冷たいドーナツ
僕達の周りに輪のように人だかりができる。
だけど、誰も僕達を助けようとしない。
僕達を囲むドーナツのような輪はとても冷たい。
相手を逆上させずに逃げる方法はあるのか?
サクラの手を引き走って逃げたところで、奴等はすぐに追いつくだろう。
方法が思いつかない。
そんな中、またサクラが相手を逆撫でする言葉を言い放った。
「セックスは相思相愛でお付き合いしてる同士がするものなのだぞ。
遊びでセックスをお楽しみしたいのなら、神様の女どもがさせてくれると思うぞ。
神様と女どもは日頃から遊びでセックスを楽しんでおるからのう。
神様の女どもはセックスが大好きなのだ。」
「なんだと?
コイツが女遊び?」
「じゃあサクラちゃん、寂しいねぇ。
俺たちが慰めてやるよ。」
勘違いした2人組は、水を得た魚のようにサクラを誘う。
「勘違いするななのだ!
サクラは、神様の女じゃないから処女なのだ!!
だが、お前らに貞操をやる気はない!!」
2人組はポカーンとし、すぐに我に返ってサクラを上から下まで舐め回すようにいやらしく見る。
「なっ…、なんなのだ?
なぜ、そんな目でサクラを見るのだ?」
威勢がよかったサクラは2人組から目を逸らし、恥ずかしそうに俯むく。
このまま泣いてしまいそうだ。
僕は2人組とサクラの間に立ち、サクラを抱きしめ覆い隠すようにした。
サクラは僕の身体を掴む。
小さく震えているのがわかった。
僕はサクラの耳元で囁く。
「ダメなのだ。それでは、神様が居なくなってしまうのだ。」
サクラは泣きそうな声で懇願する。
でもこれしか方法がない。
僕はサクラの腕を振りほどき、2人組に近寄る。
「サクラ、逃げて!!」
油断していたのか2人組には難なく近づけた。
僕は護身用のナイフで勢いよく男の目を狙った。
その時だった。
「ダメなのだぁ。」
僕の腰を温かい手が必死に掴んだ。
僕の手のナイフが叩き落とされる。
次の瞬間、僕の頬に固くて熱いものが当たった。
と、同時に吹っ飛ばされ、サクラも一緒によろけて転んだ。




