突然の告白
「紗倉教授。好きです。」
透き通るような白い肌の少女の薔薇色の唇からは、唐突に思い掛けない言葉が発せられた。
それは、アイシェをリアムへと返す日が差し迫った頃だった。
「え?なんで僕?
リアムや咲じゃないの?」
僕は、慌てふためく。
「紗倉教授が好きなんです。」
時間を掛けて育った気持ちが、実りを迎えた果実のように突然弾けて僕へと向かう。
まったく気づかなかった。
彼女の想いに。
僕は、からかわれているんじゃないかと考え、少女に伝える。
「君は僕の生徒のような存在なんだ。
だからね、その想いは受け入れることができないんだよ。」
アイシェは可愛い。
そして、性格もいい。
こんな素敵な子が僕なんかに告白してくるなんて、なんの罰ゲーム?
少女は真剣な目で僕を見て続ける。
「大切な預かり品だからですか?」
「そうじゃない。
僕は君を物だなんて思っていない。
サクラや咲と同じように人として扱っている。」
「じゃあ、なんで?
私を人として扱ってくれるのは紗倉教授だけなんです。」
少女は、ついに泣き出してしまった。
こんなことバレたらリアムに何を言われるんだろう?
「NEW人類を人として扱ってくれる人は、きっと他にもいるよ。
サクラだってそうだ。
咲だってそう。
君のこと研究用とは思っていない。」
「それは…、同じNEW人類だからです。
私もう、あの研究機関へは帰りたくない。」
僕は悩んだ。
必死に掛ける言葉を考えた。
その時、まずいタイミングで扉が開きリアムがやって来たのだ。
「わお!紗倉教授、アイシェにスパルタでもしたの?
返還期日近いから?」
「違っ!!違うよ!」
アイシェは泣き続けている。
困ったな。
サクラと咲は今居ないし、状況をリアムに説明できるものが居ない。
「困るよ。
大切な発明品を泣かせてくれちゃあ。」
おちゃらけた優しい言葉の中にリアムの怒りを感じ取り、
「本当に違うんだ。」
と全身全霊で否定をする。
あまりの否定におかしいと思ったのか、
「まさかさぁ、アイシェに手を出そうとか考えてた?」
と冷静を装いながらも、嫌な言い方で責めてくる。
今にも殴り出しそうだ。
「そっちも違うよ!!!」
僕がなんとか誤解を解こうとしていたその時だった。
「違うんです!
私が手を出されたかったんです!!!」
-アイシェ、今それはまずいよ!!-
僕は、顔を真っ赤にしたリアムに思いっきり殴られた。
その誤解が解けたのはサクラと咲が帰ってきて、仲裁に入ってくれてからのことだった。




