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荒れ狂う嵐の海

「アイシェ、君は僕に想う人が居てもいいと言ってくれたね。

僕が想っているのは、サクラだよ。」

サクラと咲が帰った後、2人だけの研究室で僕はアイシェに打ち明けた。

夜は更け、窓から見える景色は真っ暗で街頭の明かりだけが夜道を照らしている。


「…。

知ってましたよ。」


「僕達、もうやっていけないと思うんだ。

これ以上、僕と付き合うと君が傷つく。」

アイシェを想い僕は別れを切り出す。

我ながらまったく身勝手だ。

アイシェからの告白に承諾しておいて、やっぱりダメだと別れを切り出すなんて。



「自分勝手ですね。

そういうとこ、サクラさんにそっくり。」

アイシェは目を逸らさずに僕を見つめて静かに言葉を発する。



サクラとそっくりには疑問を持ったけど、明らかにこれは僕が悪い。

「本当にそうだね。

僕が悪かったよ。」

ただひたすらアイシェに謝る。



「謝らないでください。

そうだとしても私は別れませんから。

紗倉教授がサクラさんが好きだとしても、私はそれも含めて紗倉教授を愛することができますから。」


「アイシェ。

君だったらもっと素敵な彼氏ができる。

君の気持ちを利用して、今それを僕が邪魔してるんだ。

どうか別れてくれ。」

アイシェの未来を考え、思いの丈をぶつける。



「これだったら、どうですか?」

アイシェは胸元に手をやり、ブラウスのボタンに手を掛けた。

ブラウスがはだけ、アイシェの肌があらわになる。


僕は僕の着ていた白衣で、アイシェを隠そうとする。



「やめてください。」

アイシェは、パチンと僕の手を叩き振り払った。



そして僕が静止するのも聞かず、ゆっくりと服を脱ぐ。

下着までも。

一糸纏(いっしまと)わぬ彼女の造形は(なま)めかしく目を奪い、リアムの研究チームの芸術性とクオリティの高さを目の当たりにした。



「私なら、紗倉教授の身体をお慰めすることができます。

気持ちがサクラさんにあってもいい。

どうか私を抱いてください。」

彼女は強い瞳で、僕に訴えた。



-ダメだ!僕はサクラが好きなんだ。-

そう思った。

アイシェに一瞬(ひる)む。


「やっぱり、そうですか。

そこまでサクラさんを愛しているんですね。」

彼女は微笑みながら、大粒の涙を流す。



「私、諦めません。

それでも紗倉教授のことが好きですから。」

それだけを言い、また彼女はゆっくりと下着を着け始める。


僕は、なにも言えず硬直したまま、彼女が服を着るのを見ていた。


「好きってね、これだけの想いのことを言うんですよ。

私は、私を人として扱ってくれる紗倉教授を好きになった。

そしてその時は、誰かに寄り掛かりたくて守って欲しくて…、そんな依存の気持ちもあった。


だけど長い時間アナタと過ごすうちに、依存心は消え、どんどん惹かれていくのを感じた。

今は、アナタを守りたい。

そして、癒したい。

私じゃ、アナタをご満足させることができるかどうかわからないけど、お慰めすることならできる。

そう思った。


そこまでサクラさんを愛しているのなら、強引に彼女をモノにしたらどうです?

それとも出来ないですか?


サクラさんのお子ちゃま恋愛になんて、私は負けません。」

彼女は服を着終わると、僕にしがみつきわんわんと大声をあげて泣いた。

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