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第二十一話 僕の心配事

 アリアナさんを起こさないようにしながら、野営の準備をして待っていると半日を過ぎたあたりでようやく目を覚ましてくれた。


「う~ん、久し振りに魔力切れを起こしそうになったよ、あいつだけを排除するのはかなり疲れたな」

「お疲れ様です。何か食べますか」

「どうしたんだい、随分と素っ気ないじゃないか」


 僕はアリアナさんに不満がある訳では無く、あれだけスケルトンを燃やした僕の存在を全く気にしなかったパドゥの事がずっと気になっている。僕の闇属性の魔法は魔人には通用しないのかも知れない。


 僕は無言でアリアナさんの前に魔法陣から出した食事を並べていく。


「あんたの魔法はパドゥには通用しないと思っているのかい」

「……そうなんです。やはり闇属性は魔人の属性なんですよね」

「馬鹿だねぇ、だったら私が使った魔法の属性は何なんだい」


 僕は自分の事しか頭になかったのでその一言で急に身体が軽くなってきたように感じる。


「そう言えば、そうでしたね」

「あのね、私達は大きく分ければ奴らと同じ闇属性だけど、もしかしたら少し違うかも知れないんだよ」


 アリアナさんの考えは、スケルトンを操る魔法と、重力魔法を使った事でパドゥから中途半端な魔法使いと言われてしまった。そんな風に言いきるのはおかしいし、【重力玉】を自ら触ったのであの魔法は魔国に無いのかも知れない。


 それに、スケルトンを吸収して強化するなど少し考えれば思いつきそうなのに、初めて見たようだった。魔人は出来ないのか、それとも試そうととしないのかがまだ分からない。


「そうなると、魔国には無いオリジナルの魔法って事ですかね」

「同じようにスケルトンを操っているから完全なオリジナルでは無いと思うけど、何かが違っているんだろうね」


 アリアナさんの言葉を頭の中で繰り返し、必死に考える。


「何だかよく分からなくなってきました」

「まぁいいんじゃないの、それに今回は魔国として仕掛けてきた事じゃなさそうだからそう簡単に魔人と戦わないよ」


 少しだけ喉に棘が刺さっているような変な感覚があるが、今考えても答えが出ない様な気がしている。


 二人食事をしてアリアナさんの魔力がある程度回復した頃に、とうとうドラゴンゾンビを復活させた。


「おぉぉぉぉぉぉぉっやっぱり凄いよこの子は、苦労したかいがあったよ」


 興奮したアリアナさんはドラゴンゾンビに抱きついて撫でているが、僕にはその気にはならない。


「本当に大丈夫ですか、暴れたりしませんよね」

「もうこの子は私の物で私の命令には従うけど、ただ他のスケルトンみたいに私以外が魔道具で動かすのは無理そうだね、んんっちょっと待って……」


 何が起こったのか分からないが、アリアナさんはドラゴンゾンビを触りながら目を瞑り出した。暫くして目を開けると僕に満面の笑みを見せてきた。


「空を飛ぶよ、ほらっ乗った乗った」


 無理やりドラゴンゾンビの背中に僕を乗せると、暗闇が広がる空に音も無く舞い上がった。てっきりそのまま帰るのかと思ったが、ドラゴンゾンビは全然違う方へ進み、ものすごい速度でいくつもの山を越えて行く。


「あの、気のせいかと思いますけど、こっちの方角って魔国じゃないですか」

「そうさ、何とねパドゥの研究施設が魔国の外れにあるんだってさ、この子が教えてくれたよ」

「えっドラゴンゾンビとはいえスケルトンですよね、意思が残っているんですか」

「私もこんな子は初めてだけど、この子は生きている時は相当な竜だったのかもね」


 罠の可能性を心配したが、ドラゴンゾンビが降りた森の中には似つかわしくない立派な家があり、その中には何かを研究した形跡や沢山の書物が置いてあった。


 初めて見る魔人の書物なので二人して興奮して中を見るが、その分落ち込むのも仕方の無い事だった。


「何よこれは、何の落書きなんだい」

「魔国の字だと思いますよ」

「分かってるよ、これじゃ解読するのにどれだけ時間がかかるのやら」

「けどかなり貴重ですよね」


 アリアナさんは不満げな顔をしているが、全ての書物を魔法陣の中にしまい込むと今度こそ村に帰るようだ。


 良かった~。このまま魔人の村に行くとか言うのかと思ったよ。


「どうしたんだい。それよりもここを消してくれよ」


 パドゥが他の魔人とどのような付き合いをしているのか知らないが、もし他の魔人がこの家に入って異変に気が付いたら面倒な事になる可能性がある。


「そうですね、自然に帰しますか……腐闇」


 闇が家全体を包み込むと、闇の中で崩壊が始まっている。これで此処には残骸しか残らない。少し強引だけどまさか人間の仕業だとは思わないだろう。


「さぁ帰ろうか、みんなを驚かせてあげよう」

「あのいきなりこれで帰ったら驚くどころか、恐怖でパニックになるんじゃないですか」

「そんな訳ないよ」


 僕達が朝方に村に到着すると、僕の予想通りの展開になってしまった。

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