第四十一話 僕の友達
バルナバスとエレナが僕達が部屋に入ると立ち上がって歓迎してくれた。
「いやぁ久しぶりだね、聖騎士になったんだってな」
「まぁな、それで君の方は……大丈夫なのか」
やはり、ほぼあの時のままの姿だとそう思われても仕方がない。
「もういいでしょ、お兄ちゃんとその友達にも座って貰おうよ」
「あぁそうだな、すまん、座ってくれ」
促されるようにして座るが、小声で「お兄ちゃん」とからかってくる二人が煩わしいので、エレナに注意すると共に、お互いの紹介をする事にした。
「それにしても凄い店だよね、聖騎士ってこういう店でいつも食事をするの」
「ここでしかと言った方が良いかも知れませんね、どうしても聖騎士となると食事をする場所を選ばなくてはいけませんので、意外とつまらないものですよ」
バルナバスが持ち前の社交性でこの場が穏やかな雰囲気が流れている。暫くすると僕と二人だけで話す事になった。
「なぁレーベン、向こうでは何をしていたんだ」
「村の為になら色々さ、けどこれからは暫く外の世界を見るつもりだけどね」
「身体の調子はどうなんだ」
僕がこうなった原因は分かっているが、バルナバスは分かっていないのだろう。
「至って健康だよ、ただ闇属性のせいで成長が遅いみたいなんだけどね」
「それなら寿命が延びるのか、まるでエルフみたいだな」
「どうかな、もしそれだったらもっと広まっても良いと思うんだけどな」
この国で闇属性が僕とアリアナさんだけであるはずがない。そして寿命が延びるなどのメリットがあるなら魔法省が研究しているはずだ。
「僕の事より君の方はどうなったんだ」
「卒業の時に調べたけどいつの間にか属性が光になっていたよ」
バルナバスはいつの間にか僕の天敵ともいえる光属性になってしまったようだ。
「そうだよな、聖騎士だもんな」
僕は昔、聖騎士や白魔術師に憧れていたが、それは何故だか遠い昔の出来事で夢の中のような話だったように思える。
「魔法の方はどうなんだ。仮にも遠距離型で参加したんだから自信があるんだろ」
「まぁたまたまだよ。初日を通過しただけでもう満足したけどね」
「そんなこと言うなよ、勇者バザロフ様との相性が良かったら誰もが選ばれる可能性があるんだぜ」
「えっもう勇者が決まったのか」
「そうさ、あんな力を見せつけられたら初日で決まってしまうよ」
何をしたのか知らないが、そんな事になっているとは……勇者バザロフ……バザロフ……んっ……バザロフってあいつか。
「あのやろ~」
確か僕がこの王都を出る前に金で助けようとしたクズの名前がバザロフだったような気がする。
「どうしたんだよ大声を出して、あの人の事を知っているのか」
「そいつは冒険者だろ」
バルナバスが頷いたので奴が僕にした事を話したが、僕が想像をした反応は返ってこない。
「昔はそうだったのか、今でもケチだという噂はあるけどな……ただな実力は桁外れだよ。何と言っても金剛級だからな、何十年と誰も到達しなかった階級に辿り着いたんだぞ」
冒険者の階級で凄いのだろうが、そんな事は僕にとってはどうでもいい事だ。
「何だか嫌になってきたよ、もう適当にやろうかな」
「そんな事言うなよ、油断すると危ないから気を付けろよ」
「ちょっと~そんなところで二人で盛り上がっていないでよ~」
エレナが僕達を見つけて大声で呼び、再び五人で楽しい時間を過ごしたが、本題であるはずの結婚についてやいつからそうなったなどの深い話はエサイアとラウラがいるので話せなかった。
クルナ村では見る事が出来ない綺麗な料理でそれに見合った美味しさではあったが、今の流行りなのかデザートが甘すぎるのが残念だった。
三時間程この場所で過ごし、この選抜会が終わったら再びここで会う約束をしたが、パーティに選ばれたのならその者にはその時間が与えられるとは思えない。
僕はグレゴールという秘薬で魔力の増強と引き換えに属性が反転してしまった。もう一人の友達は副作用で命を落としてしまった。バルナバスにはどんな副作用が出たのだろうか、光属性になったことが副作用だと僕は信じたい。
帰り道になって今迄楽しそうにしていたラウラが少しだけ元気がなくなっている。慣れない場所で疲れてしまったのかも知れない。
「聖騎士さんてさ……友達だったの」
「数少ない友達さ、今でもそうだと思ってるよ、それがどうかしたか」
「別に何でもないよ」
ラウラはそれ以上言ってくれなかったが何かを感じ取ったようだ。僕はそれを知りたいような気もするが、知らない方が幸せかもしれない。




