《閑話3》受験生の息抜き
長田家の長女・ルカのおはなしです。
私は流華。
長田家の長女で、この春とうとう受験生になってしまった。
高校に進学してもチアリーディングを続けたいから、それが出来る学校に入りたいと思っている。
春の終わり頃からは各校がオープンスクールを実施するし、パンフレットやHPで軽く事前チェックもしておかないとな。
え、勉強? 嫌いじゃないけど得意でもない……。
少しずつ頑張ってはいるよ。でも挫けそうになったらナオに助けて貰おうっと、あはは。
その日、我が家はおじいちゃんたちに「リンを預かって欲しい」と頼まれた。ペットを連れていけない場所へお出かけしなきゃいけないらしい。
まだ子ネコのリンを長時間ひとりぼっちにしておくのは心配だし、可哀想だもんね。
「じゃあ私が面倒見るよ!」
ちょうど休日だったから、私がその役目を買って出た。ナオとユキにはお揃いの首輪を、ヤンチャなリンには更にリードを付けて、近くの公園を目指してさぁ出発!
外に出ると、あちこちの家が大きな鯉のぼりを空に泳がせている。
視線を飛ばせば、遥か向こうに見える山も冬に一度落とした葉を青々と茂らせていた。
「もうそんな時期なんだ」
ついこの間、家族や友だちと「明けましておめでとう」と言い合っていた気がするのに、季節の変化ってあっという間だな。
「みゃあ?」
「にゃあにゃ」
「ニャーン」
ブチもようのお尻とシッポをふりふりさせて歩きながら、リンはしきりに上を気にする。もしかして鯉のぼりが珍しい? ナオたちは教えているのかな。
子どもの居ないおじいちゃん家にはないし、ウチもマンションだから大きいのは立てられないもんね。
みんなで仲良く暮らせる今に不満はないけど、私だって3月に立派なお雛様をテレビや街角、友だちの家とかで見かけるとちょっとだけ羨ましくなる。
……まぁ、このネコたちと一緒にいられる方が、ゼッタイに幸せだけど!
公園は家族連れやペット連れで賑わっていた。
ブランコでは小さな子たちが楽しそうに遊んでいるし、砂場やジャングルジムも同じだ。
少し開けた空間には犬とボールで戯れている大人がいて、のんびり散歩をする親子の姿も見える。
私はベンチに座って、足の下でじゃれ合う三匹を見ていた。可愛いネコ団子だね。
「みゃあっ!」
「リン、痛いよ~」
リンが元気を持て余して私の足を引っかくと、ナオとユキが低い声で鳴いてから抑え込む。きっとネコ社会のルールを教えているんだろう。
なんだか小さな両親と大きな子どもみたい。
そんな風に微笑ましく感じていたら、他のネコたちが三匹に寄ってきて挨拶を始めた。しかも、どんどん、どんどん集まってくる。
さすがナオ、人望……じゃなくて、ネコ望が凄いね。
でもこれ、とても目立ってるんだけど、どうしようかな……?




