桜満開恋満開
春。
外の桜は満開を迎え、誰もがその美しさに心奪われていた。
「サクラ、お誕生日おめでとう。」
サクラが誕生して4年目を迎えた。
サクラの戸籍は誕生した日が16歳と記されている。
肉体的、精神的なことを考慮して、NEW人類の戸籍は作られる。
遺伝子構造上ほぼ老化しないようにプログラムしているので、見た目は誕生した日からほぼ変わっていない…、とはいえサクラは戸籍上20歳になった。
いや、だいぶ変わったのか。
確実に色気が増している。
ぷにっとした赤ちゃんらしさが抜け、大人の女へ…、と成長してるハズだった。
「さーちゃん、ありがとうなのだ。」
サクラは僕に抱きつく。
ぱいーん♡ぱいーん♡と効果音を付けたくなるような、柔らかくてハリのあるものが僕に当たる。
-こ…、この子はまだ赤ちゃんだ。
うん、肉体的には成長していても、この行動は赤ちゃんに違いない。-
理性を保とうと僕は僕に言い聞かせる。
「サクラ、おめでとう。」
「サクラさん、お誕生日おめでとうございます。」
咲とアイシェもお祝いの言葉を述べる。
サクラは僕に抱きついたままピョンピョンと跳ねる。
皆にはサクラの喜びが十分過ぎる程伝わったと思う。
「あの…、皆さんさえ良かったらお外でお花見しませんか?」
僕は、今年の桜はアイシェと2人きりで見ようと考えていた。
予想外の言葉に面食らう。
「いいね。さーちゃん行こうよ。」
「さーちゃん、行きたいのだ。」
咲とサクラにもおされ、僕は諦めがついた。
「そうしよう。」
浮かれる胸に心踊らされながら、僕は皆と共に外へ出る。
ーまた君と見ることができたね。
この満開の桜を。ー
嵐のような風に乗りくるくる舞う花弁と戯れる君。
あの時とまったく変わらない。
-そして…
あの時とまったく変わらず、僕は君を愛している。-
桜は寒い冬を越す方が栄養が溜めこまれ美しい花が咲くという。
ここでは日本ほどの気候の変化がないけど、きっと桜は長い間眠り今日この日、美しく咲き誇ろうと待ちわびていたのだろう。
今年の桜もやはり綺麗で、僕の心は熱く震えていた。
咲は、サクラを眺める僕に何か思うところがあるようだ。
「さーちゃん…、サクラ、好き?」
僕は、
「好きだよ。」
と答えた。
アイシェにもこれは聞こえていただろう。
静かに僕を見つめながら、海が荒れ狂うように心乱すアイシェに僕は僕の気持ちを打ち明けないといけないと強く思っていた。




