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第十七話 僕の救出劇

 教会を目指す途中で視界に入るゴブリンは全て【腐闇】で消して行く。村人の家の中では何かが動いている気配があるが、スケルトンに任せて先に進む事にした。


「お待たせしました」


 教会の中にある会堂に飛び込んで行くと、四匹のゴブリンが紙の様に潰れていて、残りの一匹は原型を保ったまま床に張り付いている。


「丁度良かったよ、こいつの服を脱がしてくれ」

「えっ嫌ですよ、僕にはそんな趣味はありません」

「ふざけていい時間なのか分からないのかい」


 かなり本気で睨んでいるので、そのゴブリンの服を破ると、その身体は腐り始めている様だった。


「これはまるでグールのなりかけですね」

「だろうねぇ、全く面倒なことになったよ、いいかい、早くそいつを縛り上げな」


 奥の部屋から縄を見つけ、ゴブリングールと名付けた奴を縛り始める。縄を外す知恵が無いと信じて腰回りと柱とを軽く結びつけた。


「こいつをどうするんですか」

「まぁ後で使うんだよ、それより生存者はどうだったんだい」

「今はスケルトンが護衛をしてくれてます」


 二人で村人の所に行くと、全く問題は無かったのかスケルトンが動いた形跡は無かった。安全なスケルトンだとは頭では分かっていても多少の不安があったようで僕とアリアナさんの姿を見るとどこかほっとしたようだ。


「助けてくれてありがとうございます。それで村は……」

「酷いもんだよ、家畜は全て食い殺されているし、畑も無茶苦茶だ。これを元通りにするにはどれ程の時間がかかるか……」


 薄々は気が付いていたはずの村人ではあったが、アリアナさんに言われて誰もが涙を流し始めた。


「何でゴブリン如きにここまでされてしまったんだ。みんな、もう一度やり直そう」

「止めやしないけど、無理だろうね、あんたらはクルナ村で受け入れるよ」


 かなりいい話だというのに村人はまだ悔しそうな顔をしている。故郷がどこか知らない僕にはその気持ちが分からないのでこんなボロボロの村など捨ててしまえば良いと思うが、決して口にはしないようにした。


 アリアナさんと村人が話している最中に全てのスケルトンが集まって来たので、問題なく任務を完了させたようだ。僕は全てのスケルトンから魔法陣を回収し、それを一つにまとめて村人の一人に手渡した。


「この紙の中には家の中にあった物が入っています。大きな物は入っていませんが許して下さい、それと一枚の紙に一軒の物が入っていますので、向こうで広げて下さい」


 彼等はまだ納得していないのに、勝手にやってしまった事だがその人は僕に微笑んでくれた。


「貴重な魔法陣を使ってくれたんだね、ありがとう、なぁみんな、この先の事は向うで決めようじゃないか」

「この村と私の村が合併すればもっといい村が生まれるはずだよ、それでいいよね」


 誰も反対する者はいなかったので直ぐに村人にはクルナ村に向こうように告げられ、その道中は四体のスケルトンが護衛をしてくれる。


「貴方達は帰らないのですか、もうこの村には何も無いのでは」

「ここはそうだけど、村を襲わせた奴がいる事が分かったからね、そいつを倒さないと安心出来ないのさ」


 僕達を手助けしようと考えた村人もいたが、丁寧に断って見送った後であのゴブリングールの元に戻って行く。


 そいつはやはり知恵が無いらしく、縄をほどこうとせずにただ逃げ出そうとしていた。会堂の中にはスケルトンが待機しているがどのスケルトンもまだ動かないで見ている。


「こいつは何なんですか」

「ネクロマンサーがこいつを操ってるのさ」


 アリアナさんの考えは群れの長だったゴブリンを傀儡としてこの村にいたゴブリンを支配したと考えている。


「そんな事は可能ですか」

「私には無理だね、良くもそんな事が出来るもんだよ」

「そうなるとアリアナさん以上のネクロマンサーなのですか」

「確実にそうだろうね」


 簡単にその事を認めてしまった事にも衝撃を受けたが、そんなネクロマンサーを相手に僕達とたった六体のスケルトンで勝てるのだろうか。


「何を不安な顔ををしているんだい。そんなに心配しなくても平気だよ」


 その言葉を聞いても安心出来ないが、アリアナさんはゴブリングールとそのネクロマンサーの繋がりを探っている。

 僕には全くそれが見えないが、同じネクロマンサーのアリアナさんにはその繋がりのような物がはっきりと見えるそうだ。


「どうですか、見えていますか」

「いまの所はね、何時切られてもおかしくないから直ぐにでも行こうか」

「そうですね……僕達以外にも闇属性の人間がいたんですね、それなのに」


 アリアナさんは僕の肩に手を置いてゆっくりと首を横に振った。


「私達みたいな闇属性を持つ人間はいるだろうがこれは違うよ、この魔力はかなり異質だからね」


 どうやら僕達の向かう先にはネクロマンサーの人間ではなく、ネクロマンサーの魔族がいるとアリアナさんは思っているのだろう。


「それなら倒すしか無いですね」

「そうさ、どうやるかは走りながら考えればいいんだよ」


 もし、本当に魔族で

 もし、話が分かる魔族だとしたら


 僕に魔法を教えてくれないだろうか。



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