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第四十五話 僕は再び神官と対峙する

 僕達が神官が来るまで待たされている部屋は、あの時の部屋の中だ。別にわざわざこの部屋でなくともいくらでも部屋があるというのにここにしたというのは、決して偶然では無くてわざとに決まっている。


 僕がこの程度で動揺するとでも思っているのか。


 すると、静かに扉が開き、ルカス神官とフレット神官が部屋の中に入ってきた。


「久しぶりだねレーベン君……そちらの女性は誰かな」

「ただの付き添いです。本殿などは滅多に入れないので連れて来ました」

「そうかね、それより私達が君を此処に呼んだ理由は分かるだろうね」


 ルカス神官のような言い方をされると昔なら委縮してしまうが、今は只の年寄りの戯言としか思えない。そして、その隣にいるフレット神官は神経質な男としか思っていない。


「さぁ何でしょうか、僕には何の事やらさっぱり分かりません」


「君は見た目は可愛らしい子供の様にしか見えないが、その中身は随分と違うんだね、たった数年で私達にそんな態度が出来るなんて驚きだよ」

「もう何を言っても無駄ですよルカス神官。それより話を進めようではありませんか」


 この二人の話を聞いていると、サンベルノ教から追放されて本当に良かったとさえ思えてくる。この二人はこれで大幹部というのだから本当に嫌になってきた。


「ちょっと……」


 今まで神官を目の前にして委縮していたラウラだったが、この二人に思わず口を挟みそうになったので、僕はラウラの手を強く握りそれ以上話さないようにと意味を込める。


 僕は教会から睨まれても気にしないが、ラウラは出入禁止とでもなってしまったらこの先、例えば結婚や葬式でもするときになったら大問題となってしまうだろう。


「どうしたんだお嬢さん、何か言いたい事でもあるのかね」

「いえ……口を挟んで申し訳ありません」

「良いんだよ、それではいいかな、君は本当に勇者のパーティに入れる資格があると思っているのかね」


 やはり闇属性の事を言っているのだろう。別に規定では参加出来ない属性の事は書かれていなかったが、この二人は闇属性はふさわしくないと言いたいに決まっている。


「もうどうでもいいですよ、ただの勢いで参加してしまっただけですから」

「そうかい、それなら良かった。ただね怪我もしていないのに参加者が棄権すると変な憶測を呼ぶかもしれんな」


 知らないよ、面倒だな。


「明日は協力して魔獣と戦うんですよね、僕はわざと後ろで見ているだけにしますから、それでいいでしょう」


「その言い方だと本当は一人でも倒せるとでも言いたげだね」

「もう宜しいではありませんか、彼にだって意地があるんですよ、そう言いたいに決まっているではありませんか」


 フレット神官は哀れな目を向けてくるので何だか言い返したくなってきたが、今度はラウラが僕の手を強く握ってきたので、(言わせておきなよ)という合図なのだろう。


「もう宜しいでしょうか、これ以上は話す事は無いと思いますが」

「待ちなさい、初日みたいな騒ぎを起こさない事と……そうだね、もう一つ付け加えようか」


 初日の事は僕には全く無関係なのに難癖を言ってくるが、彼等の背後には教会と帝国の影が見えるので反抗しても無駄のように思える。


「何でしょうか」

「選抜会が終わったら直ぐに王都を出て行きなさい。君が姿を見せてから君の出入り禁止を解除するようにと言ってくる者達がいてな、いい迷惑なんだよ」


 まさかそんな事になっているとは思わなかったが、気持ちは有り難いけど僕にはそのつもりは無い。


「分かりました。最初からこの王都に長居をする気はありませんし、僕の立場はこのままで結構です」

「そうかね、そう自ら言ってくれると助かるな、まぁ変に揉めないでいてくれたんだ。せめてこれを持って行きなさい」


 黄金色の袋が僕達の前に投げ出され、その地面に落ちた音から判断するとそれなりの物が入っているのだろう。

 子供の頃は無一文で追い出そうとしたくせに、今度はお金を掴ませようとしてくるとは……。


 僕はその場では直ぐに懐に入れたが、教会を出る前にその袋のままシスターに御布施として渡してきた。


「何してんのよ、貰っておけばいいじゃない」

「いいんだよ、僕はそこまで困ってないしね」


 事を荒立てなくなければせめて違う場所で寄付をすればいいのだが、僕はどうしてもあれを長く懐に入れておきたくなかった。

 もし見つかってしまったら印象は更に悪くなると思うが、それでも僕には意地がある。建前上は一度僕の手に渡ったのだからそれで良いと思う事にした。


「まぁ私のお金じゃ無いからこれ以上は言わないけどね、ねぇそれよりあんたは何をしたのよ」

「あぁそうか、知らなかったっけ、う~ん、気にしなくていいよ」


 誰が僕を助けようとしたのか知らないが、これは助けになるどころかいい迷惑でしかない。




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