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仔猫と日向ぼっこ〈まとめ版〉  作者: K・t
最終部 春のおはなし
30/49

知りたいな

 白い子ネコのユキが家族に加わって、ぼくたちの生活は少しだけ変わった。


 まず、リビングには寝床用のネコちぐらが増えた。ついでにぼくのも新しく買い替えてくれて、それぞれ大きく口をあけたネコの顔の形と色をしている。

 並べて置いてあると、ネコ型のアパートを建てたみたいで面白いな。


「チュンチュン(おはよう)」

「ニャア(おはよう)」


 それから、毎朝ベランダに数羽のスズメが来るようになった。

 ぼくは人間とのんびりお茶を楽しむのが好きだけど、ユキはそれ以上に動物たちと触れ合うのが好きだ。


 出かけようとするママさんに、仲良しのスズメから聞いた天気の情報を伝えたこともある。


「ニャーン」

「え、カサ? 今日は一日晴れの予報だったけど……」


 けれど、ママさんはすぐに「分かった」と納得してくれて、帰り際に折り畳みカサは大活躍した。春の天気は変わりやすいもんね。

 それ以来、長田家は小さなお客さんにお米とキレイなお水をふるまっている。


 他にも、犬でもウサギでも鳥でも、ユキはすれ違えば挨拶と情報交換をする。

 そのうちにぼくも時々混ぜてもらうようになり、世界が広がった。何年生きていても新しい発見ってあるんだね。



 ユキは長田家のみんなともうまく付き合っている。


「ユキー、おいで~」

「ニャア」


 ぼくは気が向いた時にしか撫でてもらいに行ったり、オモチャで遊んだりしないけど、ユキはもっと積極的だ。

 呼ばれるとスッと動くし、ネコにしてはかなり根気強い。


 おフロはちょっと苦手みたいだけどね。あぁ、今日もあっさり連れていかれちゃった。


 そして何もない時は大抵ぼくの隣に寄り添っている。

 特別、何かを話すわけじゃない。毛繕いをし合ったり、窓際でお日さまの光を浴びながらピッタリくっ付いているだけで、すごく心地良いんだ。


 ◇◇◇


「ナオ、字を教えて?」


 一緒に暮らすようになって少し経った頃、ユキは突然言ってきた。

 確かにユキはさといネコだけど、人間の文字まではさすがに分からない。

 でも、ネコならごくごく当たり前のことだよね、どうして?


「ナオと同じものを同じように見たいから。字が読めれば、近付けるよね?」


 理由が思い付かずに問いかけると、ユキはこう応えた。

 そうしてリビングのあの平仮名表をくわえてきて、ぼくの前にポンと置く。その澄んだ青い瞳は「ねぇ、良いでしょ?」と訴えてくる。


 ……あぁ、そっか。同じなんだ。

 ぼくが動物と話す輪に入れてもらってユキの世界を知ったように、ユキもぼくの世界を知りたいんだ。


「だめ?」

「ううん。じゃあ毎日、少しずつね」

「うん」


 だって、ぼくたちは家族なんだものね。

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