第二十四話 僕は子供にしか見えないらしい
もう僕には何だか分からなくなってしまったが、三人で王都に行く事が決定した。僕はクルナ村に来た時は乗合馬車を使ったのでかなりのお金を使ったが、今の僕達には馬があるのでその分は楽になる。
「お~いレーベン、悪いんだけどさ、今日は次の街で終わりにしてくれないか」
エサイアが後ろから声をかけてくるが、次で終わりとなると早いどころか早すぎる休憩だ。まぁ焦る旅でもないのだがそれにしてもゆとりを持ちすぎるのはどうかと思う。
「何か理由でもあるのか」
「次の街にはギルドがあるだろ、あそこで登録しておかないと次の登録はもっと先になってしまうからな」
「あっそれなら私も登録したいな、冒険者かぁいいね~」
エサイアが生きていくには冒険者が合っていると思うが、ラウラが冒険者になるとは想像もつかない。
「ラウラが冒険者ねぇ……」
「別に本格的にやる訳じゃないわよ、仕事が見つからなかったときの保険かな、勿論レーベンも登録するんでしょ」
僕もそうした方が良いのは分かっているが、どうしても冒険者にはなりたいと思えない。王都での経験は滅多にない事だとは思うが、僕の見た目はあの時とさほど変わらないのだから同じような事がありそうなのが嫌だ。
僕は冒険者になるともならないとも明確な返事はしないまま、ギルドがあるパルケエス街に到着した。久し振りの街の雰囲気に何となく興奮してくる。
「次の方どうぞ」
街に入る為に身分証の確認が行われ、僕達は三人一緒に呼ばれたが、何故か衛兵はエサイアしか身分証の提示を求めない。
「はい、大丈夫です。そちらは奥様とお子さんですよね」
その言葉が癪に障った僕は椅子から降りて身分証を出そうと思ったがラウラが後ろから抱きしめてきた。
「すみません、落ち着きのない息子でしてね」
「そうには見えないですよ、中々賢そうですね」
衛兵は無遠慮に僕の頭をなでてくるので益々腹が立ってきたが、僕を抱きしめるラウラの腕が強くなってきた。
直ぐに街に入る事を許可され、最初の曲がり角でエサイアがいきなり笑い出した。
「いやぁまさかレーベンが俺の息子とはね、いくら何でもそれは無いだろうに」
「だったら否定すればよかっただろ」
「いやぁついな、まぁいいじゃないか」
エサイアは軽く言ってくるが、僕にはこの気持ちは治まりそうもない。
「ラウラもラウラだよ、無理やり抱きしめて言わせないようにするなんて何を考えているんだよ」
「あれで早く終わるんだから良いでしょ、そんなだから何時まで経っても子供なんだよ」
「おいっそれは言い過ぎだぞ、ちゃんとレーベンに謝れ」
「ごめんなさい。悪気はないんだよ」
「あぁもういいよ」
僕の身体は殆ど成長していないが、クルナ村の人達はその事に触れなかった。分かってはいたけど知らない人から見たらやはり僕は子供だし、ラウラがあの様に思っていたこともショックだ。
この先何年か、何十年かしたら僕の姿は良い感じになるのかも知れないが、それまでどれ程悔し思いをすればいいのだろう。
「ねぇ、本当にゴメンってば」
「分かったよ、もういいよ」
楽しい空気ではなくなったがギルドに向かって行く。僕の目的はギルド近くの武具店に入り、武器や防具に魔法陣を書いてお金を貰おうと思う。アリアナさんに教わったのでいい稼ぎになるはずだ。
「くそぉ~何でだよ」
僕はエサイア達と別れた後で一人で武具店に交渉をしに行ったのだが、結果は誰も僕を相手にしてくれなかった。
見本として紙に書いた魔法陣を見せても誰も僕が書いた物だと信じて貰えないし、試しに書くところを見て欲しいと言っても誰一人として見てくれなかった。
結局この見た目が邪魔をしている。こうなったら冒険者として名を売ってからにしようかとも思ったが、どうしても過去を思い出しやる気が起きない。
仕方がないのでギルドの入口で二人が出てくるのを待っていると、いつの間にか眠ってしまったようだ。
「……ベン、レーベン、ねぇこんなとこで寝ないでよ、不用心だよ」
「なぁなぁ聞いてくれ、ラウラは普通に鋼玉級だけど俺はいきなり翡翠級からのスタートだぞ」
「何だよ翡翠級って、知らないよ冒険者の階級なんてさ」
「どうした。まだ機嫌が悪いみたいだな、それともまた何かあったか」
「ごめん」
エサイアに八つ当たりしてしまった事を後悔しながら別れてからの事を話し始めた。僕のこの容姿の事は簡単には解決できないので悔しかったが、エサイアはいきなり笑い出した。
「そんな事なら俺に任せろ、ただな、八つ当たりを反省したなら夕飯はお前のおごりだな」
エサイアのこの自信に僕は驚いている。




