古都
あれから2日が過ぎた。
「2人とも、今日は外へ行くよ。」
「行かない。」
あのまま離れる気配はない。
「ほら、部屋はいつでも借りれるけど、一旦掃除したいと女将さんが困ってるんだ。」
2人は渋々起きてきて、シャワーを浴びる。
ようやく出てきて身支度を終える頃には、昼に差し掛かっていた。
咲は、僕の方を見る。
「創世主、お前さ…、悪趣味。」
サクラは咲の陰に隠れもじもじしている。
「何のこと?」
すっとぼけて咲を煽る。
「最中に見るなってこと。」
「恥ずかしかったの?」
「恥ずかしくはなかった。サクラのことしか考えてなかったから。」
「でも今は、恥ずかしいんだね。」
咲の頬は、ピンク色に高揚する。
「僕のことより、サクラを…。
こんな気持ちにさせたくないだけ。」
咲は僕に真面目な目で訴える。
イケメンだ。
こう言う時に真っ先にサクラを守ろうとするのは僕のプログラム通り。
そして、咲自身の成長も感じられる。
僕は誇らしく思い、
「行くよ。」
と外にサクラと咲を連れ出した。
暫く細い通りを曲がりながら車を走らせる。
次々と現れる神秘的な建物は見るものをオリエンタルな世界へと引き込み魅了する。
この古い街並みがサクラと咲には新鮮に写ったようでずっと窓の外を眺めていた。
わざとこの路を選んで正解だったな。
僕も京都へ頻繁に来たことあるわけではなかったが、ルートを調べ道のりを頭の中にインプットして来た。
僕もこれを見たかったし、なによりサクラと咲に見て知って欲しかったんだ。
《僕達の国はこんなに素敵なんだよ》って。
少し通りを離れ、そのまま走ると呉服店へ着いた。
そして僕が頼んでいた品を出して貰う。
サクラや咲に見せたかったものがここにはあるんだ。
サクラが誕生した日からこっそり選んでいた振袖。
メールで何度も打ち合わせを重ね、糸、染料、柄や色に至るまで出来る限り細かく注文し、肌の色や髪の色に合わせ職人に織り上げて仕立てて貰っていた。
サクラは奥へ連れて行かれ、着付けて貰う。
咲誕生が決まった日、つまり咲が受精した日にサクラの振袖に合わせ仕立てて貰っていた着物も用意している。
咲も別室へと案内された。
期待と興奮で心踊らせながら2人を待つ。
僕は遺伝子をデザインしたり、サクラや咲が身に付けるものを選ぶのが好きだ。
芸術が好きだ。
天性の才能なのかな?
今では天職に就けたと思っている。
もし、この仕事をしていなかったら、画家やデザイナー、それから作曲家やフィギュア原型師の道を選んでいただろう。
味や彩りを突き詰め、コーディネートを極め、創造の限り腕をふるえる料理人もいいな。
イマジネーションに想いを巡らせる。
そこには、様々なパターンの手に入れることができたかもしれない未来があった。




