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第十三話 僕はゴブリンを発見する

 全てのスライムがちゃんと燃え尽きたのか、確認の為に滝つぼに近づいていくと、滝の上が何やら騒がしい。


「リュークさん、リュークさん、滝の上を見て下さい」

「どうした……あっ」


 滝の上から三匹のゴブリンがこっちを覗いている。


「害虫共が。こんな場所にまで出てきやがって」


 リュークさんは弓をゴブリンに向けるが、この下の場所から正確に当てる事は不可能だろう。一方ゴブリンは落ちている石を拾っては、僕達に投げてきたが、有利な上にいるにしては何も僕達に被害を与える事は出来なかった。暫くして諦めたのかゴブリンはその姿を消してしまった。


「あいつらかなり興奮していましたね」

「そうだな、ゴブリンにしては異常な反応だな」


 ゴブリンは仲間が大勢いたら襲ってくるが、三匹程度だと確実に逃げ出してしまう。さっきの奴らは興奮していたせいか大騒ぎをしながら石を投げていた。


「この川の上流には小さな村がありますよね、ゴブリンがこの場所にいたことを伝えて来ましょうか」

「たかがゴブリンだからな、そこまでしなくていいだろ」


 リュークさんは余り気にしないで、村に戻りながら目にした獲物を矢で射抜きながら帰って行く。僕も血抜きなどを手伝ったが、頭の中はあのゴブリンの事が何故か気になって仕方がない。


 距離が離れているから気のせいかも知れないけど、奴らから憎しみのようなものを感じていたからだ。僕の心の中はゴブリンのことで大半を占めてしまっているがりュ-クさんは狩りの成果を見て楽しそうにしている。


「何だか今日は大量に捕れるな。あいつらが幸運を運んでくれたのかも知れないな」

「ゴブリンがですか」

「冗談に決まっているだろ、これを分けてやるからさ、アリアナさんに上手い鳥鍋を作ってやれよ」


 魔法学校にいた時は調理などはした事が無かったが、此処に来た日からはずっとアリアナさんに調理を教わっている。

 それに今では家事全般をアリアナさんに変わって僕一人でこなしている。


 魔法の師匠なのだから仕方ないし、この家もタダで住まわせて貰っているので文句は一切言えない。少しだけ理不尽だと思うが、僕にはその事は言える訳は無い。


 リュークさんと別れると、僕は直ぐに鳥鍋の準備を始めた。二年程前からアリアナさんはこの村の村長になったのでかなり忙しくしている。


「ただいまレーベン、外までその匂いが漂っていたよ、今日は鍋だね」

「えぇ、リュークさんの手伝いで滝に行きました」


 そして、食事をしながら今日の出来事を詳しく話すと、アリアナさんは真剣な顔で聞いてくれる。


「スライムが……滝つぼに……興奮したゴブリン……まさかね」

「どうかしましたか」

「あのさ、川の中にいるスライムって倒しにくいよね」

「そうですね、陸上に比べれば楽勝とは思いませんね」


 かなり真剣な表情で僕を見つめているので、僕にまで緊張が襲って来たようだ。


「この村にはあの川が流れているよね、仮にだよ、もし大量のスライムが流れてきたらどうなると思う」

「僕なら全てを燃やすので影響は無いと思いますが」

「あんたにはそれが出来るけど、私もあんたも留守していたら大変だよね」


 そうだとしたら、怪我人を出しながらでも川に入って討伐をしないと大変な事になってしまうだろう。


「厄介ですけど、それがどうかしましたか」

「まさかとは思うけど、ゴブリンがスライムを育てていて、その理由が下流の村を襲わせる為だったりして」


 僕が想像もしたことがない考えで単なる冗談の様にも聞こえるが、アリアナさんは真面目な顔で僕に尋ねている。


「奴らにそんな知恵がありますかね、ゴブリンの集団が村を襲った事は聞いたことありますけど、スライムを使って村を襲撃しようなどと手間の込んだことをするとは思いませんが」

「だよね~」


 アリアナさんも自分の考えにしてはあまりにも突拍子もない考えだったので豪快に笑い出したが、僕の胸には何かが刺さったような気がする。


 今まではそんな事をするゴブリンは皆無だったが、それは僕やアリアナさんが知らないだけなのかも知れないし、この先そう言ったゴブリンが生まれないとも限らない。


 僕はどうしても気になったので数日おきに滝つぼを確認しに行ったが、スライムやゴブリンの姿を見る事は無かった。


 僕がその事を忘れ始めた頃、僕達の村にバボラーク村の人達が一斉に避難してきた。





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