フラッシュバック
促成保育器が開き、ザバーっと人工羊水が溢れ出す。
「演出は完璧だな。」
僕はボソッと呟いた。
人工保育器から解放されたサクラの瞳が開き、僕を見つめる。
僕はその瞳の虜になった。
「何が『演出は完璧だな』なのだ?」
可愛らしい鈴のような声が耳に響いた。
「お前、なんだその喋り方は!???」
設定と違う話し方に驚き僕は思わず聞き返す。
「促成保育器の中で聞いておれば、お前は本当に痛い。
何が『世界で一番清浄な処女をーーー!!!!』なのだ?」
教えた言葉と違うサクラの話し方に驚き、
「なんだ!その話し方は?
教育プログラムでは敬語を教えているはずだろ?」
と言葉が咄嗟に出た。
「サクラだって、教えられた言葉以外に自主学習するのだ。痛い痛いお前にはこの話し方で十分だ。」
生意気な話し方に怒りが湧いてきて僕はサクラを怒鳴りつける。
「生まれた時に話す言葉は、『やっとお会いできました。神様。』だろ!!!」
サクラは続ける。
「誰がお前みたいな痛いやつに『やっとお会いできました。神様。』なんて言うのだ?
サクラをお前のダッチワイフとして創りだしておいて。
このDT脳が。」
「なんだと!!!
僕はお前を俺の嫁としてプログラムしたんだ!
ダッチワイフにDT脳だと!?
二度とそんな下品な言葉を話すなよ。」
真っ赤になりながら言い返すとサクラは淡々と続ける。
「嫁…、だと?
お前、サクラが促成保育器で育ってるこの3年、この研究室で何をしていた?
ビッチを膝に乗せてやりまくってたのだろう。
DT脳のくせにヤリチン!
お前がこのサクラをお前の嫁として創り出していたのは、頭の中で自分の遺伝子を解析してわかっておったぞ。
だが、嫁をさし置き他の女とやりまくるヤリチンはお断り!」
サクラの頬にはキラキラとダイヤモンドのような涙が流れている。
「見ていたのか?」
「自動学習中、全部、聞こえていた。
そして全てを理解した。」
サクラのこの言葉に僕は、サクラが促成保育器で育っている途中の振る舞いがフラッシュバッグした。