情事〜それでも好きな人〜
僕の研究室での合同研究が終わり、アイシェは元の研究機関へと戻ることとなった。
アイシェは嫌がったけど、元々の契約を破るわけにはいかない。
最終的にはアイシェは理解を示してくれ、素直に研究機関へと戻って行った。
僕は、論文が忙しい。
アイシェへ教育を施す為に、多大な時間が奪われたからだ。
そしてアイシェとのお付き合いも重なって、僕の仕事は溜まりに溜まっていた。
助手であるサクラに頼み、テキパキと仕事をこなす。
サクラも慣れたもの。
サクラの仕事は正確で迅速、尚且つとても丁寧だ。
僕の仕事には、サクラはなくてはならない存在へとなっていた。
一呼吸置いたら、また仕事。
「サクラ、今日は徹夜だ。
手伝ってくれる?
それとも咲と過ごす?」
「この量、徹夜しないことには明日が大変だろ?
徹夜して終わってから寝るのだ。」
サクラは仕事の量の多さに慌てる。
「そういうことじゃなくて。
本当にいいの?」
サクラの顔が、真っ赤に染まる。
「あれ…、ぁ…、もう!
そんなことを言うからぁ…。」
「さーちゃん、それセクハラだよ。」
咲が横から口を挟む。
「セクハラって言ってもね、サクラをもう3日も徹夜させていてプライベートを奪ってしまってるからね。」
「じゃあ、黙って帰らせたらいい。」
「サクラだって、この量の仕事、徹夜無しには到底終わらないことわかってるんだ。
ちゃんと言わなかったら、いつまででも仕事するよ。」
「確かに。」
咲は、仕事をこなしていくサクラを見ている。
色っぽい恋する瞳だ。
「咲、そっちはひと段落ついてるんだろ?
サクラを連れて帰って。
それと明日は遅くていいからね。」
僕は、サクラを咲に頼む。
咲の試験勉強とレポートは、とっくに片付いてること僕は知っていたんだ。
そして、この数日ずっとサクラを待ちわびていることも。
「うん、わかった。」
咲はサクラを優しく抱擁し、帰る準備をする。
サクラはチラッと僕を見て、目が合ったことに照れて、それから咲の陰に隠れながら出て行った。
こんなところもサクラは可愛い。
僕の萌えのポイントをピンポイントで突っついてくる。
まるでアニメの中の萌えキャラみたいだったな。
僕は、サクラのことを考える。
だが次の瞬間、少女の顔が頭をよぎる。
-僕は今、アイシェと付き合っているんだ。
サクラのことを考えるのはもうよそう。-
想いを抑え、僕は仕事に集中する。
膨大な仕事があるというのに、仕事をこなしながらもサクラと咲の情事を想像していた。
-今頃咲はサクラを抱き、可愛い声を堪能しているんだろうか。-
-サクラが抱きたい。-
-サクラ…。-
僕の頭の片隅に居たエメラルドグリーンの髪の宝石のような少女の影は薄まり、いつしかサクラのことばかりを考えていた。
手を動かす。
仕事をこなす。
こんなことを繰り返しているうちに夜は更け、日が昇りかけていた。




