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第十二話 僕がこの村に来てから五年が過ぎた

「お~い、レーベン暇か」

「あっリュークさんお早うございます。そうですね、頼まれた修理は終わりましたので大丈夫ですよ、何かありましたか」


 アリアナさんの指示に従い、僕はこの村に住み始めた当初から身体を鍛えるために大工のような仕事をクルドさんの教わりながらやっているので五年も経った今はそれなりの事が一人でも出来るようになった。


「聞いてくれよ、向こうの谷間にスライムが大量発生していてな、そろそろ退治しないと危険だからさ、ちょっと付き合ってくれよ」

「勿論いいですよ、ちょっと着替えてきますね」


 僕はどんなに身体を鍛えても、そして大工の腕前がどんなに上がっても四年ぐらいは全く魔法が使えなかったが、一年ほど前からようやく使える事が出来た。


 ただし、僕の闇属性の魔法はちょっとクセがあるのが欠点だ。


 急いでしっかりとした服装に着替えて、それに魔法陣を書くための道具も持って行く事にする。


「お待たせしました」

「よし、それじゃ行くか、ただな、この前の魔法だけは止めてくれよ」

「もう、言わないで下さいよ、僕だってあんな事になるなんて思っていなかったですし、あの後、どれほどアリアナさんに怒られたか……もう嫌ですよ」


 あの事はもうあまり思い出したくない。


 リーフボアという四足歩行の魔獣が洞窟の中に巣を作っていたのを発見したので気絶させる為の【失闇】を洞窟の中に流し込むと、一頭のリーフボアが洞窟から飛び出してきた。


 単なる失敗かと思われたが、その個体は身体中に変な水泡が出来て、その水泡が破裂すると身体を溶かしながら死んでしまった。


 魔法は直ぐに解除して洞窟の中を確かめようとしたが、周りにいた人に止められ、直ぐにアリアナさんを呼ぶと僕達の代わりにスケルトンが洞窟の中に入って行った。


 スケルトンの目を通してアリアナさんが確認すると、洞窟の中の全ての生物がさっきの魔獣の様に惨たらしい死体となって転がっているのが見えたらしい。


 更に、魔法を解除したにも関わらず、魔法の効果が残っているようで、何故かスケルトンの骨が完全に溶けてしまい、二度と戻って来る事は無かった。あれから数ヶ月経ちその度にスケルトンで調査するが、未だにその洞窟は立入禁止となったままだ。


【失闇】改め【毒闇】と名称を僕は変えたが、これがちゃんと認められている魔法なのかは魔人に聞かないと分からない。


 その名前を自分で付けてからあの洞窟に何度も魔獣をあの洞窟の中に追い込み、更に【毒闇】で追い打ちをかけて効果を確認していたが、ある日その行動がアリアナさんの耳に入ってしまい。僕は何も思い出したくない程のお仕置きを食らってしまった。


「そういやさぁ、今日も魔法陣で駆除するんだろうけど、レーベンが人に見せられる魔法ってないのか」

「馬鹿にしないで下さいよ、ちゃんと少しはありますって、ただお見せする機会が無いんですよ」

「少しか……魔人に教わる事が出来たらもっと使える魔法がありそうなんだけどな」

「教わりたいですけど、僕は殺されるんじゃないですか」


 アリアナさんに教わった方法は、魔力を身体中に循環させながら瞑想し、徐々にイメージが浮かんできた魔法をひたすら試す方法なので成功率はかなり低い。ちなみに僕はアリアナさんみたいにスケルトンやグールを僕の力で操る事は出来ない。


 それだから魔法の正式な名称は無く、全て僕が命名しているし、頭に浮かんだイメージは魔力の影響なのかそれとも僕の性格のせいなのかさえ分からない。


 それに発動しようとしても全く変化が無い事がしょっちゅうだし、発動しても効果がイメージと違う事がざらにある。あの時みたいに【気絶】が【得体のしれない毒】に変化など何ら珍しい事じゃない。


 闇属性はやはり人間にとって謎過ぎる属性だと思う。


 話しながら息も切らさずに山の中を歩いているので、昔の僕には考えられない位に身体能力は上がったが身長はほとんど伸びていない。


 他にも自慢が出来ない魔法を人前で見せたことがあるが、この村の人達は僕を怖がったりしない。やはりアリアナさんの言う通りに村を暮らしやすくするために魔法陣で奉仕したのが良かったのだろう。僕にとってこの村は最高の居場所になっている。


 暫く道なき道を歩いていくと、ようやくその滝つぼが見え、僕の想像以上のスライムがそこに蠢いていた。


「何ですかあれは」

「よほど栄養価の高いエサが流れてくるんだろうな、この前よりも一気に増えてるぞ。今日来なかったら面倒な事になってしまったかもな」


 川にスライムがいると言うのは珍しい事では無いが、滝つぼを埋め尽くすほどの数が異常すぎる。このままだとこの川の生態系を変えてしまうだろう。


「これなら魔法でやってみますね」

「いいけどさ、毒とか影響が残るのは止めてくれよ、この川は村に流れてるんだからな」

「分かってますよ、まぁ見ててください……炎闇」


 掌から闇の炎が出現しゆらゆらとスライムに向かっていく。


「あれは火でいいんだよな」

「そうですよ、水ぐらいでは消えないですし、ちょっと他の効果もありますが大丈夫でしょう」


 一匹のスライムに【炎闇】が付くと、炎はスライムの形になって、近くのスライムを襲って炎の被害を広げていく。そのスライムの本体が燃え尽きてしまうとスライムと一緒に炎も消えてしまうが、次々と燃え広がって行くので滝つぼの全てのスライムが消えるまで闇の炎は消える事はなかった。


「あのさ、火が付いた奴が自ら他のスライムに飛びついたように見えたんだけど気のせいなのか」

「炎に包まれると、多少ですけど僕の命令に従うんですよ」

「命令って、今は何をしたんだ」

「抱きつけです」


 リュークさんは目を細めて見てくるが、僕だってもう少しましな命令にしたいが、魔獣は単語じゃないと動いてくれない。


 人間ならどうなのだろう………………怖っ。

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