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第参十三話 僕は決めた

 特にこれといった理由は無いがエサイアの足元から姿を現してみた。


「でゆぅわぁっ、お前な、いくら何でも夜にこれをやる事ないだろうが」


 てっきり驚いて腰を抜かすかと思ったが、エサイアは驚きながらも僕襟首をつかんで引き上げた。


「ごめんって、僕が悪かったよ、ラウラも起きてしまうからさ静かにしようよ」

「お前二度とするなよ……、それでどうだったんだよ」


 僕を地上に下ろしてくれたのでさっきの事を細かく話して聞かせた。


「結局、あの魔法は使いこなせそうにないな、僕が描いたイメージをとは違う様だ」

「俺はそのままでも良いと思うけどな、それよりこんな時間に何でその馬車はいたんだろうな、女性がいたのに宿の泊まらないなんてな」


 確かにエサイアの言いたい事は分かるが、それを思うならもっとラウラに気を使えないのか。


「考えても分からないな」

「なぁそんなに綺麗だったのか」

「綺麗だったけど何となく怖い女性だったな、でもあんな人が勇者だったら人気が出る気がするよ、あっもしかして本当に勇者かパーティに入るのかも」


 僕の考えだと警備の兵を信頼していたから最後まで出てこないのであって、僕が警備兵よりも強いと感じたから姿を現したのかも知れない。そこまでの女性だったらその可能性はあるはずだ。


「ねぇどうしてそこまでその子の事が気になるのかなぁ」


 僕達の話声が五月蠅かったのかラウラが目を覚ましてしまった。


「レーベンが恋をしたんじゃないか」

「おいっ勝手な事を言うなよ」

「ふ~ん、レーベンも男なんだね」


 二人は僕ににやけた目を向けてくるので何だかムカついてきた。


「あのさ、君達は元気そうだから見張りは任せたよ、それじゃお休み」


 僕は二人から離れて闇の中に潜って眠る事にした。これならば邪魔される事は無いし、外が明るくなれば勝手に地上に僕を押し上げてくれる。





「あっ上がってきた」


 外が明るくなったので僕は地上に姿を見せたが、その僕を二人は睨みつけてくる。


「お前は良い根性してるよな」

「ねぇ、ちょっとからかっただけなのにこれは酷いんじゃないの、おかげであれから寝ていないんだよ」

「エサイアが変なこと言うからいけないんだろ」

「はぁ~俺かよ」


 僕は全く悪くないと思うけど二人がかりで攻められ、この日の食事は全て僕のおごりと言う事でこの話は収束をすることになった。


「そうだレーベン俺さ、選抜会に参加する事に決めたよ、よく考えたらさパーティに入って五年ぐらい働けばかなりのお金を貰えるだろ、冒険者をやるより良いじゃないか」

「何をいきなり言うんだよ、どうしたんだ」


「二人で見張りをしている時にいきなり言い出したんだよ、そりゃぁ地位も名誉もお金も勇者やその仲間だったらかなりいいだろうけどさ、それでもねぇ」


 エサイアの言う事は間違ってはいないが、五年ぐらいで止める者は殆どいない。勇者たちは魔国に行く事が許されているので魔石や魔獣を持ち帰って稼いでいる人達もいる。


 この前までの六人の勇者の中でいったい何人が勇者を仕事ではなく、市民を守るために戦うと思っているのだろうか。


「止めとけよ、勇者は力を授かるから滅多に死んでしまう事は無いけどパーティの仲間はそうじゃないじゃないか」

「あのなぁ、冒険者全体の割合から死者の数を出すと冒険者の方が死亡率は低いけど、一人前と言われる藍玉級以上だったら冒険者の方が死亡率が高いんだよ。冒険者は魔国に行っていないのにだぞ」


 一流の仲間が揃っているからだと言いたいのだろうが、僕は数字だけでは安心できない。


「ねぇそんなのはどうでもいいの、魔人と戦うなんて想像できるかって言ってるの」

「あのさぁまだ決定した訳じゃないんだぜ、力不足だと思われたら落ちるに決まっているじゃないか、……そうだっレーベンも参加しろよ、昔の夢だったんだろ。魔法も使えるようになったんだ。諦める事はないさ」


 確かにその夢はあったが、勇者の背後には帝国や教会があるのに参加しても……。


「無理よ、レーベンの魔法はあれだからね、どっちが魔族か分からないよ」


 ラウラは全く悪気はないのだろうが、僕の心を傷つけるには充分な言葉で何だかムカついてきた。


 僕も参加してみようかな。

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