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こちら生徒会 対魔特別班  作者: 龍乃 響
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第9話

 先生が亮の治療を終えると、次は御堂さんの治療を始めた。

 それを見ていた俺は、突如力が抜け床に倒れ込む。体中を激痛が走り、身動きが取れない。

「どうした桐原君!?」

 何事かと驚く会長。俺は何とか口を開き、答えた。

「し…身体強化が、切れて…身体が…」

 注意はされていたが、まさかこれ程とは。魔物との戦闘中に切れなくて良かったと言うべきか。

「…先生、最後に彼の治療も」

「了解よ。ちょっと待ってね」

 そう言うと先生が俺に手を翳す。淡い光に暖かさを感じる。徐々に身体の痛みが引いていった。

「…ふう、これで大丈夫な筈よ。どうかしら?」

 俺は立ち上がり、身体を動かしてみる。怠さはあるが痛みは完全に引いていた。頬の傷も消えているようだ。

「大丈夫です。有難う御座います」

「お礼は良いわ、これが仕事だから。だけど何度も大怪我しないでね。私は魔力量が少ないから」

「さて…有難う先生。それで二人は、少し休んだら私の所に来てくれ。経緯が聞きたいのでな」

 そう言うと会長は保健室を後にした。

「じゃあ私も職員会議があるから。彼は寝かせたままで構わないわ」

 先生も席を立ち、俺達三人が保健室に残された。

 亮は心地良く寝息を立てている。このまま放っておいて問題無いだろう。

「…あの」

 すると御堂さんが控えめに話し掛けて来た。

「…助けてくれて、有難う」

 普段の態度から礼を言われるとは思っていなかったので、俺は少々狼狽する。

 取り敢えず、俺は思った事を口にした。

「…俺も二人を助けられて良かったよ。俺の力が役に立って、正直嬉しいんだ。何か置いて行かれている気分だったし」

「…何よ、それ」

 彼女はいつもの感じでそう呟くが、その直後に少しだけ微笑んだ。初めて見る笑顔に俺の心臓が跳ねる。

 彼女も会長に負けず美人なのだ、普段の態度が無ければさぞモテるだろう。逆に「あの態度が良い」という層も居そうだけど。

「じゃ、じゃあそろそろ会長の所に行こうか?」

「そうね。行きましょう」

 そう言い、亮はそのままに生徒会室へと向かった。


 会長を前に、先ずは御堂さんが経緯を話し始めた。

 上層を二人で進んでいた所、例の魔物に出くわしたそうだ。大型だったが上層なので倒せると判断したが、予想外の強さに後退を開始。だがその途中で亮が攻撃を受けて気絶。彼女もその直後に攻撃を受け転倒、追撃を受ける所だった。

 其処から先、俺が割り込んでからの事は俺が話した。そして倒した証拠として、拾った魔石を机の上に置いた。

 会長はそれを手に取り、呟く。

「この魔石の大きさと魔物の外見…やはり中層の『マネキン』だろう。中層から上がって来たようだな」

「上がって来るって、良くあるんですか?」

「いや、滅多に無い。だか今回はタイミングが悪かったな。中層は主に矢吹姉弟が担当しているのだが、春休みに二人は帰郷していたのだ。なので中層の魔物が増えてしまったのだろう」

 そういう事情なら仕方ないだろう。むしろ早めにその事を知れて良かったとも言える。

「さて…御堂君、君は今日はこれで帰るように。ついでで悪いが龍ヶ崎君の鞄を届けてくれ。彼が起きていたら、同様に帰るよう伝えておいてくれ」

「…判りました。お先に失礼します」

 そう言い御堂さんが隣の準備室へ向かう。

「桐原君、率直に聞こう。再度『マネキン』と遭遇したら、倒せるか?」

 どういう意図の質問なのだろうか。だが正直に答えた方が良さそうだ。

「…他の攻撃手段を持っていないのなら、同じ戦い方で倒せると思います」

「…そうか。魔石は君の物として預からせて貰う。月末締めの翌月上旬払いだから、楽しみにしていてくれ」

「判りました。お願いします」

 俺はそう告げると席を立ち、鞄を取りに準備室に向かった。

 そして準備室を出る時、隣から会長の声が微かに聞こえた。

「まさか…ここまでとはな」


 保健室に着くと、まだ寝ている亮の隣には鞄が置いてあった。御堂さんはそのまま帰ったのだろう。

 見ると鞄の下にメモ書きが挟んである。彼女が書置きしたのだろう、流暢な字で書かれていた。

 俺は楽観的に眠る亮を眺めながら、今日の出来事を思い起こす。

 やはり命の危険は確実にあるようだ。今日はそれを実感した。そもそも俺の初戦闘が中層の魔物だったとは、笑い話にもならない。

 俺は大丈夫だったが、二人は今回の出来事がトラウマにならないだろうか。いきなり辞めると言い出しても不思議ではない。

 御堂さんとは兎も角、亮とは大分仲良くなったので辞めて欲しくないのだが。其処は本人の判断に委ねるしか無いだろう。

 俺は鞄を持ち、未だ眠る亮を後に保健室を出る。

 先ずは明後日の唯姉による認定判断だ。明日も訓練をして、何とかCランクに認定して貰おう。


 俺は普段より陽の高い中、帰路についた。

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