかまわん。だけどな大部分の連中にはそれは分からんし、上にいる観客も理解出来ていないぞ。どうだ見返してやらんか」


 何故だろう、この皇帝の言う事は分かるけど、僕はどうもこの皇帝を好きになれそうもない。それに勇者がバザロフと決まっているならなおさらだ。


「あの勢いで参加しただけですのでもういいです。それに教会に出入が出来なくても何の不便もありませんので」


 折角僕を味方してくれた皇帝には悪いが、このまま従ったらいいように使われそうな気がする。ただこの発言で僕はこの場にいる大人たちの大部分を敵に回してしまったのかも知れない。


「そうか、よくも儂にそのような口が効けたもんだな。命はいらんのか」


 まさかの脅しに、僕はマザーに助けを求めるが、目が合ったマザーは涙目になっている。


「お待ちください。この小僧を私に下さらんか、今回は間に合いませんが鍛えれば次の勇者に成るかも知れません」


 捕まる前に闇の中に逃げようとしたが、勇者、いや元勇者のアールシュ様が助け船を出してくれた。


「ふ~ん。貴様が言うのであれば好きにするが良い。その小僧は貴様に任せて儂は城に帰る」


 皇帝は二度と僕に目を合わせることなく奥に消えて行き、周りの人達も部屋から出て行くようだ。マザーだけは僕に夜になったら部屋に来るようにとだけ告げ、この場には僕とアールシュ様だけが取り残された。

 

 

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