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第百話 僕達は赤竜を討伐しに行く

 支度をしている間にすっかりと夜になってしまったので、アールシュ様の自宅を警護している守衛の伝言だけ預け、僕達は赤竜討伐に出発する事になった。


 向かいながら役割を決めていくと先ずはビテックが先行して赤竜の居場所を探し、戦闘は僕とトビアスが担当する。ビテックは直ぐに下がりラウラの盾役になって貰う。ラウラは弓で戦いに参加したがっているが、決して何もしない事を強く約束させた。


 僕が魔法で赤竜に攻撃を仕掛け、トビアスが隙を見て攻撃に参加する。スケルトンはサポートをして貰うがその扱いはビテックを予定しているが、もしかしたらラウラになるかも知れない。


「どうやって赤竜の居場所を特定するんだ」

「魔力の痕跡を探ります。赤竜は今まで感じた事の無い魔力でしょうから違和感がある痕跡を辿れば行きつくはずですよ」


 ビテックの言う魔力の痕跡というのは何となく意味は分かるのだが、それを探す方法は僕は知らないし、いつの間にか覚えたビテックに感心してしまう。


「お前も感知能力を鍛えたらどうなんだ。アールシュ様に聞いてごらんよ」

「僕は魔法で分かりますよ、ただ石を投げて届く程度の範囲しか無いですけど、普通に過ごす分には充分なんですよ」

「そんなもんかね」


 感知する闇が劣化したと言う事は僕にとってそれは不必要だと思う事にしている。まぁただの言い訳でしか無いけど。


「少し声を落としてくれますか、この先の茂みの中に盗賊らしき者達が隠れています。あの様子だと討伐に向かっている冒険者の寝こみを襲うつもりなんでしょう」


 ビテックが指を差した方を見るが、僕の目には暗闇しか見えない。


「ねぇねぇ暗闇は得意でしょ、見えるの」

「僕には見えないよ、隠れているんだろうからな」

「ちょっと俺が行ってくるな」


 トビアスは姿を潜める訳では無くそのまま馬に乗って走って行ってしまった。


「なぁビテックには見えているのか」

「見えてはいないですけど何をしているのかは分かりますよ、あっもう始まりました」


 戦っている音も聞こえてこないし、ビテックは慌てていないので僕の出番は無いかと思われたが、ビテックが僕の肩を叩いてきた。


「僕が指を差す方向に魔法を放てますか、少しだけトビアスに楽をさせてあげましょう」

「ああいいぞ」


 ビテックが指を差した方向に【刃闇】を飛ばす。


「良い感じですよ……あぁそれはないな」

「どうしたんだよ、盗賊じゃなかったのか」

「いえ、それは大丈夫なんですけど……」


 それ以上はビテックは答えてくれなかったが、戻ってきたトビアスが苦々しい表情を浮かべている。


「なぁやはりお前がやったんだよな」

「魔法を指示通りに飛ばしましたけど、どうだったかな」

「そうだな、自分の目で見た方がいいかもな、ただお嬢ちゃんは見ちゃ駄目だぞ」

「えっもしかして」


 トビアスに連れられて僕が倒した者を見に行ったが、そこにあったのは細切れになった肉片が散らばっている。トビアスが見たところによると、影のような【刃闇】が盗賊に触れた途端に回転を始め、斬りつけるのではなく身体をえぐるようにして、四方八方に肉片を撒き散らしたのだそうだ。


「まぁいいんだけどよ、見ていて気持ちい魔法じゃ無かったぞ」

「そうですね……」


 惨劇があった場所を避けながら進み、山脈の入口で多少の仮眠をする事になった。闇に潜って眠る事も考えたが、僕以外を潜らせる事も出来なくなってしまったので。普通通りに見張りをするしかない。


 スケルトンも出しつつ、僕とラウラが先に見張りを行っている。


「ねぇあんたはまだあの街にいるんでしょ」

「そうだね、仕事もあるし訓練も終わりが見えないけど、そろそろ考えないとな」


 僕がこの街に来た最初の理由から外れてしまって今ではアールシュ様の後継者になる訓練をしているが、僕には勇者へのあこがれはほぼ失っている。


「勇者になる為に訓練しているんでしょ」

「僕は闇属性なんだよ、そんな僕は勇者にふさわしくないさ」

「だったら何でこの討伐に参加したのよ、お金の為だけじゃないんでしょ」

 

 ラウラの言う通り、僕が討伐に参加したのは知名度を上げる為でもお金の為ででもない。


「赤竜は暴れているんだろ、既にいくつかの村を襲ったそうじゃないか、帝国軍や勇者が倒してくれるなら彼等に任せるけど到着までまだ数日あるそうだからな、アールシュ様だって知名度の為だなんて言っていたけどそんな訳は無いのさ、僕なら出来ると思ったから行けと言ったんだよ」


「え~本当なの、だったらアールシュ様も来るんじゃないの」

「僕達の頭上を飛び越えて街に向かわれたら対処出来ないだろ、アールシュ様は街の護衛をしてくれているんだよ」

「もうアールシュ様はあんたを勇者と認めているかもね」


 アールシュ様はそうかも知れないが、闇属性の僕を教会は決して認めたりはしないだろう。それはどんなにアールシュ様が声を上げても教会側は必ず握りつぶすはずだ。


 わざわざそれを乗り越えてまで勇者になりたいとは思わない。


 初投稿で100まで行きましたのでそろそろ締めに向かって進む予定です。

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