おにぎり
部屋に戻ると、御膳には料理が並んでいる。
どれもこれも素晴らしい。
丁度サクラが戻ってくるタイミングで旅館の女将が料理の説明を始める。
初めて見る料理にサクラも咲も興奮がおさまらないようだ。
ーサクラと咲の為に一番グレードの高い料理と部屋を用意したんだぞ。
どうだ!見たか!これが日本だ。ー
したやったりという表情でイタズラっぽく2人を見る。
「2人とも、料理はどんどん来るから好きなものから食べてね。」
サクラも咲も料理にがっつく。
可愛いんだ。これがまた。
何枚も写真を撮らせて貰った。
初めての味に驚き、舌鼓を打ち、それから苦手なものにびっくりし、楽しい食事がスタートした。
御膳には、お酒を飲む人の為の料理みたいなものも並ぶものだから、まだ味覚が未熟な2人が食べれないのは当然だ。
舟盛りに伊勢海老や魚の頭が乗っているのを怖がりながらも触ってみたり、アワビを観察してみたり、まだまだ子供みたいな反応に心が和んだ。
大きな海老フライを追加注文すると、サクラも咲も結局これが一番気に入っていたようだった。
僕は、2人の大喜びする顔をツマミにしながら、大人っぽくお酒を嗜んだ。
お酒の味はまだ早いけど、2人を養い教育し研究成果も実った僕は、すっごく大人になった気分になってしまって、お酒を楽しみたくなったんだ。
シメには、おひつに入ったご飯が並べられた。
僕は洗面所でよく手を洗い、旅館に行く途中寄ったコンビニで買った鮭フレークでおにぎりを握った。
ポンポンと手の中で結ばれるおにぎりを2人は大喜びで見つめている。
海苔を巻いてサクラと咲に渡すと、美味しそうに食べていた。
窓を開けると、雲が月を霞で隠すように広がっていてとても風流だった。




