表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/122

第十一話 僕の魔法陣

 僕が目にした事はかなりの衝撃で、あんなものがこの村の兵器だとしたら帝国の警備兵など意味は無いだろう。ただそれは良いのだが、マザーはアリアナさんに何を託したのだろうか。


「あの、この先僕はどうしたら……」


 僕の魔力と属性は判明したが、僕はこれからどうしたらいいのか全く思いつかないので聞くと、アリアナさんは見張り台を片付けながら言ってきた。


「あんたはどうしたいんだ。姉さんからは闇属性を教えてやってくれと頼まれたが、身に着けたいと思うなら手伝うけど」

「はい、僕は魔法が使いたいです。是非とも教えてください。その為なら何でもやります」

「そうかい、それじゃあ何かで働いてもらわないとね、それで何が出来るんだい」


 そう言われても僕が魔法学校で教わったのは教義と剣技と魔法陣しかない。生活に必要な事は殆どがシスターがやってくれたので、はっきり言って僕は普通の子供より使い勝手が悪いと思う。


「そうなると魔法陣ならかなりの数を暗記していますが……そんなのは魔導書があれば意味無いですよね」

「そうだけどさ、あんたのはちゃんと動くのかい」

「書いたものはちゃんと動きますよ」


 僕はずっと一人だけの部屋でそれだけをしていたのだから、綺麗で正確に魔法陣が描ける。だからと言って自慢できる事ではない。


「ちょっといいかい」


 アリアナさんは僕を共同浴場に連れて行き、その隣の小屋に入って行くと魔道具が置いてあったが、その魔道具に彫られている魔法陣はかなり簡素な物だった。


「随分と拙い魔法陣ですね、これだとお湯になる迄に時間が掛かるんじゃないですか、それに水を生み出す魔法陣と暖める魔法陣を別々にするなんて、何時の時代の魔導書を見たんですかね」


 呆れてしまう程に雑な魔法陣だったので思わず文句を言ってしまったが、何故かアリアナさんの目が冷たくなっている。

 まさかと思うけど、これを書いた人って…………。


「悪かったね、そこまで言うなら直して貰おうじゃないか、道具は全てその箱に入ってるよ、いいかい、これがちゃんと直せたら闇属性を教えてあげるが、出来ない様ならどっかいきな」


 完全に怒らせてしまったのか、アリアナさんは直ぐに出て行ってしまった。仕方が無いので道具が入っている箱を開けるとその中には道具が綺麗に並べて置いてあった。


 あの魔法陣なのだから道具も碌な物が無いと思っていたが、どうやらちゃんと手入れをしているようだ。多分、参考した魔導書はこんな田舎だから入って来ないのだろう。あとで謝らないといけない。


 同じように直すなら簡単すぎるのでどうせならと思い、温度調整が出来るようにして、更に水の色も変えられるようにしてみた。これは魔法学校に置いてあった魔導書にも書かれていない僕が編み出した魔法陣だ。


 魔法陣は全ての文字に意味があって、その意味と効果を理解して君合わせれば魔導書が無くても自分の思い描いたように効果を発揮させる魔法陣を書く事が出来る。


 もっと色んな可能性が魔法陣に秘めているが、それは学者が研究する事であって僕が目標としている世界では無い。


 僕独自の魔法陣を彫ったので思った以上に時間が掛かってしまったが、何とか完成したので家に戻ろうとすると、その途中でアリアナさんと出くわした。


「何だい、お腹が減っただろうと思って夕飯を持ってきたのにもう諦めたのかい、やはり魔導書が無いと駄目なんだね」

「そうじゃなくて、もう直し終わりました」

「へっ嘘でしょ、あれは魔導書を見ながら書いても一日で終わるものじゃないよ」


 驚いているアリアナさんを連れて行き、僕が改良した魔法陣を見せ、実際に動かして見せるとアリアナさんの表情が固まってしまっている。


「何なの、何であんたはこんな事が出来るのよ、こんな事が出来るのに闇属性なだけで追い出されたの」

「仕方が無いですよ、魔導書があれば誰でも出来ますからね、これと同じものは載っていないですけど組み合わせれば出来ますから」


「いやいやいや、ほんの少しで文字のバランスや配置が違うだけで作動しないんだよ、この魔法陣を動かすのにどれ程の知識が必要だと思ってるのさ、どうしてこんな事が出来る子が冷遇されるのよ」


 アリアナさんは興奮しながら褒めてくれるが、僕にはその凄さが分からない。それに魔法陣を書く授業は低年齢の時しか教わらず、言うなれば僕が異常だったのだ。一日中隔離されていたのでこれしかやる事が無かっただけだ。


「魔法陣は魔法が碌に使えない者が作るんだと言われていたので……」

「この国の魔法省の連中が魔法陣を馬鹿にするからこうなんだろうね、魔力が弱くても魔法が使える魔法陣をもっと研究すれば便利な世の中になるのに」


 もし本当にそうだとしたら、魔法使いは要らなくなってしまうのだろうか……。


 それにしてもここまで人に褒められたことなど遠い昔の出来事でしかないし、ただ虚しさを紛らわせる為にやって来た事がこんなにも評価されるとは思わなかったので思わず涙が溢れ出て来る。


「ちょっと、どうしたのよ、何で泣いているの」


 アリアナさんな動揺した声と、僕がとうとう声を上げて泣いてしまったので、浴場に入りに来た村人が小屋の中を覗きに来た。


「何してるんだ……大変だ~~~~~」

「ちょっと、何を」


 その男性が大声で叫んだため、色んな人がここに駆け付けることになり、アリアナさんはかなり詰め寄られたが、ようやく涙が止まった僕によってアリアナさん対する批判は治まった。


 アリアナさんにとってはいい迷惑でしか無かったが、この魔法陣のおかげで僕はこの村の人に顔と名前が知られ暖かく迎え入れてくれた。

 

 アリアナさんも多少は思うところもあったと思うけど、僕の弟子入りを許可してくれたのでようやく居場所が出来た。

 投稿開始二日目になります。

今週は書きためた物があるので多めに投稿が出来そうです。


 是非と此処迄読んでくれた方はブクマ登録と評価をお願いします。


 誤字脱字がありましたら教えてください。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ