化学変化
僕達のやり取りに、先にホームパーティーを楽しんでいた奴らが集まってきた。
「紗倉教授、すまなかった。
虐めていたのはベンとシャロだけじゃない。
俺らも一緒だ。
いや、俺らはもっと酷いことをしていた。
謝るよ。」
口々に謝罪の言葉を口にする。
「私達は違うわよ。
いつも咲良の味方だったんだから。」
「お前も変わらねーだろ?
紗倉教授の前では咲良の味方って顔してながら、俺らと一緒に紗倉教授を馬鹿にしてたじゃねーかよ。」
「言わないでよ。」
僕の身体をオモチャにしていたお姉さん達だ。
あの時のことは今となっては取り返しがつくことではないけれど、その時僕にはそれしか生きていく術がなかったしお姉さん達の庇護下にあったのは事実だ。
僕を犯しながらも、お姉さん達にはそれぞれ彼氏が居て僕が愛されていたわけではないこともわかっている。
そして、それでサクラを傷つけた。
でもそれは周りだけのせいではなく、僕に力が無かったことも原因だ。
僕は、大人になって謝罪を受け入れる。
「いいんだよ。
僕にだって、何か疎まれる原因があったのかもしれないし。」
「紗倉教授。」
思い掛けない言葉だったのかみんなは大人として振舞う僕を抱擁する。
「紗倉教授、お前はいい奴だな。
てっきり恨まれてると思ってたよ。」
「当たり前でしょ?
咲良は昔からいい男なんだから。」
「そういえば紗倉教授に悪いところあったか?」
「頭が良すぎるところ。
顔が良いだけなら兎も角、飛び級で同じ学年にいる年下がいい点取り続けたんじゃ、俺ら立場ないじゃん。」
「紗倉教授が、ただそこに居るだけでマウンティングされてる感じ。
俺たちだって馬鹿じゃないから勉強に関してはプライドあるんだぜ。
なのに鼻をへし折られたみたいな。」
「でも咲良が悪いわけじゃないでしょ。」
「悪いとこはなくても鼻に付くんだよなぁ。」
みんなは好き勝手なことを言う。
「紗倉教授、今からでも俺らと友達になってくれないか?」
「うん。」
化学変化を起こしたかのように、周りの環境が変わっていく。
サクラと咲の存在が大きく変化に関わっているんだ。
サクラ誕生で僕は、ひとりから2人になった。
そして咲の誕生で3人。
それから大勢へと。
心がなにか温かいものに包まれていく。
僕は満足感で満ち足りていた。




