第十話 僕は見た
本日の最後の投稿になります。
見張り台から見える砂煙は僕一人を痛めつけるには多すぎる人数が迫っている事を意味していて、この短剣にそれ程の価値があるのか、それともあの男は大切な仲間だったのかも知れない。
「すみません、僕のせいなんですが、どうしたらいいでしょう」
「謝らなくていいよ、こんなのは大したことないんだからね」
そうは言ってもこの村には帝国の兵士が見当たらない。十人以上はいるあの連中の実力が分からないのにどうしてそんな事が言えるのだろう。
「良かった~どうしても気になったんで今日は終わりにしてきましたよ、お~お~威勢よく来ましたね、さぁあいつらの運命はどうなりますか」
先程の男が見張り台に戻って来て、あの連中が迫っているのを見ても何だか楽しそうにしている。
「使えそうな奴らだったらこの村の為に頑張って貰おうか」
僕には二人の会話がよく分からないが、とうとう怒号と共にその連中が村の前に到着してしまった。
「あんた達そこで止まるんだよ、この村に入るんじゃない」
「おい、そこの威勢の良い姉ちゃん、短剣を持ったガキがこの村に入らなかったか」
「知ってるさ、だがね、あんたらには渡さないよ」
「おいおい、まさかいきなり当たりかよ」
村の入口にいる連中は最初に向かった村で僕がいるとは思わなかったようで興奮し始めている。
「アリアナさん、あいつら馬鹿だけど、どうしましょうか」
「体格がいいから合格だね」
訳の分からない会話をしているが、僕はあいつらに引き渡されてしまうに違いない。
「おい姉ちゃん、俺らは大人しくしてやるからよ、さっさとその小僧と俺達の仲間を連れて来い」
あいつらは僕があの男を消したのは見たが死んだとは思っていないのだろう。あれは魔法か何かで隠していると信じているようだ。
「ねぇあんたらが言うその小僧はここに居るんだけど、顔すら覚えていないなんて馬鹿じゃ無いの」
アリアナさんのその言葉で視線が僕に集まり、僕の身体から恐怖で硬直してしまっている。
「お前か~、おいボクトの奴は何処の隠したんだ」
僕はあの連中から恫喝されていて恐怖で震えているのに隣にいる二人の大人は涼しい顔をしている。
「クルド、あんたやってみるかい」
「えっ良いんですか、仕事を早めに終わらせて良かったですよ」
そう言うと石碑に詰め込まれている魔石に手を翳した。すると直ぐにあの連中を囲むよう地面が蠢き始め、それに呼応したように馬は暴れて乗っている連中を振り落とすと村の中に飛び込んできた。
「お前ら何をしてるんだ、変な事をすると後悔するぞ」
僕もその連中が思っている疑問を持っているが、アリアナさんには答える気が無いらしく、ただクルドの背中を叩いた。
「お~い、生きていたいならさ、もう動いたり騒いだりするなよ、言う事を聞けば助かるかもよ」
クルドの言葉を無視した一人の男が村とは逆方向に逃げようとしたが、地面から出てきた何かによってそのまま地中に引き込まれて行った。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
それによって大部分の男達はパニックになり一斉に逃げ出そうとしてしまうが、その逃げ道を塞ぐように骨しかないスケルトンが彼等を抱きしめては地中に引きずり込んで行った。
しかし、その連中はましなのかも知れない。クルドの言葉を信じたのかそれともただ逃げる事も出来ないだけなのかは判断できないが、その場にとどまった連中には腐った肉を身に纏ったグールと言われる個体に襲われてしまっている。
「ごめ~ん、俺にはグールの操作は上手く出来ないみたいだよ、まぁいいよねどうせ君達は悪党だもんな」
「てめぇ~覚えて……」
連中は何も抵抗できないまま、あっという間に生存者はいなくなってしまった。役目を終えたスケルトンやグールは死体や汚れた地面と共に地中に消えていく。
急に静けさが訪れ、僅か数分前と殆ど代わっていない光景が僕の前に広がっている。
「覚えてと言われてもな~、忘れちゃうに決まっているじゃないか」
「あの一体何なんですか」
「面白いだろ、あの魔石に私が認めた者が触れれば操る事が出来るのさ、ただ、クルドっあんたはもっと練習しな」
「すみません。あっ畑に行かないと」
怒られたクルドは苦しい言い訳をしながら見張り台から降りて何処かに行ってしまった。僕は目の前で起こった事が信じられず大きく口を開けたままだ。
「私はねぇ、ネクロマンサーなんだよ、これが私が授かった闇属性の力さ」
「僕もネクロマンサーなのですか」
「どうだろう、闇属性って人間界では解明できていないからね、魔国に行けば簡単に分かるだろうけど」
そうなると僕は敵だと思っている魔人に魔法を教えて貰わないといけないのだろうか。
初日が終わりましたがどうだったでしょうか。
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