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第二十五話 僕はエサイアに従う

 何故僕が冒険者に登録が出来ただけの二人にお祝いをしなければいけないのか分からないけど、この街に来てからいい事がないのでそれでもいいような気がしてきた。


 ただ僕が酒場に行く事は出来ないのでやはり宿での飲みにする事となり、エサイアが調べてきた宿に入って行く。


「オヤジ、部屋は開いているかい」

「あぁ大丈夫さ、一部屋で良いんだろ」


 ここでも家族と思われたので一部屋を提案されたが、今回のラウラはそれには乗らない様だ。


「無理無理、二部屋にしてよ」

「まぁいいけど、本当にいいのかい」

「良いのよ、気にしないで」


 僕は同じ部屋に泊まりたい訳では無いけど、少しだけ仕返しをしたくなった。


「お母さん、わざわざ二部屋何て借りなくても良いと思うのにな」


 そう言いながら出来るだけ可愛くした笑顔を向けたが、ラウラの視線はもの凄く冷たいものだった。


「何その顔、気持ち悪いんだけど」


 どうやらラウラは親子の設定を忘れて、僕に対して本気で言っているようだ。その様子を宿のオヤジは怪訝な表情で見ている。


「もう止めろよ、レーベンが変な事を言うからこんな空気になるんだろ」

「そうね、いつまでも親子の設定を続けなくてもいいでしょ、そんなに私と一緒が良かったの」

「違うって、もういいよ」


「あの事でまだ機嫌が悪いのかよ、それなら明日は俺が一緒に行くからいいだろ、ちょっと考えもあるから心配するな」

「そんな事を言って大丈夫なの、レーベンの見た目の問題だけじゃないんだよ。それにこの街じゃなくてもいいんだからね」


 ラウラは不安そうだし、僕も同じ気持ちだ。エサイアはいつも強引に話を進めていくがそれが通用するのはあの村だからであってここで通用するとは思えない。それに時間の余裕があるとはいえわざわざこの街で時間調整などしなくてもいい。


「無理は止めてくれよ」

「今後の為の練習さ」


 この件は相当な自信を持っているのかそれ以上は教えてくれず、心配になったラウラも含めて三人で行くことになった。


 翌朝になりエサイアが向かったイゴー武具店はこのパルケエス街で一番大きいのだが、僕をただの冷やかしだと決めつけた最初の店でもある。


「あのさ、この店はかなりお高い態度をするよ」

「昨日の事は気にするな、やはり大きな武具店じゃないとな」


 ラウラに助けを求めるが、もう好きにさせた方がいいよと言っているようだ。エサイアはかなりの頑固なので失敗するまで自分の考えを押し通す性格なのを熟知している。僕の事を無視してエサイアは店の中に入って行き、直ぐに店員に声を掛けた。


「君さ、武具一式を揃えたいんだけど、お勧めを教えてくれないか」

「あっはい、では此方にどうぞ」


 エサイアは店員と話しているが、僕には何をしたいのかが分からない。


「そうだ、こいつに斧を練習させたいんだけど、一番安いのはどれかな」

「あの、お坊ちゃまには斧では無くて違う武器の方が似合いそうですが」

「良いんだよ、ただの訓練の一つとして買いたいんだ」


 店員は僕の体形をみて判断したのだろうが、その考えは正解だと思うし、そもそも僕には武器などは必要は無い、手ぶらが一番楽でいい。


「まぁどうしてもと言うのでしたら、練習用としてこれはいかがでしょうか」

「これは作った奴が初めてなのか、随分とお粗末な斧だな。まぁいけど1000ルピス位で良いだろうな」


 その斧はただ打ち下ろして衝撃を与えるのが精一杯で、とてもでは無いが斬る事は不可能だろう。


「それだと材料費にもならないのですが」

「良いじゃないかゴミになってるだろ。私以外の誰が買うと言うのかな」

「仕方が無いですね、今回は特別ですよ」


 エサイアは直ぐにお金を支払ってその斧を受け取ると、僕に耳打ちして僕に斧を渡してきた。僕はその斧を抱えて店を出る。


 ……暫くして店の中に戻ると、何故かラウラが鎧の試着をしている。


「これでいいかな、時間がない割にはいい物が出来たよ」

「あとはお前次第だな、さてどうなるかな」

「お客さん、どうかしましたか」

 

 ラウラに鎧の説明をしていた店員が不思議そうに振りかえった。


「あのな、さっき買ったこの斧を買い戻して欲しいんですが」

「はぁ、どういう意味でしょうか」


 僕が目の前で斧を軽く振ると刃の部分が炎で包まれたので、今まで呆れていた表情をしていたその顔に驚きの表情がこびり付いた。 


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