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第二十話 僕の出番は?

「これで貴様たちはもう終わりだ。もっとゴブリンを使って遊びたかったが、もういい。こいつで二、三の街を滅ぼしたら帰る事にするよ」


 空に現れたのは竜のスケルトンで、その上にパドゥが誇らしげに乗っている。そしてまたしてもブレスを吐くと、もう一体のスケルトンも消えてしまった。


「あ~はっはっは、どうだこのドラゴンゾンビはお前の重力魔法なんか効かないぞ、ほれっどうだ」


 ドラゴンゾンビがブレスを吐く度に巨大なスケルトンが消えて行ってしまう。完全にパドゥはいたぶりながら僕達を殺す事に決めたようだ。


「アリアナさん、スケルトンは復活させないんですか」

「無理ね、あんたの【炎闇】と同じように完全に消滅してしまっているよ」


 残っている二体のスケルトンは木を抜いて投げつけているが、簡単に躱されてしまっている。


「全て消される前に僕が戦います」


 ドラゴンゾンビに立ち向かおうとするが、アリアナさんによって引き倒される。


「勿体ない事するんじゃないよ、あんたはあれがどれほど貴重なのか分からないのかい」

「えっ、そんな事を言っている場合じゃ無いでしょ」


 もしあれが村の物であるのなら良いに決まっているが、あれはパドゥの傀儡であってアリアナさんの傀儡では無い。それにパドゥだけを倒そうにも空の上から攻撃を繰り返しているのでどうしても見えにくい。


「いいからあんたは【煙闇】を出してよ、いいかい変な効果は要らないんだからね、ただ姿を隠せればそれでいいんだ」

「分かりました。行きますよ……煙闇」


 僕が闇を広げている間にとうとうスケルトンは最後の一体になってしまったが、アリアナさんは目を細めて集中している。


「おいおい何だよこれは、これに隠れるつもりなのか、まぁいい最後の一体を仕留めたらこの遊びに付き合ってやるよ」


 僕としてはあのドラゴンゾンビに【炎闇】が通用するのか試したいし、それが駄目だとしても他の手を考えている。僕の闇魔法が魔族にどれほどの効果をもたらすのかいい機会なのだが、勝手にやってしまうとアリアナさんに何をされるのか分かったものじゃない。


 アリアナさんの魔法が完成し、それをゆっくりと飛ばしたとほぼ同時に最後のスケルトンが消滅してしまった。


「お~い、聞こえてるか、これでお前達を守ってくれていたスケルトンは全て消えたぞ、どうだ姿を見せて命乞いでもしたらどうなんだ」

「五月蠅いな、あんたこそそのドラゴンゾンビを私にくれたら助けてあげるけど、どうする」


 僕達は【煙闇】で覆っている場所から脱出していたので、完全にパドゥは僕達を見失っていたが、アリアナさんが叫んでしまったせいで居場所がバレてしまった。


「何でわざわざ叫ぶんですか、黙って倒せば良かったじゃないですか」

「しょうがないだろ、私はどうしてもあれを楽して手に入れたいんだよ。脅してくれたらこんないい事は無いじゃないか」

「そんなんでくれる訳ないでしょ」


 アリアナさんは汗を流しながら先程飛ばした凄く小さな玉をパドゥにゆっくりと近づけている。


「まさかこの中に隠れていなかったとはな、随分と馬鹿にした真似をするんじゃないか、貴様らにはブレスで一瞬では殺さずにこいつでかみ砕いてやるよ」


 自信満々でこっちに来るので僕の【炎闇】が効かないと言う事なのだろうか。その余裕な様子が癪に障る。


「ねぇ最後だけど、本当にいいのかい、あんた死ぬよ」

「強がりもそこまで行くと哀れだな、まぁそれが人間の限界か……んっこれは」


 バシュ


 パドゥが目の前に浮遊してきた小さな玉に触れるとその姿は一瞬にして消えてしまい、ドラゴンゾンビがバラバラになって地上に落ちてきた。

 余りにも呆気ない展開に茫然としていると、アリアナさんが僕の後頭部を興奮しながら何度も叩きだした。


「見た、見たよね、大成功だよ。あんなにゆっくりと動かしたことが無いから結構疲れたけど良かったよ~」


 アリアナさんは珍しく興奮しながらもその場で倒れてしまった。前にあの魔法を見た時はもっと大きくそして山を一つ消してしまったが、その威力をパドゥだけに向けるのはかなりの繊細な魔力操作が必要だったに違いない。


 パドゥは何処に行ってしまったかと言うと、結論的には移動したのではない。アリアナさんが魔力を極限まで濃縮させて作成した【重力玉】に捕まって潰されただけだ。


 アリアナさんはドラゴンゾンビの残骸を集めると、糸に切れた人形の様にその真ん中で眠ってしまっている。


 ここにクルナ村に最強の守り神が生まれた。


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