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こちら生徒会 対魔特別班  作者: 龍乃 響
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第45話

 週が明けた月曜の放課後。先週と同様に俺達は、最下層へと続く壁の前に集まっていた。

 久遠寺先輩とエリスが武器を構える中、俺は会長に話し掛けた。

「すいません、俺は魔法の訓練をしたいのですが」

「…それは、週末の件と関係があるのか?」

「そうです。ちゃんと使えるようになれば、殲滅効率は早まる筈です」

 会長は逡巡すると、口を開いた。

「…良し、なら桐原君は訓練をするように。詳細はその後にでも聞かせて貰おう」

「有難う御座います」

 俺はそう答え、早速スマホを手に取り画像を開く。先ずは初級魔法が使えるようになる事だ。

 体内の魔力を意識し、それを身体全体にまで広げる。身体強化は大分スムーズに行えるようになった。

 俺は杖を構え、画像を見ながら魔法陣を描く。丸、六芒星、そして魔法文字。

 魔法陣が形になったら、魔力を流して魔法を唱える。

氷結風フリーズ・ウィンド!」

 だが魔法陣が一瞬光ったかと思うと、魔法は発動せずに消え去ってしまった。

 形が歪だったか、それとも魔法文字を間違えたか。兎に角失敗したのは確かだ。

 俺は気を取り直し、再度魔法陣を描く所から始める。

 そんな事をずっと繰り返し続けて、何十度目かの魔法を唱えた。

氷結風フリーズ・ウィンド!」

 魔法陣が輝き、其処から猛烈な吹雪が前方へと吹き荒れた。

 それは魔物達の体表を凍らせ、その動きを鈍らせた。

「…成功した」

 俺は思わず呟いていた。初めての経験に高揚する。

 其処へ会長が話し掛けて来た。

「上手くいったようだな。今のは?」

「水の属性魔法、その初級です。威力はそれ程ではありませんが…やっと成功しました」

「成程な、新たな魔法か。初級より上は、どの程度の威力なんだ?」

「中級なら数撃、上級なら確実に一撃で此処の魔物を倒せる筈です。…未だ使えませんが」

「それは期待出来るな。良し、では訓練を続けてくれ。二人は魔物の殲滅を継続するように」

 一つの成功体験が良い経験になったのか、その後は時間は掛かるが魔法は確実に発動するようになった。後は画像を見ずに、より早く発動させる事を目指す訓練になる。中級以上に手を出すのは、その後だ。

 そうしてその日の終わり頃には、数秒で初級魔法を発動させる事が出来るようになった。


 そして翌日。本来は訓練日だが、最下層への対応が急務という事で壁の前に同様に集まっていた。新たな扉はもうじき完成しそうだ。

 俺は最初に初級魔法を使い、確実に発動する事を確認する。

 そしてもう一つの初級魔法、氷結矢フリーズ・アローの訓練を始める。

 感覚としては独自魔法の「槍よ、貫け」と似ている。照準も視線に依るようだ。昨日と同様に繰り返し、画像を見ずに確実に発動させる事を目指す。

 なお現状の悩みどころとしては、二人の矢の確保だ。普段は使った矢を回収するのだが、壁の向こうなので回収出来ない。なので沢山の矢を準備する事になった。

 エリスの魔力銃なら矢は不要だが、最下層の魔物相手には威力不足だ。なのでボウガンを使わざるを得ない。

 結果、どんどん矢が消費されていく。然程高価な物では無いが、流石に大量に使うと費用が嵩む。だが会長は気にするな、と言っていた。

 理由を聞くと、

「この扉の方が、よっぽど費用が掛かっている。予算は余裕を見ていたからな、今のペースで消費しても予算内だ」

 との事だった。ならば俺達が気にする事は無いのだろう。殲滅後の矢と魔石の回収が大変そうだが。

 その週はずっとこの調子で、二人は殲滅、俺は属性魔法の訓練を続けた。

 なお会長を除く他のメンバーは、他の層を攻略している。

 俺は訓練の結果、順調に中級魔法も扱えるようになって行った。

 そして金曜日。

水刃螺旋陣カッター・スパイラル!」

 水で出来た複数の刃が魔物に襲い掛かった。初めて上級魔法が発動したのだ。

 魔法はそのまま複数の魔物を切り刻み、塵へと変える。

 その直後、俺は眩暈に襲われる。視界が回り、思わず膝を付く。

「む…、もしかして魔力切れか?」

「…そうみたいです」

 どうやら属性魔法は、発動失敗しても魔力を消費するようだ。数えてないので正確な所は判らないが、俺は上級魔法を数十回使うと魔力切れになるらしい。

 だがこれで、殲滅に貢献する事が出来る筈だ。今日はもう魔力切れで役に立たないが。

 こんな状況なので、身体強化の魔力も切る。完全に魔力が切れると気絶するらしいし。

 仕方ないので俺は床に座り、二人の頑張りを見守る。エリスも筋力が増したのか、矢の装填がかなり速くなった。それでも久遠寺先輩の速さには負けるが。

 そうして今日の殲滅作業も終わり、丁度扉も完成した。後は壁向こうの魔物を全滅させ、壁を完全に取り払うだけだ。

 その頃には少しは魔力が回復したらしく、眩暈は無くなっていた。

 其処で会長が俺に話し掛ける。

「これである程度見通しが立ったからな、私は生徒会の方に専念させて貰う。来週は桐原君主導で殲滅作業をしてくれ。殲滅が完了したら私への報告を頼む」

「判りました」


 俺はそう答え、異界を後にした。

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