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光源氏と姫天女

雅できらびやかか衣装に身を包み、咲が出てくる。


ーお前はマジモンの光源氏か!?ー

軽くツッコミを入れる。

端正な顔立ちに着物を着ててもわかる艶っぽい首筋。

むせ返るような色気がその場から溢れてくる。

着物で腰位置を不自然に下げようとしても、そこに隠された引き締まった長い手足が想像でき、美しさが伝わる。

色素の薄い髪と瞳には光が当たり、憂いを帯びたように濡れて見え、目を離さずにはいられない。

細くて長い指先でさえ、挑発するように人々を誘う。


呉服店の店員は、仕事中だというのに恋する瞳で咲を見つめている。


他の客も花や蝶を見るように咲を愛でる。


束帯ではないのだけど、着物を着た咲からはどうしても光源氏を想像させられてならない。



「創世主、これでいいの?」

咲、やはり声まで完璧だ。

見惚れてしまうよ。


「いいよ。カッコイイ。

ああ、そうだ。折角敬語をやめたことだし、僕のこと創世主って、外で呼ぶのやめないかい?

外でその呼び方だとみんな何事かと思うからさ。」


「じゃあ、なんて呼べばいい?」


咲良だとサクラと被るし、サクでも咲と被る。

いい呼び名が思いつかない。


僕が創ったからパパ…、も変だ。

まだ20歳の男に外見年齢16歳の子供が居たらおかしいもんなぁ。

なにか変に勘繰られそうで、僕の頭には世間の想像力やねつ造の恐ろしさがよぎった。



悩んでいるとサクラが出てくる。

長くてサラサラの桜色の髪を上げ、豪華絢爛な(あで)やかな着物を羽織り、まるで天女かと誰もが見惚れる美しさはこの世のものとは思えない。

サクラが醸し出す花の香りのような色香に誰もがうっとりとする。

夢心地だ。


僕は、自分のセンスに満足しながらすかさずデジカメのシャッターを切る。


ー綺麗だよ。サクラ。この世の花の中で君が一番美しい。ー


もうなにもかも満足だった。




「2人で何を話しておったのだ?」


「ちょっと僕の呼び名をね。いつまでも創世主じゃ変だろ?」


「うーん…、じゃあねぇ、さーちゃん。」


「さーちゃん?」

僕は、遠い昔を思い出しそうになった。

必死で考えるのをやめ、現実に戻る。



「どう?」


「別にいいけど。」


「さーちゃん。」

「さーちゃん。」

サクラと咲が優しくその名を呼んでいた。


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