麗しい桜の君と桜姫
僕は研究室に籠りたい。
でも、サクラがそうはさせてくれない。
紙コップのジュースを僕に渡してきて、飲めと促す。
僕は、決めた!
ー受けて立つ!ー
咲は上手にみんなと会話してるようだった。
僕に似てるのに何故か咲は会話が上手い。
下品じゃない文学のような高等なジョークでみんなを笑わすし、そしてなによりカッコいい。
咲の隣にサクラが立つとまるで、古典文学の光源氏とお姫様のようだ。
年上の後輩は僕に色々な質問をしてくる。
ーコイツ、僕の靴を踏んだやつだ。
バスケの時にもわざとぶつかってきた。
今度は何やる気だよ。-
僕は、警戒しながらも質問に答えていった。
なるべく専門用語を使わないような簡単なわかりやすい言葉を選んでね。
生徒に教えてるみたいで、なんか少し楽しいと思ってしまった。
-いや、ダメだ!惑わされは。
きっと何かを企んでるんだ。-
注意深く周囲を観察しながらの会話。
なんだかみんなと距離を感じてしまって孤立しながらも、仲間が増えたみたいでちょっとだけ楽しかったし、嬉しかった。
こういう集まりの時、僕はいつも蚊帳の外だったからね。
会話がある程度終わると、年上の後輩は
「今までゴメンな!」
と謝ってきた。
僕は、今度は何があるんだろうとビビった。
その反応に気付いたのか年上の後輩は語り出した。
「紗倉教授さ、顔いいじゃん。
しかも年下の癖に先輩じゃん。
あの頃は俺も子供だったし、そんだけでむかついたんだ。
紗倉教授は悪くないのに。
俺は紗倉教授が自殺する迄、いじめをやめないって結託してた最低な奴なんだよ。
紗倉教授が居なくなれば、自分が上へ行けるという幻想を抱いていたんだ。
でも紗倉教授が出世していく度、コイツは凄いって思うようになったよ。
と同時に嫉妬心が湧いて憎くて堪らなかった。
紗倉教授の論文は、なにか叩けないかと昔から何度も読んでいたんだ。
どれも難しいのにわかりやすいんだわ。
だけど、こんなの簡単だと思い込んで自分で実践しようとするがどれも出来ないことばかり。
紗倉教授に恥をかかされた気分だった。
俺、馬鹿だから紗倉教授を恨んでさ、つい最近までネットで批判したり嫌がらせ続けてたんだ。
でも今日、咲君とサクラちゃんを見て、話して思った。
こんな馬鹿げたことはやめようって。
紗倉教授が創りだすものはどれも美しいね。
これぞ日本の宝だよ。
これが自分の国で誕生したなんて誇りだわ。
白人こそ神って思ってたのを改める。
知ってると思うが僕はベンジャミン。
ベンって呼んでくれ。」
ベンは右手を差し出し、握手を求めてきた。
僕は、破裂しそうになる心臓を落ち着けながら握手を交わした。
-本当にやめればいいけどな。-
僕は、裏切られた時のショックがないよう予防線を張った。




