王位を継ぐもの
リアムの創るNEW人類の名前はアーリアと名付けられた。
《王位を継ぐ者》と言う意味だ。
サラの名前の《女王》という意味からとったその名前は、彼女が前々から考えていた子供の名前だそうだ。
「咲良、今回はNEW人類の研究に加えて貰ってありがとう。」
こぼれんばかりの笑みでノエルが喜びを語る。
「僕じゃない。
僕はこの研究を見守るだけだ。
今回の人選はリアムだよ。」
「咲良だったら私を選ばなかった?」
彼女は首を傾げ、上目遣いで僕を見る。
「そうだね。」
「なによー!
私が何したって言うのよ!!」
「何もしてないよ。
君のスペックはこの研究に何ら問題はない。」
「またNEW人類への愛がないとかわけわからないこと言うの?」
彼女は、大声で怒鳴る。
皆の視線が一気に彼女に集まった。
「そうだよ。
サラを見たかい?
子供が欲しいと望み、それがNEW人類だろうがまだ創世が始まる前から本当の自分の子が誕生するかのように喜んでいるんだ。
これでもまだ君はNEW人類のことをお人形だなんて言うのかい?」
「そうよ!!」
彼女は不貞腐れ、文句を言いながら研究室を出て行った。
残されたチームメンバーはサラの細胞を採取し、分析へと回す。
そして、どのように遺伝子を配列するかサラの希望通りになるようにとモデルを作る。
「さーちゃん、ノエルさん追い掛けた方がいいんじゃないの?
研究には輪が大事だよ。」
「はぁ…。
そうだね。」
僕は溜息を吐き、渋々ノエルを探しに行く。
学食に購買に中庭。
ノエルは何処にも居ない。
スマホでノエルに電話をするが、出ない。
ー一体、何処に行ったんだよ?ー
1時間ほど駆けずり回り、またスマホでノエルに電話を掛ける。
「もしもし。」
「やっと出てくれた。
今、何処にいるの?」
「何処にも居ない。
私なんて何処にも居ない。
私は、独りぼっち。」
彼女は泣いていた。
「兎に角、すぐそこに行くから。」
「嫌よ!
来ないで!!」
「それじゃあ、そこからなにが見えるかだけも教えて。」
「それくらいならいいわよ。
夕日が見える。
そして、夕日が当たる木が見える。」
「それから?」
「外の自販機に公園が見える。」
「それから?」
「ベンチに、校舎。」
「それから?」
「グラウンド。」
僕は彼女に言われるがまま、校内の位置関係から彼女の場所を推測する。
そして、息を切らせながら彼女の元へと向かう。
エントランスを通り、廊下を駆け抜け、階段を一気に駆け上がり、また廊下を走る。
居た!
彼女だ。
やっぱり独りで泣いていた。
僕はそっと彼女に近寄る。
「それから?
一番近くにあるのは?」
その瞬間、彼女は振り向き僕を見る。
「咲良の手。」
彼女は僕の手を取る。
「咲良ー!!
私なんて何処にも居ないって言ったのになんで見つけちゃうのよ!」
僕は彼女の涙を拭い、彼女の頰をそっと撫でた。




