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第三十話 僕のあさはかさ

 あの三人の男達が去って行った後、僕達は別室で軽く神父から御叱りを受けている。


「事情は理解しましたが、魔人と錯覚させる幻術は感心しませんね、ただそれにしても君がですか……、誰に教わったのですか。もし上を目指すのなら魔法学校に推薦致しますが」

「いえっ結構です」


 思わず吹き出したラウラの脚を踏みつけながら、なるべく感情を出さないようにして神父の申し出を断った。


「そうですか、それは残念ですね、ただ魔法で生計を立てようと思うのであれば何時でも言って下さい。素人の教えより専門の人に教わった方があなたの為になりますよ」

「はい、考えておきます」


 やはり魔法学校を進めてきたが、まさか僕がそこでは劣等生でそこを出てからの方が成長できたなど思ってもいないだろう。


 それにしても光属性持ちというのはどうしてここまで闇属性の魔法を受け付けないのだろうか。


 僕の中で人体に一番影響のない【煙闇】を背後か包んでしまおうとさっきからやっているのだが、闇は神父の身体に触れようともしないで見えない何かに弾かれてしまっている。


 魔力を本気で流したらどうなるのかは分からないが、それでも光属性持ちは僕にとって苦手どころか天敵なのかも知れない。


「どうかしましたか、かなり汗をかいているようですが」

「すみません、すこし体調が悪くなってきましたので帰ってもいいですか」

「あぁいいですけど、もう中途半端な事をしてはいけませんよ、魔法を使いたいのであればちゃんとした場所で習うのです。分かりましたか」


「私が責任をもって弟に言って聞かせるのでもうさせません」


 ラウラは今度は僕の姉の振りをしているが、聖職者の前でどうどうと嘘を言ってしまっていいのか神経を疑ってしまう。僕は教会と縁を切られたのでまだいいが、ラウラは僕とは違うのに信じられない。


 僕達は教会を出て店に入ると、僕はただひたすらに魔法陣を書いている。少しでもゆとりが出てしまうと属性の事を考えてしまうからだ。


 僕は休憩もせずに書いていたが丁度きりのいいタイミングでラウラが僕の腕を掴んできた。


「落ち着きなって、少し乱れ始めてきたよ」

「そうかな、綺麗に書けていると思うけど」

「自分で見れば分かるでしょ、本当にそう思うの」


 目の前の魔法陣は、殆どの人が見ても微かな乱れは分からないと思うが、ラウラにはその違いが読み取れている。


「良く分かったね……僕は何を焦っているんだろう」

「ん~ん、怖がっているように見えるけどな」


 僕は心の中では光属性の事が怖くなってきたのかも知れない。そんな事を考える必要は無いのかも知れないが、いつか光属性の奴と敵対したときに僕は何が出来るのかと思うと怖くなるのは当然だろう。


「闇属性って価値がないよな」

「あのね、私は何一つ魔法なんて使えないし、エサイアみたいに力も無いんだよ、そんな私は価値が無いって言うのかな、ねぇどう思う」


 ……僕は何を考えていたんだ。

 ……魔法ではなく、魔法陣で生きていくのに。

 ……そもそも僕に戦いは必要じゃない。

 ……教会と敵対する気もないのに。


「僕が悪かったよ、何でだろうね」

「調子に乗っていたんんじゃないの、まぁ村の最終兵器とか言われたらそうなるよね、此処はさぁ村の中じゃ無いんだよ、そろそろ目を覚まさないとね、アリアナさんが心配していた通りだよ」

「えっどういう事」


 ラウラが旅に出る事をアリアナさんに相談すると、ついでに僕の事を見るように頼まれたそうだ。僕が調子に乗って問題を起こすようなら直ぐに連絡が取れるように魔道具まで渡されたらしい。


 それにしても、その為に婚約を勝手に破棄してまで僕に付き合うと言う事は、そういう事だろう。


「ねぇそこまで落ち込まないでよ」

「あぁもう大丈夫だよ、それに僕は君の気持に気が付いたけど、僕はまだ君と結婚する気は無いんだ」

「はぁ~、あんた私の話をちゃんと聞いていたの」

 

 僕の思っていた反応とちがってラウラは僕を睨みつけている。その顔を見ていると僕は何かとんでもない勘違いをしてしまったのかも知れない。


「あのさ、婚約破棄は僕の事が好きだからと思ったんだけど……違うのかな」

「結婚したくないからって言ったよね、私がいつそんな事を言ったのかな、気持ち悪い」


 ラウラの嫌悪感を僕に向けた顔を見ていると恥ずかしくてたまらない。この店で働くのは今日が最後だと言うのにあまり作る事が出来ず、最後の挨拶も上の空でこの店とお別れをすることになった。


 二人とも会話が無くなり、僕は一人宿の部屋ででエサイアが帰って来るのを待っている。


 エサイアは今日に限って遅かったが、それでも僕の様子がおかしいので話を聞いてくれたが最後まで話すといきなり笑い出した。


「全く、変な告白をしやがったな」

「そんなつもりじゃないよ」

「まぁあいつも照れ臭かったんだろうな」

「えっどうしてだ」


 エサイアはそれには答えず、疲れているからと直ぐに眠ってしまった。

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