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こちら生徒会 対魔特別班  作者: 龍乃 響
22/58

第22話

 俺は矢吹先輩の弟さんからテスト用紙を預かると、早速生徒会室で一通りコピーした。

 そして今度は答案用紙を更にコピーし、回答欄を消したものを作成する。これで準備は整った。

 俺は準備室に戻り、先ずは二教科分の問題と解答用紙を机に置く。

「俺達が戻って来るまでに、亮はこれを解いていてくれ。現状の実力を見たいから、教科書とかは見ずにやってみて欲しい」

「…はぁ、判ったよ…」

 亮は気落ちした表情で頷いた。本当に勉強が嫌なようだ。だが甘やかす訳には行かない。

「じゃあ行って来るから」

 俺はそう告げ、御堂さんと一緒に異界に入る。

「亮が欠けた状態だけど、中層でも大丈夫?」

 俺は御堂さんに魔法を掛けながら尋ねた。

「問題無いわ。普段よりもリーダーにとって、良い訓練になるんじゃない?」

「そうだね。じゃあ半々ぐらいで倒して行こうか」

 俺はそう返し、先へと進んで行く。

 其処からは宣言通り、互いが交互に魔物を倒して行った。普段は二人に任せているが、御堂さん単独でも充分に戦えていた。

 やはり武器のリーチの分間合いが取れるので、安心して見ていられる。本人の実力もあり、改めて亮との差を感じた。

 俺は可能な限り魔物を拘束せず、動く相手に魔法を放った。放ってしまえば魔物は簡単には回避出来ず、狙いさえしっかりしていれば問題無く倒せた。

 すると御堂さんから提案があった。

「接近戦で戦ってみてはどう?私個人としても実力を見てみたいわ」

 そう言われ、俺もその気になる。確かに興味深かった。

 念のため身体強化と魔法の鎧の魔法を掛け直し、杖を背負ってショートソードを抜いた。

 そして通路を進み、遭遇した狼型の魔物と相対する。

 流石に経験が少ないので緊張するが、魔物の動きは充分追える筈だ。

 俺は魔物と同時に間合いを詰める。そして魔物の前足による攻撃を左に避け、そのまま勢いを殺さずに斬り上げる。

 切っ先は胴を見事に両断し、その身体が塵になった。肉を断つ感触が右手に残る。

「お見事。充分戦えるみたいね」

「魔法の補助があってこそだけどね。…と言うか俺がこの距離で戦う状況って、かなり敗色濃厚じゃないか?」

「それも含めての訓練よ。ぶっつけ本番よりは、経験有りの方が動けるわ」

「それもそうか。じゃあ次は魔法での接近戦をしてみるか」

 俺はそう告げ、再度杖を持つ。

 その後は、魔法の盾で攻撃を防ぎながら戦ってみた。盾も一撃では壊されなくなったので、落ち着いて隙を狙う事が出来た。結果としては、この戦い方の方が向いていそうだ。ショートソードを使うのは、魔力切れの時位だろうか。

 そうして二人で魔物を倒して行った。普段よりペースは落ちたが、かなり効率的に進められたと思う。

 そろそろ時間なので準備室に戻ると、亮が机に突っ伏していた。一先ず会長の所へ行き、魔石を提出する。

「ああ、お疲れ。…そうだ、先月分の魔石代が出たぞ。君から二人にも配っておいてくれ」

 そう言われ、封筒を三つ預かる。俺は飛び跳ねそうになるのを抑え、冷静さを装って受け取った。

 そうして準備室に戻り、先ず御堂さんに封筒を渡す。

「先月の魔石代だって。これが御堂さんの分」

「あら、有難う。…結構な金額になるのね」

 封筒に金額も記載されているので、それを見て驚いているようだ。

 次に亮に近付き、机に封筒を置く。

「これは亮の分。…調子はどう?」

 そう言いつつ解答用紙を覗くと、その殆どが空欄だった。

 亮は顔を上げると、呻くような声で言った。

「…幾ら悩んでも何も出て来ねぇ。俺にとっちゃ拷問だぜ…」

「…ご愁傷様」

 俺はそう返しながら、埋まっている解答の正否を確認して行く。

 その結果は、全問不正解。最早清々しい結果だった。

「じゃあ亮、家に帰ったら教科書を見ながら回答を埋めてみて。これも勉強の一環だよ」

「…判った。じゃあもう帰って良いか?早く手を付けないと、終わる気がしねぇ…」

「良いよ、じゃあお疲れ様。下ばかり向いてて事故らないようにね」

 俺がそう告げると、亮はとぼとぼと帰って行った。

「…どうだったの?」

「全問不正解。残りの教科は実力を見なくても良いかな。初めから、教科書を見ながらやらせようと思う」

「その方が良さそうね。それでも間違えるようなら、アドバイスすれば良いと思うわ」

 そうして今後の方針も決まったので、俺達も帰る事にする。

 今日の帰りは無言では無く、終始勉強に関する話をした。その流れで御堂さんにもコピーした問題と解答用紙を渡す。教科によっては同じ問題を出す可能性もあるので、役に立つ筈だ。

 そして途中で、手を振りながら御堂さんと別れる。

 俺は其処から道を逸れ、本屋へと向かった。あの時御堂さんが読んでいた小説を買う為だ。

 俺の受け取った金額は、二人よりも多かった。今月の食費に頭を悩ませる心配も無い。

 ついでに買い控えていた漫画や小説も購入し、家に帰った。


 そして結局、御堂さんお勧めの小説を一晩掛けて読み耽ってしまった。

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