第二十八話 僕と魔法陣と闇属性
あの男達を見捨てた僕は公園の中でラウラに傷の手当てをして貰っている。
「また短時間で良くも此処迄やられたよね、他に方法は無かったの」
「僕は喧嘩なんかしたことが無いからどうしたら良いのか知らないんだよ、魔法も人に使った事はあまりないしね」
盗賊や魔獣が相手だったら深く考えずに魔法を使ったが、このような場合はどうしたら良いのか思いつかなかった。今なら何個も頭に浮かぶけどあの時は無理だ。
「そうだね、レーベンの魔法は邪悪だからね」
「そこまで言う事ないだろ、あのね、僕が一番気にしてるんだからな。そもそもあんな路地に入るラウラが悪いんだろうが」
「仕方が無いでしょ、効率がいい仕事を紹介してくれたし、それに鋼玉専用の買取場所があるって言われたんだから」
あいつらが冒険者だとは思わなかったが、それにしても冒険者として最下層の鋼玉級の専用買取場所などど、どういう思考回路をもったらそんな事を信じる事が出来るのだろうか。
「あのさぁラウラは村でも僕の手伝いをしてくれたろ、だったらここでもサポートしてくれないかな、報酬は山分けでいいか」
「そこまで貰わなくてもいいけど、あんな感じでいいの」
「あぁあれで十分だよ、冒険者より稼げるぞ」
まさかここまで報酬が出るとは思わなかったし、ラウラが手伝ってくれたらかなり楽になる。ただあの男達の事をギルドや衛兵に言わなくてはいけないとは思うが、僕も捕まりそうで自らは言えない。
店に戻る途中であの路地に沢山の人だかりが出来ていたが僕達は見ないようにして店の中に入った。僕に顔を見た職人が心配してくれたが、嘘が苦手な僕の代わりにラウラが上手く対応してた。
そして僕の仕事はやはりラウラがサポートしてくれたのでかなり効率が良くなった。午前中までは何度も席を立ったりしてバランスを確認したりしたが、少しでもずれるとラウラが指摘してくれる。そのおかげで3つの予定が4つ完成する事が出来た。
「今日はもう帰ろうか、お金を貰って来るよ」
「ねぇこれでいいの、いつもの見学と変わらないんだけど」
「それで僕の作業がはかどるから良いんじゃないかな」
今日の報酬を貰ったので約束通りにその半分をラウラに手渡す。
「何これ、こんなに貰える訳無いでしょ」
「これでも午後の分の半分だよ、別に僕が決めたんだから受け取りなよ」
「それにしてもあれだけでこれか……え~魔法陣って凄くない。書くだけでこんなに貰えるの」
余りにも大きい声を出すので急いで口を塞いで外に出た。この反応は僕もしたので気持ちはよく分かる。この街がおかしいのかそれともクルナ村がおかしいのかはその内に分かるだろう。
僕がどれぐらい稼ぐかをエサイアに言うつもりは無かったが、帰って来たエサイアに直ぐにラウラはその事を言ってしまった。
「凄いな、それだと蒼玉級の一日の稼ぎと大差ないぞ、それに冒険者は毎日は同じように稼げないし命の危険もあるから断然そっちの方が良いな」
「何だよ蒼玉級って、専門用語は止めてくれよ」
「専門用語って訳じゃないんだが、上から三つ目の階級だよ、ちなみに俺は五つ目でラウラは最下層の七つ目さ」
それだと少しいまいちな気がしてきたが、殆どの冒険者が蒼玉級には届かないそうなのでやはり良いのだと思う。
「ねぇギルドでさぁフスカ達の事は噂になっていなかったかな」
「誰だよそいつは、それよりレーベンのその顔はどうしたんだ」
今頃になって僕の顔の異変に気が付いたエサイアに今日会った事を全て話すと何故か顔をしかめだした。
「どうしたのよ」
「いやぁ、そう言えば路地で頭がおかしい奴が暴れているって誰かが言ってたな」
「どんな風に」
「良く分からんが何かの薬じゃないかって言っていたような気がするが、そうか、レーベンか……」
やはりあれは悪夢を見せる効果だけでは無かったようだ。闇属性の魔法はどうして何かしらの余計な効果が付いて来るのだろうか。僕が基本を知らないせいだとは思うけど、もう少し何とかして欲しい。
それから数日は何も無く過ぎて行ったが、その日の夜にエサイアが情報を持ってきた。
「なぁこの前の男達だけどな、あの日の記憶は戻ってないがそれ以外は完全に治ったそうだぞ」
「えっ再起不能ってこの前言っていたのに、何があったのよ」
「治療院に来ていた神官がちょっと回復魔法をかけただけだってさ、頭の中にあった影を消しただけだってさ」
そうなると僕が魔法を解除しても闇は多少残るのだろう。それにしても神官は光属性持ちなのかも知れない。闇属性は他の属性より数段上の力を持つと言われてるけど、どんなに弱くても光属性には敵わないというのは本当なのかも知れない。
「記憶無いって事は魔法の効果は分からないか」
「下手に言えないしね」
僕にとっては幸運だけど光属性との相性の悪さを痛感してしまった。




