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月夜

「サクラはどうやってもお前のことを好きになるようプログラムされているようだのう?

嫌いだ!嫌いだ!といくら思っても、結局お前の傍に居たいと思ってしまう。

お前を独占したくなる。

おまえの顔も声も優しいところも全部サクラの好みなようだ。

ヤリチンなところ以外は。

ヤリチンは、ばっちい。

不潔だ!」

驚いた。

サクラがこんな風に思ってくれていたなんて。

僕のプログラム通りだ。


サクラを見ると、顔が真っ赤にしながら恥ずかしそうに僕を見つめる。

自分で不意に告白をしてしまったことに気づいたようだ。

「だがなぁ、それはお前も同じなのだぞ。

お前の遺伝子配列は、肌の色や身長手足の長さ、形状から予測を立てることができる。

お前は、サクラのことが好きだ。

愛している。

どんなにサクラをダッチワイフのように扱おうとしても、そのダッチワイフを愛してしまう変態なのだ。」

照れ隠しなのか強い口調で必死に伝えてるが、目には涙がたまり、恥ずかしさに耐えれない様子。


「なに自分で告白しておいて、僕の返事までしてるんだよ。

コントか。」

サクラが可愛くて、ちょっといじってみる。



「なっ…、告白ではない!

サクラの仕様を伝えたまでだ!!

全部サクラの遺伝子に書き込まれておるぞ!」

サクラは顔を逸らし恥ずかしさで溢れてくる涙を拭いながら、必死で食い下がってくる。



「最後の一言以外は、サクラの言う通りだよ。

だけど、僕はサクラをダッチワイフとして創り出したわけではない。

僕はサクラが好きだ。」

サクラが当たり前だろと言った表情で僕を見る。


「で…、でも、それでは整合性が…。

サクラをダッチワイフとして創り出したと考えるのが一番辻褄が合うのだ。

都合の良いことばかり言うななのだ!!」

サクラが必死で考える。

賢い子だなと、もっとサクラが好きになった。


「サクラは僕の好みのままに僕の嫁として創り出したんだ。

だけど僕は、心が未熟だった。

『嫌なことから逃げる手段と夢を叶えること』これが同時に手に入ることがないなんて理解していなかった。

まるで考えなかったんだ。

今の僕は、サクラの心を手に入れられない。

それは僕がサクラに施した仕様だからね。

サクラは未来で僕に似た清廉潔白な男を好きになる。

そして大恋愛をする。

これは僕の予言だよ。」

僕は優しくサクラに言い、頰にキスをした。



窓から微かに見える月が優しく僕達を照らし微笑んでいた。

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