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第二十七話 僕の新魔法

 二日目も防具にせっせと魔法陣を書いて行くが、店長の指示は防具を軽くしたり清潔にする魔法陣だった。

 僕としては攻撃にも使用出来そうな魔法陣を提案するが、何故は金額が安く設定されてしまうので書く気になれない。


「本当に君はいい仕事をするな、出来ればずっと此処で働いて欲しいよ」

「それは嬉しいんですけど、ちょっといいですか」

「うんどうした」

「どうしてこんな単純な魔法陣が高くて、僕が書きたい複雑な魔法陣が安いんですか」


 僕の質問が意外だったのか、店長は少し目を丸くさせたが直ぐに歯を見せて笑い出した。


「そりゃそうかまだ君は子供だもんな、それはな……」


 店長には本当の年齢を言っていないので子供扱いされるのは仕方のない事だがそれよりも僕の疑問は余りにも当たり前の事だった。


 攻撃に使用すると言う事は命にの危険にかかわると言う事なので、もしその時に発動しなかったらかなりの問題になってしまう。全滅してしまえばその事は誰にも分からないが、生存者がいてその事を言いふらされたらこの店の信用は無くなる。


 それ以外にもちゃんとした理由があり、僕がこの店でずっと働くか代わりの人材を見つけて来ない限り解決はしないだろう。買取金額が安いのは書かせない為だともいえる。


 もう一つを書き終え、少し早いが昼食をとる為に店を出た。従業員なら時間が決められているのでこんな真似は出来ないが、出来高で契約している僕には関係の無い話だ。


 この近くの商店街には屋台が出ていて何を食べようか迷っていると、毎日のように聞く声が聞こえてきた。


「だ・か・ら・あんた達のパーティには入らないの、しつこいな~」

「だったらせめて食事にでも付き合えよ、あの情報の代金だと思えば安いだろ」

「あんたらが勝手に話したんでしょ、知らないよそんなのは」


 声がする路地を除くとラウラが腕を掴まれて、三人の男に囲まれている。見てしまったので無視する訳にはいかないが、正直に思うとちょっとだけ躊躇してしまう。


……はぁ~、嫌だな~何でこんな路地で絡まれてるんだよ。入るなよな~。


「あのぉ一体どうかしましたか」

「あ~ん、何だこのガキは、いいから向うへ行け」


 三人の男達はあからさまにチンピラのような風貌をしているのでそれは良いのだが、ラウラの呆れたな目が少し気になる。


「おいっ、何ボーっとしてるんだよ、邪魔なガキだな」

「何であんたは出て来たのよ、潜れるでしょ」


 ラウラの考えはどうせ【潜闇】で連れ出せるとでも思っているようだが、腕を掴まれているのだからその男も闇の中に入ってしまうことに気が付いていない様だ。


「ラウラが考える程、万能じゃないんだよ」

「何を言ってるんだ。ガキは消えろ」


 その言葉に従って大通りに出て叫んでやろうかと思ったが、その考えを他の二人の男達は予想したみたいだ。


「こいつは助けを呼ぶかもしれんぞ、少し痛め……」


 話している内にラウラの腕を掴んでいる男に体当たりをしてその手を放そうと思う。


 ダッダッダッボンッ


 加速したのだが僕の軽い体重では何の威力も無かったようで簡単に弾き飛ばされてしまった。


「ちょっと大丈夫なの」


 ラウラの声が聞こえるが、倒れている僕に対して男達が暴力を振るっている。どう見ても子供なのによくこんな遠慮のない攻撃をしてくるのか、こいつらには温情というものは知らないのだろうか。


 魔法を使いたいが、それだと殺してしまう…………。


「ほら行くぞ」

「ちょっと止めてよ、レーベン、レーベン」

「五月蠅い、静かにしろ」


 僕の攻撃は続けられているし、ラウラの腕を引っ張っている。


「……もう知らないよ、幻闇」


 僕の掌から出現した闇が三人の男達を包み込んで行く。ラウラの掴んでいた男はその手を放し闇の中に姿を消した。直ぐにラウラが僕の所に走って来る。


「ねぇ大丈夫なの」

「痛いよ、凄く痛いに決まってるだろ」

「それだけ大声を出せれば大丈夫だね、それであいつらはどうなっているの」

 

 僕はその男達が闇に包まれている姿を見るが、明確な答えを僕は持っていない。


「魔獣に食われるって言うイメージを送ったけど、どうなのかなぁ、何せ実験が出来ない魔法だからさ」


 目に見える効果では無いのでいつかは人間に試したかったが、僕の魔法の性質を考えると行動できなかった。


 男達は闇に包まれたまま微動だにしないので、悪夢を見ているのかさえ分からない。僕とラウラはその場から離れ様子を伺うが、変化は全くない。


「ねぇずっとこのままにしておくの」

「だよね、魔法を解除するから逃げる準備はしておいてね」


 ラウラが頷いたので魔法を解除すると男達は叫んでいる。もしかしたら闇の中にいる間はずっと叫んでいたのかも知れない。闇が声を消していた可能性もある。


「ねぇかなり酷くない」

「そうだね……うん」


 叫びながらも男達は目や耳から口から血を流し、そのまま膝を付いた。声が出なくなてもまだ何かを呟いているようだ。


「ちょっとあれだね……やりすぎというか……」

「そうだね…………行こうか」


 男達を助けてやりたい気持ちは勿論あるけど、僕は身体がかなり痛いので助ける気力が湧かない。それに治療法など知らないのでこの場から立ち去ろう。


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