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第三十四話 僕はエレナと再会する

「うわぁ~凄い、これが王都なの」


 王都を始めて見るラウラは想像以上に高くて立派な城壁に目を奪われている。その隣にいるエサイアは言葉に出来ない位に驚いて口を大きく開けていた。


 僕はこの瞬間が見たくて、王都が見えるかなり前から二人には目を瞑って貰っていた。僕は二人の馬と繋いでいたロープをほどきながらにやけてしまう。


「なぁ、散々面倒だとか文句を言っていたけど、どうだい感動しただろ」

「あぁそうだな、此処で暮らせたらいいかもな」


 エサイア達は喜んでくれているが、僕は胸が締め付けられるようになってきた。初めてのエレナの手紙で僕は此処に来てしまったけど、僕はここに入ってはいけないことになっている。昔の話なので特に問題は無いだろうと信じたい。


「僕は中に入ったら少しだけ別行動をするけどいいよね」

「いいけどさ、宿を決めてからにしてくれよ」


 確かにそれをしておかないとこの広い王都では再び合流するのは難しくなってしまうが、僕はこの王都に居た時は魔法学校の中がほぼ全てだったので宿の場所など知らない。


 王都だけあるのか門番の本人確認がかなり慎重なので、もしかしたらと思ったがその心配は無用だったようだ。


 そして三人とも無事に王都の中に入る。


「ねぇ馬鹿なの、何でレーベンも選抜会に参加するかなぁ」

「あそこで登録出来るって言うからさ、つい……」


 目の前でエサイアが選抜会に参加する為に来たと告げると門番だけでなく周りの兵士や順番待ちの人からも歓迎の声が上がり、気分が高揚したエサイアは僕の事も言ってしまった。


 僕の姿を見て馬鹿にする人や注意をする人が出てくるかと思ったが、エサイア以上に褒められたので思わず僕も参加を表明してしまった。


「のせた俺が悪いんだけどよ、折角だから夢を諦めて欲しく無くてな、まぁ宿を決めてレーベンを自由にしてあげようぜ」

「分かったわよ」


 選抜会の闘技場の近くは既に満室になっているので少し離れたのどかな地区にある宿で二部屋を借りることになった。


 僕は二人と別れ手紙で書かれてあったエレナが働いている治療院の場所に馬を走らせた。ただその場所は王都の中心地区では無く、かなり離れた端にある地区というのが意外だった。


 治療院を通行人に聞きながら進んで行くと何とか到着したが、この地区にしては大きな治療院ではあるが、あの魔法学校の出身者が勤めるような治療院では決してない。


 漠然としながらも治療院の扉を開けると中は治療を受けたい人で溢れかえっていた。僕はその人達を避けながら受付の女性に話し掛けた。


「あの、ここにエレナが働いているはずなんですが」

「そりゃいるわよ、エレナ先生に何か用事なの、坊や」

「知り合いなのですが、呼んで貰えないでしょうか」


 その中年の女性は僕の後ろを見渡し、深い溜息を吐きながらゆっくりと僕に告げた。


「あのね、この状況を見ればわかるでしょ、坊やは健康そうだから最後にするけどいいよね」

「あっはい、それでいいです」


 どのくらい待ったのか分からないが、僕が涎を垂らして眠っていると受付の女性が起こしに来てくれた。


「起きなさい、もう少しで会えますよ」

「有難うございます」


 待合室にはまだ数人の患者がいるがその人たちはエレナの担当では無いのだろう。この中に先生と呼ばれる人は何人いるか知らないが僕が思った以上にいるかも知れない。


 するとエレナが個室から姿を見せ、僕の記憶よりも遥かに背が高く美しい姿の女性に成長していた。


「やっぱりお兄ちゃんだ……本当に来てくれたんだ……あの時のままだね」


 そう思われるのは致し方ないが、僕はあの時と比べて指が三本分は伸びている。


「あのさ、どこかで話せるかな」

「当たり前だよ私が呼んだんだから、バルナバスもいたら喜んだよ」


 ……僕はお兄ちゃんで、あいつは呼び捨てか。


 何となく時間の流れを感じてしまい、少しだけ寂しくもあったが直ぐに懐かしさの方がその気持ちを上回った。


 僕はそのまま治療院の近くにある一軒家に案内された。


「あの治療院からスカウトされた時にくれた家なんだ。大きすぎるのがちょっと嫌なんだけどね」

「良いじゃないか、たださそれより外では僕の事をお兄ちゃんって呼ばない方が良いよ、治療院の中でいろんな人に変な風に見られたじゃないか」

「え~良いじゃない」


 エレナは不満そうだが、僕がエレナのお兄ちゃんに見える姿では無いので、変な勘繰りを入れられる前に直してほしい。


 僕は小さな暖炉の前でエレナが着替え終わるのを待っていると、私服に着替えたエレナはもう食事の準備が出来たと言ってきた。


「もう食事の用意をしたのか、随分と早いんだな」

「魔法を使っているからね……ごめんなさい」


 そこから話さなくてはいけないか……。

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