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第百二十一話 僕は

 バルナバスは僕の魔法を全て切り裂いて無効化し、たまに斬撃を飛ばすだけなので完全に僕をからかっている。


「なぁそれで終わりなのかい。あの闇の斬撃は良い魔法だったのにな」

「良く言うよ、簡単に躱したじゃないか、君の動きを止めてから使わせて貰うさ、それよりそんな攻撃しか出来ないのか」


「あのな、俺は遊んでいるだけなんだぜ、親友を簡単に殺したら勿体ないだろ」

「……滅闇」


 闇をいつも以上に細くして放つと、初めてバルナバスの左胸を貫いた。だがいつものような効果は現れない。


「やるじゃないか、でもこんなものか」


 槍で闇を切り裂くと【滅闇】は消え去り、穴があいたはずの胸も手で押さえるだけでその傷口は消えてしまった。


「その回復力は何だよ、まさか人間を辞めたんじゃないだろうな」

「どうかな、まぁ秘密という事で」


 にやけながら目の前に円を描く様に槍を動かすとそこには光り輝く障壁が姿を現した。


「滅闇」


 針のような闇がバルナバスの額に目掛けて伸びていくが、その障壁に触れただけで霧散してしまう。


「これは無理なのか、なぁ他に隠し玉はあるのかい。ないならもう終わりにしようか」


 バルナバスの魔力が槍を覆い尽くすと、一度後ろに下がりその場所から姿を消した。


「闇玉」


 身体の前で掌を合わせるようにし、その中心に闇の玉を出現させる。


「がぁががっがが」


 苦しそうな声と共に姿を現したバルナバスはその手から槍を放し、苦しみ悶えるように両手の指を折り曲げる。


「何だよ……これは」

「光属性に反応する魔法さ、君はまがい物だから発動するかそれだけが心配だったけどね、残念だけどその闇の玉は壊す事は不可能さ」


 初めにバルナバスが纏っていた光が【闇玉】に吸い込まれて行き、徐々にその身体すら【闇玉】に吸い込まれて行く。


「何で闇属性がここまでの力を……」

「君に分からないように仲間から魔力を使っているからね、いわゆる混成魔法って奴だね」


「お前は闇玉だとか言っていたじゃないか」

「聞こえていたのかよ、そもそも名前なんかどうでもいいだろ」


 僕の懐に入っている魔法陣の中にはエレナ達の魔力が詰められている。バルナバスに分からないように引き出すには予想以上に時間が掛かってしまったので、もし僕をいたぶるつもりが無かったら僕は殺されていただろう。


 バルナバスの左手は既に【闇玉】に飲み込まれてしまっているが、両足を踏ん張ってそれ以上の見込まれないように抵抗している。かなり残酷な光景だが僕が目を逸らしてしまうと【闇玉】が消えてしまうので見続けるしか方法はない。


「もう諦めてくれ、そんな姿のお前を長く見ていたくないんだ。悪いが僕はこの魔法を解除する気は無いからな」


 ここで情けを見せて解除してしまうと、バルナバスは喜んで僕を殺すだろう。正攻法で僕は勝てる訳がないのだからこれで決めるしかない。


「これで終わりだと思うなよ、お前を絶対に殺してやる」


 狂気の表情となっているバルナバスは腰に付けてある袋の中から小瓶を取り出し、蓋を開けないまま口の中に入れてかみ砕いた。


「ぐわぁぁぁぁぁ~」


 いきなり苦しみ出したバルナバスは身体中から血を流し痙攣をしている。先までは胸の周辺まで【闇玉】に吸い込まれてたが、徐々に肩が見え始めた。


「何をしているんだ……」


 ボンッ


 バルナバスの左手も見えるようになったと思ったら、破裂音と共に【闇玉】が消え、周囲には煙が立ち込めている。


「いやぁ流石に焦ったけど何とかなるもんだな、なぁどうだい僕の魔力は」


 バルナバスの魔力を探るとあからさまに上昇しているのが分かる。


「お前、また飲んだのか」

「正解だよ、何があるか分からないから持っておいたけど役に立ったな、死んでも良いと思ったけど俺は余程この薬と相性がいいらしい」


 僕の目の前で恍惚の表情を浮かべているその男はバルナバスに決まっているが、僕にはバルナバスに姿を似せただけの魔人にしか見えなくなってきた。


「馬鹿だよお前は……毒闇」


 僕の闇をみるとバルナバスは馬鹿にしたような表情をして槍を無造作に拾い、切り裂こうとしたがそのまま闇に包み込まれた。いつものように【毒闇】はバルナバスの身体に水疱を浮かべ、喉を掻きむしりながら苦しみ悶え始めた。


「何でだよ、俺の魔力は強くなったはずだぞ、それなのに何でだ。お前はエレナだけではなく俺の命も奪うというのか…………助けてくれ」


「君の魔力は増強したかもしれないけど、属性が変化してしまったじゃないか、副作用は何が起こるか分からないのに……残念だよ。それにね、今だから言うけど【闇玉】は壊そうとするんじゃなくて光属性を纏えば逃れる事が出来たんだぜ、どうあがいても闇属性は光属性には敵わないのだから……僕の知っている君だったらそれに気が付いたかもしれないのにどうしてなんだろうね、せめて最初の一度だけで飲むのを止めていればあの冷静で頭の良かった君でいられたのにな、僕は君ともっと話したかったし一緒に旅もしたかったんだよ、それなのに何でだよ…………」


 僕の声などとっくに聞こえていないだろうが僕は話さずにいられなかった。親友だと思っていた男の身体が崩れていく光景など黙って見ていられない。


 身体が液体となり、最後に顔が溶けていくが僕を見つめる目は恨みなのか懺悔なのかは僕には分からない。それに先程から僕の視界は全てが滲んで見えるのでそれが現実なのかも分からない。





 いよいよ明日で終わりになります。


 最後までお付き合いください。

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