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第百二十二話 僕とエレナ

 最終話になります。

 バルバナスの原型が全く無くなっても僕はその場から動けずにいた。暫くすると身体から力が抜けていき、膝を付いてしまったがそこは僕の血でかなりの血だまりが出来ていた。


「おいっ大丈夫かよ、生きているのか」


 放心状態の僕は肩を揺すられているのだが全くその言葉に答える気力は無い。すると頭から水を掛けられ、今までボヤッとしていた頭の中が晴れて行くような気がする。


「あれっトビアスじゃないか、どうしてここに」

「どうしてじゃないだろ、お前が心配だったから来たんだろうが、それであの野郎は何処に行ったんだよ」


 胸に何かが突き刺さる様だったが、前にある黒い液体に向け指を差した。


「僕は親友をこんな風に変えてしまったんだ」

「そうかい、悪いが俺にとってはざまぁとしか思えないね、そいつのせいでルートゥは死んだんだからな」

「えっ」


 バルナバスが直接ルートゥを攻撃した訳では無いが、操られたバザロフの魔法がルートゥの身体の中を内部から破壊していたそうだ。

 

「そうな風には見えなかったのに」

「そうだな、気が付いたエレナちゃんも頑張ってくれたがもうどうしようもなかったんだ」


 ◇


 僕達は疲れた体を引きずるようにしながら砦に戻ると、僕達の変わり果てた姿を見た兵士は魔人がいなくなった事に対する喜びの声を上げる事すら忘れ驚愕の表情で僕達を迎え入れた。


「あの……」

「エゴン司令官はいるかな」

「あっはい、司令室おります」


 僕だけが司令室の中に入り、中にいた兵士達も何かを感じてくれ、この部屋の中はエゴンと二人きりになった。


「ご苦労だったな、先ずはこの回復薬を飲んでくれ、そして何があったのか教えてくれ」

「はい……」


 渡された回復薬はいつものように不味いのだが、身体の傷だけではなく魔力すら回復させてくれた。


「凄い薬ですがこんな状況で僕が飲んでもいいんですか、数日休めば魔力は元に戻るんですが」

「いいんだよ、そんな事気にしなくても、どうだ落ち着いたか」


 僕は全てを話し終わると、エゴンはかなり難しい顔になったがただ一言「そうか」とだけ言い、外にいる兵士に行って仲間をこの部屋に呼び寄せた。


 暫くすると疲れた表情のエレナが入って来たが、僕の顔を見ると直ぐに怪訝な表情に変化していった。


「お兄ちゃん……どうしちゃったの」

「えっ何もしてないけど」

 

 その後に入ってきたトビアスもエサイアもエレナと同じような反応をしている。


「何て顔してるんだよ、それよりもう腕は動いているじゃないか」

「そんなのはどうでもいいんだよ」


 それからも三人と僕とで会話が噛み合わなかったが、その原因は僕にあり、何が原因なのか分からないが、ほんの少し離れている時間で僕の身長は伸びていた。その様子を目の前で見ているはずのエゴンが気が付かないのはあまりにも近くにいたせいなのかも知れない。


 闇属性でなくなってしまったのではないかと期待したが、そこまでは上手くいかず、身長が手の大きさ程伸びただけだった。


 少しだけ雰囲気が和んだが、直ぐに重い話に戻り、ルートゥの死の原因は魔族によるものとすることがエゴンの独断で決定された。


 理由は勇者が操れていた事など言える訳もなく、それにパーティの中に裏切り者がいたなどあってはならない事だからだ。


 それにルートゥの名誉の為にもその方が良いのでは無いかと思う。


「もう一度聞くけど、それでいいよね」

「仕方が無いだろ、帝国内が大騒ぎになるしな、ただあの野郎が英雄扱いになるのはむかつくがな」

 

 トビアスが吐き捨てるように言ったが、それ以上は騒ぎ立てる事はしなかった。僕の中ではあれはバルナバスではなくあの男が本当のバルナバスを殺し、その姿を奪ったと思っている。


 僕が子供の頃、ずっとそばにいてくれ、みんなのまとめ役だった彼はあんな薬を自ら飲む訳がない。


 僕とエレナが知っているバルナバスは子供の頃に殺されてしまったのだろう……と信じたい。


 他の戦場でも勇者の仲間に死者は出たが、此処よりは被害は少なくなっている。此処の被害の報告が無ければ皇帝は魔国に攻め入るように指示を出したそうだが、バザロフの死を聞いた皇帝は勇者の代わりに使者を送り、和平交渉をするように指示を出した。



 数年後、勇者は魔国に勝手に入る事は許可されず、魔国との間にちゃんとした城壁が建てられるようになった。共同で揉め事も無く作業を行ったのでそこまで頑丈に作らなくてもいいのではないかと思われたが、その意見は大部分の人間や魔人は聞き入れなかった。

 

 そして僕は勇者の指輪を返上する為に仲間と一緒に皇帝の間にいる。


「…………という訳で僕は引退いたします」

「ふ~ん、それでその指輪は隣の男に渡すと言うのだな」

「何か問題はありますでしょうか」

「獣人族の勇者ねぇ、まぁ初だけどいいんじゃね~か、よしっお前の仲間を集める選抜会を開くぞ」

「有難うございます。ただ仲間の一人は此処にいるエサイアで宜しいでしょうか」

「問題ないぞ」


 この場で選抜会が開かれる事が決定されたが、国内にいる他種族の参加も認められる為。これまで以上の大きな選抜会になりそうな予感があった。


「それでな勇者レーベンよ……今はもうレーベン伯爵か、これからお前はどうするんだ」

「そうですね、村に戻ってのんびりしますよ」


 僕の側にはエレナがいる。あれから僕の身長は更に大きくなり今ではエレナの隣に居ても違和感は無くなった。


 光属性と闇属性なので魔法の相性は最悪だが僕達なら上手くいくだろう。


「さぁ行こうか」

「そうだね、レーベン」



 最後まで読んでくれて有難うございます。


 そして、ブクマやいいねを押してくれた人には本当に感謝します。そのおかげで何とか完結迄辿り着く事が出来ました。


 次は書きためていて来週の月曜日から一気に放出していくのでもし良ければ読んで下さい。


 題名は(仮「ひっそりと生きてきた中年の転生」です。もしかしたら変わるかもしれませんが。

  https://ncode.syosetu.com/n3202hw/ 宜しくお願いします。

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