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仔猫と日向ぼっこ〈まとめ版〉  作者: K・t
第2部 夏のおはなし
5/49

夏祭り

 ぼくはナオ。

 とあるマンションで長田おさだ一家に飼われているネコだ。


 小柄な体は、ピンと立った耳からシッポの先まで真っ黒で、瞳は緑。

 ぼくを見た人は大抵、「可愛い仔猫」って笑顔になる。小さいって言われるのはちょっと悔しいけど、事実だから仕方ないね。


 でもぼくは子どもじゃない。別に強がりじゃなくて、本当に何年も何年も生きているんだ。

 それこそ、みんなが生まれるずーっと前からね。


 これはごく普通の家で過ごしている、普通じゃないネコの、ひと夏のお話。


 ◇◇◇


「早くはやく!」


 夕闇が遠ざかり、本格的に夜が訪れる時刻。


 パンパンと空気が弾ける音が遠くの方から聞こえて、来年中学生になる男の子――ショータが家族を急かした。

 ママさんが「あぁほら、動かないの」と言いながら、その腰の帯をきゅっと締める。


「それじゃあナオ、行ってくるよ。部屋は暗くしておくからね」

「にゃ」


 髪を結い、金魚柄の可愛らしい浴衣を着たルカ――こちらは中学二年生の女の子――が声をかけてくるので、ぼくもリビングの窓際から短く返事をした。


 今日は近所の神社で夏祭りが行われる日。さっきの音は始まりの合図だ。

 家族は電気を消してから手に手にうちわを持ち、慌ただしく出かけていった。


 いってらっしゃい。


 お祭りが何なのかは、ネコであるぼくも良く知っている。

 昔に何度も行った田舎のお祭りは面白かったなぁ。


 フワッフワの雲みたいなわたあめ、ソースの匂いが香ばしいたこ焼きに焼きそば、赤い色が鮮やかなリンゴ飴、ひんやり冷たい二段重ねのアイスクリーム。


 他にも、明るい提灯ちょうちんの下にはお面やヨーヨーのお店なんかも並んでいて目移りしてしまう。


 ここのお祭りは人出ひとでがとても多くて危ないからと連れていっては貰えないけれど、その代わりに家族はいつもお土産を買ってきてくれる。


 最近はポテトやクレープを売る屋台も珍しくないし、電球型のジュースなんてものも流行っているみたいでビックリだ。

 今回はなんだろう? とっても楽しみだな。


 そのうち、どーんどーんと大きな音がして、河原の方が明るくなった。

 ――花火だ!


 ぼくは窓際の特等席から、ガラスの向こうに咲く赤や青や黄色の華を眺めた。

 全身を揺さぶるような大きな音は苦手でも、夏だけに見られるキレイな色は大好きなのだ。


 ちょっと窮屈きゅうくつなマンション暮らしの、大きなメリットの一つかもね?


 ◇◇◇


「ただいまぁ」

「ナオーどこー? 面白いものがあったよ」

「にゃあ」


 そのうちに、お祭りを満喫まんきつして帰ってきた家族が電気をつけながらぼくを呼び、「見てみて、こんなの売ってたよ!」と見せてくれたのは、なんと真ん丸なピザのマルゲリータだった。


 今年の夏祭りの思い出はこれで決まりだね。

後書きには人物紹介を入れていきます。まずは主人公から。


ナオ:?歳

外見は黒い仔猫。その正体は長い年月を生きる化けネコ。

昔、長田おさだ家の先祖に助けられて以来、居心地が良くてそのまま一緒に暮らすことにした。

現在はタカヤ一家の住むマンションで飼われている。好物は煮干し。

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