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まどろみながら

サクラと咲を連れ、ミーシャの会社へ向かう。

移動中、僕は何度もため息をついていたと思う。


窓の外を見ながら思案に耽っていると、うつらうつらと眠気が僕を白い霧の世界へと誘う。

この一週間、ほとんど寝ることが出来ていない。

疲れが一気に押し寄せてきて、僕は深い眠りに落ちていった。



-さーちゃん…-


-さーちゃん…-



暖かい腕が僕を包み、抱き上げる。


-柔らかい。-


僕はその人のいい匂いが大好きで、優しい眼差しが大好きだった。

その人はいつも傍に居て、春の日の日差しのように僕を包みこんでいた。



いつからだろう?

その人が変わってしまったのは…。


来る日も来る日もその人の涙は止まることはなく、僕じゃあその人の涙を拭ってあげることは出来なかった。


ある日を境にその人は分厚い本ばかりを読み、ノートに何かを書くようになった。

僕が悪戯心でその人のノートに一緒に何かを書こうとする。


ーダメだよ。さーちゃん…。

ママは馬鹿だからね、お勉強しないといけないの。ー

その人は自分を卑下しながら制止する。

僕はその人と遊びたかったけど、好きだったから言うことを聞いた。



時は流れ、その人は大学に通うようになった。

その頃になると僕はその人を心から応援するようになった。



大学に通うようになってからは、だんだんとその人は家へ帰らなくなったんだ。



僕のお世話は、肌の色が違うメイドがするようになった。

僕はその人が頑張ってるから、理由がなく僕をつねってくるメイドが居ても頑張ろうって決めたんだ。



その人の言うことを聞いて絵本を読んだり教育DVDを見て過ごす。

肌の色の違うメイドは、そんな僕の邪魔をするように頭から汚れたバケツの水を掛けたり、掃除機で頭を殴ったりした。



その人が帰って来た時には、僕は乱暴にシャワーを浴びせられ着替えさせられドライヤーをかけられ綺麗な格好をしていたから、僕がその人が居ない間にあったことを話しても信じて貰えなかった。


後でわかったことだけど、メイドは僕に虚言癖があるという報告を提出していたんだ。



そのうち肌の色が違うメイドに僕を任せきりにして、その人はまったく家へ帰らなくなった。


どうしても首席で大学を卒業したい理由があったということを知ったのは僕が少し大きくなってからのこと。




「さーちゃん」

なにか温かいものが僕の肩に触れ、瞳を閉じていても光が目に入ってくる。

頭を整理し、これは夢だと気持ちを切り替える。

顔を上げるといつものサクラと咲の顔。


「さーちゃん、もう少しで起きないと。」

咲が時計を見ながら下車時間を教える。


この2人がいる世界が現実なんだ。

僕を襲っていた悪夢は消え、安堵感の中僕達は電車を降りた。

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