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こちら生徒会 対魔特別班  作者: 龍乃 響
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第12話

 さて、明後日の放課後。俺の前には矢吹姉弟が立っている。今日は一緒に中層を攻略するのだ。

 俺は自分から自己紹介をしていなかった事を思い出した。

「えっと、一年の桐原 茅人です。今日は宜しくお願いします」

「よろしくねー!初めてなんだから、緊張せずに行こうね!」

「…宜しく」

 相変わらずの正反対ぶりだ。あまりのテンションの差に困惑する。

「じゃあ早速行こっか。魔法使いの人と潜るのは初めてだよー!」

 お姉さんの方は嬉しそうに歩を進める。その後ろを無言で弟さんが続く。

 上層の途中にある階段を降り、中層へ。見た感じの変化は見られない。

 通路を進んで行くと、あのマネキンが普通に居た。

「あれを倒したって聞いたんだけど、折角だから私達にも見せて貰えるかな?」

「…うん。実力を判断、したい」

 そう言い、二人が横に避ける。あの時は苦戦したのだが、新しい魔法も覚えたので大丈夫だろう。

 俺は早速杖を向け、魔法を唱える。

「鎖よ、縛れ」

 魔法の鎖が身体を地面に縛り付ける。これであの危険な攻撃も受けないだろう。

 そして俺はマネキンの頭部に杖を向ける。

「槍よ、貫け」

 俺の放った魔法は、魔物の頭部と胴体を完全に砕いた。その身体は消え去り、魔石だけが残った。

「…こんな感じですけど、どうですか?」

「凄いね魔法って。硬くて面倒なあいつを一撃なんだぁ」

「…攻撃力は既に僕達より上、狙いも的確」

「これは心強いね!じゃあどんどん進んでこう!」

「…油断しないで」

 二人からはそんな評価を受けた。どうやら戦力として認められたようだ。

 それにしても、二年のリーダーは弟さんの方だと聞いた。突貫気味なお姉さんと比べて冷静だからだろうか。

 そのまま後を付いて行くと、今度は赤毛の大きな猪と遭遇した。

「じゃあ今度は、先輩の実力を見せるね!」

 そう言うなり、一瞬で魔物との間合いを詰める。そして身体を回転させながら両手の曲剣を繰り出した。

 彼女が横を通り過ぎるまでの僅かの間で、魔物は細かく切り刻まれた。肉片は塵となり、床に落ちる前に消え失せる。

 …常人を逸した動きだった。俺自身が全力で身体強化を使っても、あの速さには到達出来ないだろう。

「…何ですか、今の動き?」

「あれ聞いてない?魔物を倒すと成長するって話。一年も続けてれば、これ位にはなれるよ!」

 成長の効果は僅かだと聞いていたが。流石に一年費やすと人外になるのか。

 続いて現れたのは、岩を身体に纏ったアルマジロのような魔物だった。

 今度は弟さんが倒すらしい。無言で槍を構える。

 お姉さんと同様の速さで間合いを詰めると、床を砕く程の踏み込みと共に槍を一閃。魔物の身体の中心を貫いた。

 見た目に似合わない凄さに、俺は言葉を失った。

 中層を単独攻略出来るのならAランクだ。俺のBランクとは1つしか差が無い。だがその1つの差が、とても大きい物に感じた。

 その後も初見の魔物は二人が対処し、二度目以降は俺にも倒す機会をくれた。

 其処で実感したのは、俺の攻撃方法が単純だという事だ。

 基本的に魔法の鎖で動きを阻害し、針か槍で止めを刺す。このパターンのみだ。二人のような多彩な戦い方は出来ない。

 俺は自信を無くして行ったが、二人は逆に一撃で魔物を倒せる事を誉めてくれた。

 役割が違うと言えばそれまでだが、流石に実力差が隔絶している。

 結局最終的に魔物を倒した数は同じ位だったが、俺は自信喪失していた。

 どうすれば彼らのように多様な戦い方が出来るのだろう。俺はそんな事を考えながら帰路についた。



「それで、桐原君はどうだった?」

 会長は二年の二人に対し、そう問いを発した。

「凄かったよ!一年なのに魔物を全部一撃で倒すんだもん!」

「…彼は僕達との動きや戦い方の差を気にしていたけど、其処は時間が勝手に解決します。彼は自分自身の実力を過少評価しています」

 二人の答えを聞き、会長は溜息をついた。

「…君達と一緒に潜らせるのは、早過ぎたか?」

「…遅かれ早かれ、です。結果は然程変わりません」

 会長の問いに弟はそう答え、更に続けた。

「…戦い方が単調なのは、戦術がもう完成しているから。恐らくだけど、あれなら下層でも充分戦力になります」

「そうだね、前衛との相性はバッチリだし。魔法使いが希少なのも頷けるよ」

 姉も弟の言葉に続く。

 会長は二人の言葉に思考を巡らせ、呟いた。


「自信を持たせてやる必要がある、か…」

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