弱肉強食
世界はなんて冷たいのだろう。
力の弱いものは、力の強いものから虐げられ、常に暴力で奪われる。
弱いものが武器を持ち闘っても、警察が闘った弱いものを取り締まる。
ーサクラだけは守りたいー
遠のく意識の中でサクラのことだけを考えた。
ーダメだ!このまま眠っちゃダメだ!ー
ぼやけた真っ白な情景の中、深く堕ちていきそうになりながらも自分を奮起させ、意識を保つ。
ー目を開けなきゃ!サクラが連れ攫われる前に…ー
ー起きなきゃ!ー
目を開けようとするが感覚は瞼に伝わらず、身体を起こそうとしても手が動かない。
混沌とする精神の中、何度ももがいた。
「神様、起きて!」
微かにサクラの声が耳へ届く。
ポタッ
熱いものが頬を伝う。
ーこれは、涙。サクラの涙。ー
どうにか戻りそうな感覚に勝機が見え、指を動かす。
鈍いがどうにか動きそうだ。
必死に集中しやっとのことで瞼を開けるが、目の前が霧がかっている。
そして、天の助けの声が聞こえた。
「警察だ!」
誰かが警察を呼んだのだろう。
警察が2人組に尋問している声が聞こえた。
サクラに手伝って貰って、やっと身体を起こすことができた。
周りを見渡すと更に人だかりは増え、警察が来て安心したからか僕達に手を貸すものも現れた。
周りの証言から、2人組の男は警察へ連行された。
僕達は警察で被害届を出すか、この場で解放されるか二択を迫られた。
周りは被害届を出すよう促していたが、まだ戸籍のないサクラを警察まで連れて行くのは面倒だったので、ここで解散した。
その後、僕とサクラはカフェでお茶とケーキを楽しみ、当初の目的通り服を買って帰った。
買い物の最中も頬はズキズキと痛みサクラに心配されたが、あの時ナイフを使わなくて本当に良かったと思ってる。
ナイフを使ってたら、正当防衛が認められるまでサクラとは離れ離れだったからね。
帰って鏡を見るとその顔は自分じゃないほど腫れていて、すぐに治療が必要だった。
だけど幸運なことに専門的な医療器具が必要な程では無かったから、病院へは行かずに手当てをした。
この日は、初めてサクラと同じベッドで寝た。
怖い目に遭ってしまったサクラの心を安定させる為に親の役割が必要だったからね。




