第十五話 僕とアリアナさんは向かう
投降三日目が始まります。
僕は持って行く魔法陣を集め、更に足りない分を急いで書いている。その間にアリアナさんは連れて行くスケルトンに武具を装備させている。二時間程すると、何とか書き終えたのでアリアナさんの所へ向かった。
「あの、それは何の準備ですか」
「移動式寝床だよ、向こうに着くころは暗くなってるからね、そのまま戦った方がいいだろ」
寝床をスケルトンに担がせ僕達は寝ながら移動出来るように作られているが、ちょっとこれで寝ている所を見られたらかなり恥ずかしいと思う。
しかし、その思いとは裏腹に僕達の出発を見送る為に村のほぼ全員と、バボラーク村の人達も来たが、僕達とスケルトンの方を見て小声で話しているのが、耳の言い僕には聞こえてきた。
「あの女性と子供で平気なのか、それに魔物だよな……」
確かに心配する理由は分かるけど、動揺しているのか、批判めいた言葉もちらほら聞こえだした。そこにクルナ村の人が静かに話し掛ける。
「あれは魔法で動かしているので魔物とは違いますよ。それにあの二人はこの村の最高戦力と秘密兵器です。それにここに居る全員であの二人に戦いを挑んでも触れる事さえ出来ないでしょうな」
その言葉を聞いたバボラーク村の人達は驚いたように僕達を見てくるがあえて見ないようにした。そんな注目を浴びている中で寝床に乗るのは恥ずかしかったが、そこにラウラとエサイアが寄って来た。
「羨ましいよ。俺もゴブリンをぶっ倒したかったよ」
「だったらあんたが行けば良いじゃない。代わったらどうなの」
「僕が行かないといけないんだよ、それに大丈夫だからさ」
僕は魔獣の討伐ならまだしも人型を討伐するのは少しだけ苦手だ。ただ僕自身がこれが一番いい方法だと思うから行くだけだ。
「本当に無理しちゃ駄目だからね」
「お前な、もうゴブリンには悲惨な死が決まったようなものだぞ」
エサイアには全く悪気は無いのは分かっているが、その正直さが僕を傷付ている事に気が付いていない。
「レーベンもう行くよ、それじゃあ村の事は任せたからね」
十体のスケルトンが一斉に立ち上がり、僕達の寝床担いで歩き始めた。直ぐに歓声が起こるが何だか気恥ずかしく、その歓声に戸惑ってしまう。
直ぐにアリアナさんは布の中に潜り込み眠りに入るようだ。僕もそうしたいが人の目が届かない場所までは我慢する事にした。
見張りもしないで二人とも寝るのはどうかと思うが、スケルトンが先行して見張りをしているのでそんじょそこらの兵士に守られるより、かなり安全だと思う。
坂道を真っすぐに下っている状態なので曲がり角に行くまではどうしても姿が見えてしまう。そこに到着するまではもう少し時間がかるので魔法陣の確認を始めて時間を潰す。
暫くしてから僕も寝床に横たわると簡単に意識を手放してしまった。
「お~い、もうすぐ村に到着するから起きなよ、その前に腹ごなしをしようじゃないか」
眠っていたとはいえ、僕もお腹が減ってしまったのでスケルトンを止め、食事に準備取りかかった。とはいえ簡易なテーブルの上に魔法陣の中に入れて置いた食事を並べただけだ。この魔法陣は僕の専売特許では無いが、この魔法陣を持っているのは貴族でもごく一部しか持てない程の高級な魔法陣だ。
しかし、クルナ村の村民なら誰で持っている。他の村に売ってしまえばかなりのお金が貰えるはずだが、誰もそんな真似はしていなかった。
「あの、食べたらどうしますか」
「そうだね、闇に紛れて偵察に行って来てよ、あんたにはこんないい闇夜はないんだから」
僕は人の影の中に入ったり、闇の中に入ったりすることが出来るが光に触れてしまうとその場所から追い出されてしまう。今日が満月だったら活動範囲は狭くなってしまうが。雲が夜空を覆っている今日のような日は僕にはうってつけだ。
「どの情報を仕入れましょうか」
「生存者とゴブリンのボスの存在だね」
そうなると村十を見て回らなくてはいけないので、これは大変そうだ。
「それではなるべく早く戻ってきますね」
僕は闇の中に入って行く、この感覚は水の中に良く似ているが移動する方法は泳ぐのでは無く、意志の力で進んで行く。
村に近づいて行くと、村の入口にゴブリンが生意気に見張りに立っている。普通のゴブリンならこんな真似はしないのに、やはり此処のゴブリンは何かが違っていようだ。
普通のゴブリンならそれほど長い期間は人間を生かさないと思うが、もしかしたら生かされている人間がいるのかもしれない。
雨が降りませんように




